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交通インフラを効率化する、バスロケーションシステムの開発と構築【株式会社ハートネットワーク|実装報告】

愛媛県内でも屈指の工業地帯である新居浜市では、通勤場所と通勤時間帯が集中しているため、朝夕はいつも渋滞が発生。CO2排出など環境への影響も不安視されているが、必然的にバスの遅延も起こっているため、人口減少の影響もあり令和2年以降、バス利用者は急激に低下してきている。不採算経路の撤退や減便に伴い利便性も低下、自身で交通手段を持たない学生や高齢者の交通難民化がますます加速しているとも言える。

そんな地域交通(バス)が抱えている課題を解決しようと、株式会社ハートネットワークが愛媛大学、ソフトバンク株式会社、瀬戸内運輸株式会社とタッグを組み進める、バスサービススマート化プロジェクト「バスロケーションシステム」の実装検証。今まではランニングコストがかかり過ぎてしまうため導入することができず、運行状況管理も無線によるアナログ手法、ダイヤ改正のために必要な運行ログデータの収集もできていなかった瀬戸内運輸の路線バスにバスロケーションシステム「LAC(らく)バス」を導入することで、地域交通が抱えている課題を解決しようとするものである。


愛媛大学が取り組んだ位置情報基盤システムの構成

太文字表記が今回取り組んだサービス
今回実装検証した「LACバス」の位置情報基盤構成

バススロケーションシステム「LACバス」実装プロジェクト

本実装プロジェクトは、公共交通の整備が不十分な他地域への展開も視野に入れて開発された。無料のWBアプリ「LAC(らく)バス」にアクセスすることで、バスの運行状況がリアルタイムに確認ができ、乗りたい路線バスの時刻表や、バス停の位置、経路などを簡単な操作で確認することができる。
バスにもスマホの端末を設置して、クラウド上に設けたアプリケーションサーバで実装することでコスト面を軽減。運行管理センターはバスの位置や遅延状況、時刻表の管理を行うことができ、バス利用者は近くのバス停に何時に乗りたいバスが到着するのか、目的地に何時に到着できるのかなどを検索することができる。今回の実装では利用者や利用状況の多さから、スマホ向けから開発。スマホの操作に慣れている若者層を対象としたプロジェクトを展開した。

LACバスシステムによるバス利用者のメリット

遅延しているバスはアプリ上で赤色に、回送中のバスは黒色などで表示される。

「地域の人、来訪者にとってもっと便利なバスサービスを目指す」をテーマに、今回は利用者が「LACバス」のWEBブラウザ上で見えるように開発。バスマップを開き、使用したいバス停をタッチすると路線の候補が表示され、乗りたいバスを選択することができる。ズームイン、ズームアウトもでき、乗りたい路線バスの時刻をタッチするとルートが表示され、目的地への到着時刻の確認もできる。バスが今どこを走っているのか、あと何分待てば到着するのかも手元でわかるため、到着時間に合わせてバス停まで行くことができ、天気が悪い日は雨の中でいつ来るかわからない遅延バスを長時間待たなくても済む。また、いつも利用する路線をお気に入りに登録したり、普段は乗らない路線バスで目的地を検索をすると、どの路線バスに乗ったら良いか、乗り換えがある場合は乗り換え表示も出て、経路や運賃もわかる便利な機能だ。行き先検索は出発地と到着地を指定すると、どの交通機関を使って行けるか表示されるため、導入・構築が進んでいくと観光客や出張の人向けにも有効なサービスとなり得る。

LACバスシステムによるバス事業者のメリットと運転手の支援

紙だった運行指示票が電子で表示。バスの運転席に設置されたスマホ端末

設置された端末には、現在の時間とバス停毎の時刻表も表示される。遅延状況が把握できるだけでなく、オレンジ色で早発警告も表示されるため、運転手の早発防止にもなる。
さらに、運行管理者にとって、路線バスの正確な位置情報をリアルタイムで把握できる点がこのシステムの最大のメリットと言える。バス停にいる人から「バスが来ない」という問い合わせ電話がかかってきた場合、以前は一度電話を切って運転手に連絡。運転中のため、電話が取れない場合もあり、連絡がつかないままバス停を通過していたこともあった。今回のサービスを活用することで問い合わせにも即座に対応できるようになった。また、運転士の乗り継ぎ時に位置状況を把握できたり、折り返し地点での出発確認もリアルタイムに確認できる点も運行管理者にとっては利便性が高い。
実際、異常気象時にこのシステムが非常に役立った事例が発生。実装検証中の2024年1月24日、降雪により道路が凍結。渋滞による大幅遅延の状況を把握でき、運行可否の判断にも役立ち、運行計画変更と車両運用のやりくりとそれらの指示が的確に行われた。

今後の展望

中小規模のバス事業者も導入可能なものにするために、初期コストやランニングコストの低価格化を目指すこと。また開発プロセスとしては短期間でプロトタイプを開発し、利用者視点での検証を重視し、改良や改善すべき点を明らかにして、次のプロトタイプを作成していきこの循環を連続的に行う開発プロセスのアジャイル型開発を取り入れていく予定となっている。

(1)PC版、サイネージ版の開発で“見える化”を促進
今回の実装ではスマホだけであったが、2024年度にはPC版、サイネージ版の開発を実施。スマホでのアプリ検索が苦手な人や高齢者に向け、店舗や病院で遅延状況などをサイネージ表示されるサービスが導入されるようになれば、地域全体でバスサービスのスマート化が促進されていくことになる。

(2)乗降情報収集の利活用により、路線バスの利用を促進
さらに高齢者や子どもの安全確保のための「見守りサービス」を提供

乗降口に小型カメラを設置。AIで乗降口での人の通過を認識。区間毎の乗車と降車人数を調査

頻度、時間帯、区間別に乗降人数に応じた適切な運行スケジュールの実現のためには、バス停における乗車と降車の人数を把握し、各バス停の利用状況や区間毎の乗車状況を把握する必要がある。それらのデータを活用し、バスの運行スケジュールや路線変更など、利便性の高いものに改善して行く予定となっている。本事業で生まれるさらなる地域交通の課題解決に期待したい。

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