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「やさいバス愛媛」県内各地の消費者と子どもたちに美味しい野菜を運ぶ【やさいバス株式会社|実装報告】

2022年度から愛媛県内で事業を拡大し続けている「やさいバス株式会社(以下:やさいバス)」。農業や漁業では、商品を販売店で売り出すまでにかかる物流コストの高騰が課題となっている。「やさいバス」が取り組むプロジェクトは、自社が提供する共同配送プラットフォームを活用することで、配送コストを下げることができ、生産者の手取り向上、さらには購買者への迅速な商品の提供によって、商品の品質向上(鮮度など)も実現することができる、というものだ。

2023年度は、事業に協力してくれる生産者や購買店のさらなる拡大と、地域の子どもたちに野菜の美味しさを知ってもらう食育活動にも力を入れた。


「やさいバス」とは

全国各地域で実装実績のある「やさいバス」。
このシステムは、「ECと地域共同配送が一体」となったサービスで、乗り合いバスのように個々の配送を地域でとりまとめ、納品先付近まで運ぶことができる。今まで難しかった物流構築を容易にし、配送コストを下げることが可能となった。それにより、生産者の手取りが向上し、消費者へは品質の良い新鮮な農産物が提供されるようになる。
さらに「やさいバス」ならではのシステムとして、配送を担うのは配送専門業者だけではなく、鉄道や高速バス・フェリーなどの定期便を利用し、そこに農産物を一緒にのせて輸送する。毎日運行する定期便と一緒に運ぶことで、配送費用のコストカットが可能となる。

大幅増加!生産者67名・購買店11店舗が参画!

2022年度は生産者2名、購買店2店舗からスタート。
それが、2023年度は、生産者67名、購買店11店舗と大幅に増加。

■生産者67名
・株式会社百姓百品村(西予市野村町)
・小川農園(南宇和郡愛南町)
・はがた農園(新居浜市長岩町)
・合同会社ethnic green farm廣川農園(東温市牛渕)
・有限会社フローラルクマガイ(西予市野村町)
・稲工房 案山子(大洲市菅田町)

▼生産者一覧はこちら
https://vegibus.com/farm/list?page=1&prefecture=38&search_by=

■購買店11店舗
・セブンスター垣生
・セブンスター重信
・セブンスター石井店
・セブンスター石手店
・セブンスター南江戸店
・マルナカ伊予店
・マルナカ清住店
・マルナカ東石井
・マルナカ北条店
・株式会社フジ・リテイリング地産市場エフ・マルシェ古川店
・株式会社フジ・リテイリング瀬戸内海響市場エフ・マルシェ

「やさいバス」の取り組みに賛同する仲間の輪が広がり、約1年でここまで拡大した。
今後もさらに生産者、そして購買店を増やしていく予定だ。

様々な販売施策で売り上げアップ!

どんな生産者が作った野菜なのかわかるように、顔写真入りのポップを作成し「やさいバス」の販売ブースに掲示した。

同社の理念である「1個でも多く、1円でも高く売れる」ように、野菜の売り場作りや、展開方法にも工夫を凝らした。その中でも特に効果があったのが、セブンスターで実施したB品を販売する「もったいない市」だ。

「もったいない市」では、美味しいのに規定よりもサイズが小さかったり、少し傷がついていたりと、いわゆるB品と呼ばれる野菜を手頃な価格で販売した。特に、女性にキャベツが売れた。その理由として、大きなキャベツだと重たくて荷物になるので、小さくて通常よりも手頃な価格で購入できるのが嬉しいという声があったという。

キャベツの他にも、形が悪いなどの理由で農協などでは販売できないブロッコリーも取り扱い、売り上げ増に貢献した。生産者からも「普段は売りに出すことができない野菜がこのような形で売れて非常に助かった」という声が挙がっている。

「食育活動」で子どもたちに野菜の美味しさを届ける

今年度「やさいバス」が力を入れた取り組みとして、「食育活動」がある。

その背景として、もともと愛媛県内子町にある内子町楽農研究所で地元の学校給食に地元の農作物を活用する食育活動を実施していた。しかし、新型コロナウイルスの影響で、活動を一時休止。コロナ禍でも食育活動を実施できるように、学校と農家をオンラインで繋ぐ「食育LIVE」をスタートすることに。しかし、もともと内子町は特筆した野菜の産地というわけではなく、珍しい野菜を活用したい場合には、近隣の市町から野菜を届けてもらうこともあった。

