見出し画像

AI栽培支援で伊予美人(里芋)の収量アップ!!圃場と繋がる「みどりクラウド」でスマート農業を推進【株式会社セラク みどりクラウド事業部|実装報告】

愛媛県下全域で積極的に生産振興に取り組んでいる里芋。水田営農における高収益品目として注目され、現在、愛媛県は全国第4位の出荷量を誇っている。特にオリジナル品種「愛媛農試V2号(商標:伊予美人)」は食味の良さから市場関係者からも高い評価を受け、“お金を稼げる作物”として期待感が高まりつつある。一方、里芋の栽培は土入れなどの重労働作業、近年の疫病発生による防除回数の増加、高齢化や担い手不足により、生産性をどこまで維持できるのか課題も山積みとなっている。


課題解決のための産官学連携事業

令和3年からスタートした「さといも大規模省力生産技術開発事業」。JAや農家など現場関係者も含めた産官学の強力な連携を基軸に、里芋の生産性を高める様々な施策や実証実験などが行われている。株式会社セラクの環境モニタリングシステム「みどりクラウド」の実装プロジェクトもそのひとつだ。

AI栽培支援システムの概要と実績の発表が行われた報告会

「さといも生産技術開発プロジェクト報告会」では、セラクのAI栽培支援システムや大規模省力生産技術のプロジェクトの概要と実績発表のほか、みどりクラウドの実装先である株式会社中温の辻田常務による「さといも生産・加工・販売の取り組み」の講演、また「未来のさといも生産を考える」と題したパネルディスカッションなども行われた。報告会で発表されたみどりクラウドの実装結果について紹介する。

里芋に適したモニタリング機器の実装

露地栽培で作られる里芋の生育にとって一番のポイントは灌水のタイミング。土壌中の水分量を測るため、土の中に差し込むタイプの「水ポテンシャルメーター」を実装。計測データはクラウドへ送信され、計測結果はアプリで表示される。灌水タイミングになったらユーザーに通知されるというシステムだ。

西条市の圃場の計測データ

7月上旬に、圃場Aのように葉っぱ同士がくっついている状態まで育っていることが望ましい状況。実装中に得られたデータと各圃場の栽培過程、収量などを分析し、灌水タイミングのアラートの数値を割り出すことで、新規就農者や里芋栽培の初心者でも、適切な水管理を行うことができる。

露地栽培の里芋畑に設置された環境モニタリングシステム「みどりクラウド」は、水管理だけではなく、光合成がしっかりできているかを確認するための気温や日射量センサーなどと併用できるシステム。適正な水管理で栽培がうまくいっても、病害虫で収量が減ってしまうこともある。そのため、セラクでは今後の課題として、防徐タイミングを予測するAI病害虫サポートセンサーの開発に力を入れ、病害虫の予察モデルを検証し、実用化していく予定となっている。

みどりクラウドを実装してみて

株式会社中温 常務取締役 辻田純二さん

私どもは、栗と筍の水煮をメインに加工する会社でしたが、環境の変化や栗・筍の収量低下に伴い、新たな主力商品の開発を進める方針へと転換せざるを得ない状況になりました。様々な野菜の加工品を作ってまいりましたが、その中で里芋の売上が順調に伸びていき、販路も拡がり里芋の水煮を全国のスーパーで販売できるようになりました。特にイオンやイトーヨーカドーからの評価も高く、芋煮の需要が多い東北地方も含め、関西、関東で伊予美人のブランド力、知名度が高くなってきています。
需要の高まりから、3年前から西条市丹原町の圃場で里芋栽培も手がけはじめ、自社で選果場も設けました。単収を増やすため様々な方面からアドバイスをいただき、みどりクラウドの実装プロジェクトにも積極的に参加しました。新しく農業に参入するハードルの高さはまだまだ感じていますが、実装の手応えを強く感じています。農業にチャレンジしてみたいという方がいれば環境モニタリングシステムで蓄積したデータを共有したり、機械をお貸ししたりしながら地域に溶け込んでいきたい。里芋の収量を増やすだけでなく、加工場で働いていただく人材の確保も含め、地域とともにコミュニケーションをとっていきたいと思っています。
また自分たちで栽培することで気づいたこともあります。今までは破棄していた親芋の加工品も商品化することで、農家さんの手取りを上げるための施策も考えています。圃場と選果場のすぐ近くに加工工場も近く建設予定で、よりスピード感を持ってチャレンジしていきたいと思っています。企業としてのスマート農業、地域の方々とともに連携できるようになってはじめて、きちんとした私どもの農業になるのではないかと思っています。