そこで、愛媛県内東・中・南予の様々な野菜を運ぶ「やさいバス」とコラボし、近隣の市町だけではなく県内各地の野菜を給食に取り入れることができるようになった。

食育活動を行うことで、子どもたちが多品目の野菜を知ることができ、マイナー品目も含め知ることで、10年後15年後のマーケットを広げることができる。さらに、生産現場を知ることで生産者への感謝の気持ちが芽生え、給食の残食率の減少と、廃棄コストの減少に繋がる。

子どもたちの前に立って説明するのは、NPO団体食育ライブ代表 菊地 義一さん。

今年度は全部で2回の食育LIVEを実施。
あまり市場に出回っていない蔓紫(つるむらさき)と、ネギを給食に活用した。

上の写真のように、教室と農地をオンラインで繋ぎ、実際に作っている生産現場の紹介や、その野菜がどのようにできるのか、育てる際の苦労などを生産者の言葉で伝えることができた。

今後はエリアを広げ、さらに多くの学校で実施して行きたいと考えている。

給食のおかずとして並ぶ蔓紫。

総勢25名が参加した「ふりかえり会」

2024年1月15日(月)に、今年度の実装内容の振り返りと意見交換の場として「ふりかえり会」が開催された。プロジェクトに参画した生産者と購買店の代表者、総勢25名が参加。
サービスを実装する中で、「こういったところが良かった」「助かった」などの意見、そして「もっとこう改善して欲しい」「こういった場合にどうしたら良い?」など、良かった点だけではなく、改善点や課題も活発に意見された。
このように、生産者と購買店の間にやさいバスが入りディスカッションすることで、双方にとってより良い改善策を導き出せたり、よりスピーディな課題解決のために動き出すことができるというメリットも。

またこの会には、災害に強い田舎づくりを目指し、耕作放棄地を活用した農業を行う宇和島NPO団体「BISAI-FARM(ビサイファーム)」の代表・林 昭子さんも参加。

耕作放棄地を耕し畑として活用。

2024年に入り、すぐに大規模地震が発生。現在日本では災害への危機感がより一層高まっている。自身も過去に被災したことがある林さんは、野菜が食べられないことによる栄養の偏りと、それによって起こる体調不良などのリアルな課題を挙げた。この課題を解決すべく、今後「やさいバス」のサービスをうまく活用できないか?と提案。
この提案に対して、やさいバス株式会社 代表取締役社長 加藤百合子さんは「実はすでに動き出しており、やさいバスを展開している全国のエリアのネットワークを活用し、被災地に野菜が届くようにするための施策を強めていく」と応えた。

今後“チームえひめ”の繋がりを強めるだけではなく、全国的に新たな展開を視野に入れているのが伺えた。

今年度実装してみて

■生産者の声

■グリーンアップ営農組合 理事 小林 泰岐さん
まず、地域共同配送とECの組み合わせは大変便利であり、新鮮な農産物を迅速に消費者に提供できることが良かったです。物流の効率向上により、配送コストが削減されました。また、「やさいバス」を通じて販路を拡大でき、新たな地域や顧客層に農産物を届ける機会が増えたおかげで収益も向上しました。地域の協力体制が機能して、持続可能な農業と地域社会の発展に貢献できたと感じています。

■堀田農園 代表 堀田 浩二さん
私が住んでいる地域では、主な出荷先は地元のJA、道の駅、スーパーの直販コーナーしかありません。JAは相場により単価が変動し、道の駅・スーパーは値下げ競争が激しく、かつ、出荷品がすべて売れるとは限りません。複数店舗に出荷していると、それだけで半日ほどかかります。また、松山など都市部への出荷は個人で行うには運送面など非常に難しい状況にあります。
ですが、「やさいバス」に関してはバス停に納品するだけで生産者の運賃負担なしで都市部への出荷が可能となりました。さらに商品はすべて買い取り方式になっていますので、出荷品のロスがなくなりました。いつ注文がなくなるかの不安はありますが、担当者と事前に打ち合わせをしておけばクリアできる問題です。注文数を必ず納品するプレッシャーはありますが、できたらできた分だけ出荷というあいまいな生産・出荷ではなく、緊張感をもって生産・出荷に取り組むことが必要になり、栽培計画の必要性がより重要になると感じています。今後の展開は関西方面へも目を向け、新たな販路拡大を目指すとも聞いていますので、それにより今後の栽培計画に大きな変更が必要になってくるかもしれません。地元にも目を向けつつ、新たな販路拡大も行う、今後がますます楽しみになっています。