愛媛県農林水産研究所 農業研究部 野菜育種栽培室室長 淺海英記さん

里芋をはじめ、野菜栽培は「水がポイント」だと思っています。圃場が広くなればなるほど管理が難しい。今回のみどりクラウドによる環境モニタリングの実装プロジェクトの水ポテンシャルメーターは里芋栽培に最も適しているセンサーで灌水アラートの有効性を強く感じました。ベテラン農家さんでも異常気象、経験値ではカバーしきれない状況になることもあり、リアルタイムにモニタリングできる機器はありがたい存在です。土壌中の水分量を正確に測ることができるということは、露地栽培のすべての品目で有効になる可能性もあり、病害虫の予察モデルの構築と合わせて、AI栽培支援のみどりクラウドには非常に期待を寄せています。
愛媛県の耕作農地の半分は水田ですので、いかに水田を利用して儲けるのかが持続的な農業を図る上で重要です。パネルディスカッションで登壇頂いた、JA周桑さんやJAおちいまばりさんの里芋部会のお話はまさに水田を利用して里芋で“儲ける農業”の好事例です。JA周桑さんは部会員の1/3以上が目標とする3tを超え、多い人は4t~5tという人も。今後は収量の低い生産者をいかに底上げしていくかが重要であり、栽培講習会や情報交換会への参加を積極的に呼びかけ、儲けている事例を知り、儲ける方法を習得していただきたいと考えています。部会全体ではすでに売上2億円を突破、来年度は3億円になる見込みで、近い将来4億円突破を目標としています。里芋栽培を新たにスタートする場合、種芋購入の半額助成や、部会が所有するマルチ整形機、畝立て機、定植機やトラクターなど機械の共同利用できるなどの環境が整っている点も部会全体の収量アップの底上げになっています。
環境モニタリングで得られたデータは共有していくことができ、繋げていくことができます。関西や京都、東京など引き合いも多く、伊予美人のブランド力は年々高まってきており、価格も上昇しています。農地の面積には限りがあるため、個々の農家さんの単収を上げていく必要性があり、デジタル技術を駆使して“儲かる農業”を実現し、里芋に関しては全国をリードしていきたいと思っています。

株式会社セラク みどりクラウド事業部 担当者

セラクは「稼げる農業」のためのシステム作りで、農家さんのサポートをしていきたいと思っています。露地栽培の里芋、ハウス栽培のイチゴを中心に今回の実装プロジェクトで、環境モニタリングシステムによるデータに基づく栽培管理の重要性を農業関係者の方々に実感していただけたと思います。病害虫の予察モデルの構築などの課題はありますが、今後のみどりクラウド事業の発展のための礎ができたと思います。里芋に関してはさらなる技術の確立とともに、センサー販売だけでなく、圃場で取れたデータを分析し、収穫量を増やすためのフィードバックをする必要性も感じています。露地栽培はこれからさらに取り組みを深めていく予定です。生育環境や作業状況を計測・記録してデータ化し、これまで感覚に頼ってきた作業を見える化する。農作業の省力化や効率化、生産性の向上、作物の高品質化、高付加価値化に貢献できるよう「農業にITの勝つ力」を提供していきます。

■公式ホームページ
https://dx-ehime.jp/

\SNSもやっています/
■Instagram
https://www.instagram.com/tryangle_ehime/

■Facebook
https://www.facebook.com/tryangleehime

■X
https://twitter.com/tryangle_ehime

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?