■販売店の声

(写真右から)株式会社セブンスター執行役員 商品部 部長 長尾 謙一さん、副部長 宮脇 典昭さん、青果バイヤー 丸田 和良さん

■株式会社セブンスター 執行役員 商品部 部長 長尾 謙一さん
昨年の6月から「やさいバス」さんと協力しながら実装をスタートし、現在当社では5店舗で「やさいバス」の売り場を設置しております。これまでお客様の中には「ものは良いけれど値段がちょっと・・・」という声もありましたが、私共は生産者さんが大切に育てた商品を1個でも多く大切に売っていきたいと、強く思っております。生産者さんと引き続き協力しながら、一人でも多くのお客様に美味しい野菜を食べていただけるよう努めてまいります。


■株式会社フジ・リテイリング 生鮮食品事業部 マルシェ事業運営部 係長 兼 マルシェバイヤー梅本 葉月さん

2022年の11月から、当店では「やさいバス」の売り場を作らせていただいております。店内にバス停を設置しており、お客様はこれを目標に買い物にきてくださいます。エフ・マルシェは産直ですので、普段から直接生産者のみなさんがお野菜を納品いただけるのですが、やさいバスさんの取り組みは、遠方の生産者さんや忙しい生産者さんが近くのバス停から出品できる点がすごく魅力だと思います。これからも販売店として、少しでも地域の発展に協力できればと思います。

■マックスバリュ西日本株式会社 マルナカ バイヤー 山神さん

野菜バスさんとの取り組みを始めて早1年が過ぎ、沢山の生産者様の商品を取り扱いさせていただきました。当社でも産直コーナーがあり様々な問題もある中で、同地区だとどうしても品目や時期が被り販売が難しい状況に陥ります。そこで「やさいバス」さんの各エリアで特色のある青果物がお客様の目を引き、差別化された売場を展開したいと考えてますが、まだまだ問題も多く志半ばでしょうか。生産者さんと小売を繋ぐ「やさいバス」がお客様に支持されるよう尽力を注ぎたいと思います。

■「やさいバス」の声

(写真右前後列4名)やさいバス株式会社 代表取締役社長 加藤 百合子さん、愛媛エリア営業 滝沢 賢司さん、高山英久さん、早野 純一さん(写真前列左)株式会社楽農研究所 代表取締役 NPO団体食育ライブ代表 菊地 義一さん(写真l後列左)宇和島NPO団体BISAI-FARM(ビサイファーム)代表 林 昭子さん

■やさいバス株式会社 代表取締役社長 加藤 百合子さん
私たちは、「やさいバス」のメンバーだけではなく、生産者さん、物流会社さん、販売店さん、そして消費者さんが一つのチームにならなければ青果流通の大きな課題は解決できないと考えています。「やさいバス」は現在15都道府県で展開しており、「美味しい野菜を届けたい!もっと面白い農業をしたい!農業を盛り上げたい!」という、全国の同じ想いを持つ方々に協力いただきながら進めています。愛媛県は、弊社の愛媛メンバーをはじめ、67名の生産者さん、そして11店舗の販売店様のご協力のおかげで、過去一番のスピード感を持って発展していると感じます。ご協力いただいた皆さんにお集まりいただいた「ふりかえり会」では、それぞれの立場で様々な意見を出し合うことができた貴重な場になりました。引き続き意見交換をしながら、「やさいバス愛媛」がますます発展していくことを期待しています。



無理なく、楽しく、美味しく地域で繋がる全く新しいスマートコミュニティ事業。トライアングルエヒメをきっかけに、愛媛でスタートした「やさいバス」は、引き続き地域の生産者の想いを乗せて走り続ける。

▼やさいバス株式会社の過去のレポート記事を読む▼

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