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愛媛県デジタル実装加速化プロジェクト2023年度成果報告会「DEMO DAY」開催!【現地レポート】

2024年3月13日(水)に2023年度愛媛県デジタル実装加速化プロジェクト「トライアングルエヒメ」の成果報告会「DEMO DAY」が開催された。今年度採択された73件のプロジェクト関係事業者だけではなく、一般参加者も含め300名以上の人が集まった。

まず最初に、開会の挨拶として愛媛県CDOの田中英樹副知事から、以下のような内容のお話があった。(一部抜粋)

「愛媛県では、少子化や人口減少対策、地域経済活性化の一環として、クリエイティブな人材や生産性の高いDX関連事業を持った企業が集い、共に学び、共につくるという意味での共創を通じて、クリエイティブな都市や地域づくりを目指しています。そのため、現在県内外の企業が共創したスタートアップを支援し、デジタル技術の県内実装の推進と、デジタル人材を育成・確保する取り組みに力を入れています。デジタル技術の県内実装を推進する事業の目玉が、このトライアングルエヒメです。本事業は、各分野でデジタル技術の現場実装に取り組み、県内産業の稼ぐ力と、県民サービスの向上、そしてデジタル関連企業の県内誘致にも繋げたいという目的で令和4年度からスタートしました。昨年度と今年度の2年間で600件以上の応募をいただき、そのうち73件のプロジェクトを採択。それぞれの現場において実装定着に向けて進行しています。本日のデモデイが、今後のプロジェクト推進のための知見を深める場となり、様々な業種の方々との積極的な交流による新たな相乗効果を生み出す実りある時間になればと思います。トライアングルエヒメは、来年で3年目の節目を迎えます。今後、地域での大型勉強会の開催や、現場視察型のマッチング会の提供などを予定しています。引き続き、愛媛県は『デジタル実装の聖地』になることを目指し、県内での本格的な事業化や、横展開に向けた取り組みを加速してまいりますので、皆様もお力添えをいただきますようお願い申し上げます」


代表事業者4社の実装先の声

今年度の取り組みの中で重要なポイントとなっているのが、地域に入り込んだ実装、そして地域課題の解決を目指すこと。そこで、農業、コミュニティ、福祉の分野から代表して4事業者と共に課題解決に取り組んだ、実装パートナーの方々の発表があった。

■真穴地区・柑橘栽培DX化プロジェクト

近年嗜好性が高くなり、生産者や産地は高品質な果実の生産を選択せざるを得ない状況にある。高品質な果実を育てるには、マルチ栽培やストレス栽培が主流となっているが、その影響により樹勢が衰弱したり、隔年結果が助長されている状況。また、近年は一戸あたりの栽培面積が増加しており、それに伴い収穫期の労働時間の増加や、収穫後の家庭選別の負担が大きくなっている。また、生産者の高齢化が進んでいるため、新規就農者の育成をしなければならないと考えている。2024年問題やコストの高騰により、経営を圧迫される恐れもある。このような課題をそのままにしていると、産地およびみかん産業の衰退につながる可能性も。

現在南予用水を使ったマルチ栽培などを進めているが、熟練生産者のノウハウを継承し、安定した高収量・高品質の果物を生産できるようになることの重要性を感じている。その一助となるのが、真穴エリアでアクト・ノード様、IIJ様と進めている真穴地区・柑橘栽培DX化プロジェクトだ。

JAにしうわ真穴共選・松良さんは「私が考えるスマート農業の一番の問題は、ICTリテラシーを持った人材不足であると考えます。私たちの世代は最新デジタル技術に着いて行けず、置き去りになっている人が多いのも事実です。その世代が、若い世代にICTに関する説明や、判断ができるわけもなく、そうなるとスピード感を持った推進や対応もできません。それを回避するためには、行政など手厚い支援はもちろんですが、私たち世代が積極的に学ぶ環境の整備と勉強会などの実施が必要であると思います。本プロジェクトでは、その機会を多くいただいております。一つひとつ議論をしながらデジタル化を進めていくためには、行政・民間・研究機関・生産者の総合連携と中長期を見据えた計画と実行が大切になると考えています。引き続き、地域一丸となって進めていけたらと思います」と実際に感じている危機感と、プロジェクトへの前向きな気持ちを話してくれた。

真穴共選で実施された勉強会の様子

■プロジェクトi実行委員会

本プロジェクトでは、衰退している今治商店街を、AIカウンターを使って人流データを分析すること、そしてどういったことをすれば活性化されるのかのプロセスの形成を進めている。現状の把握と分析、賑わいづくり、地域コミュニティとの協力がポイントで、エッジAIカメラを12箇所に設置し、通行人の性別・年代・時間帯・曜日などで分析。

その山を作るために集客イベントを開催した。11月に市内ファミリー層向けの集客イベント「キッズアドベンチャーワールド」、12月から1月にかけて脱出イベント「WHITE ROOM」を実施。インパクトの強いイベントを開催することで、県外からの集客に繋がるかを検証した。そして、2月には夜の商店の需要を分析するために、「ヨル街楽座」を実施。参加者にアンケートもとり、イベントの需要や満足度、今治商店街をどのように知ったかをヒアリング。

11月20日から2月29日までの人流データを分析すると、イベント開催時にしっかりと人が集まっていることがわかった。今後この実装を進めていくために、デジタルを活発的に取り入れている東京都の豊南町にある商店街の皆さん、そしてすでにエッジAIカメラを搭載している岡山県の岡山中央商店街の皆さんの視察と勉強会も開催された。

今期、商店街の現状を性別・年代情報などをデータで可視化することで、共通の目的ができ、商店街内部や周辺地域で協力者が増え、来期以降の発展に向けて前向きな姿勢が見て取れたという。そして、来期は、せとうちみなとマルシェと連携し、現在第二、第四日曜に商店街中央部で開催している日曜朝市を商店街全体に拡大するため、関係各所と現在調整中とのこと。商店街でもポップアップ事業などに前向きな声も挙がっているため、来期はそこもトライしてみようという動きになっている。

今治商店街の友田組合長は、「今回の取り組みでは、若者が少ない状況でたくさんの協力者が増えたのを実感しています。それに対して今まではデータはなく、判断する指標がなかったのですが、今回のプロジェクトでデータを生かしながら誘致誘客に繋げられる可能性を感じました。自分たちに合う助成金なども探していき、今治商店街を活性化させていきたいです」と話してくれた。

■ものづくり現場主導型DXの実装プロジェクト

金属の削り出し加工を行っているものづくりの会社「株式会社ユタカ」。同社は「技術の伝承(熟練工の技術をどう残していくか)」、「人材の定着(全国的に定着率が悪い)」「稼働率(製造業の生命線)」の3つの課題を抱えている。そこで、株式会社セラピアとともに、ノーコードによるアプリ開発を進めてきた。作業の見える化・分析、生産性向上のための無駄の削減、そして人材教育などに重点を置き、管理系と、コミュニケーション系の2つのアプリを開発した。

ユタカの担当者は「私はコミュニケーション系アプリの『サンキュー!アプリ』を開発しましたが、比較的直感的に作ることができました。今後の目標として、ビジョンの設定、目的、コストの裏付け、そして再度車内に周知し、全員が習慣化できるアプリの作成を目指します。そして長期的な目標として、ノーコード専門の部署を設置するなどして、社外の協力会社へのコーチングから仕事を活性化させる実践で使えるアプリを作っていきたいと考えています。」と話した。

■えひめロボティクス障がい者サポートコンソーシアム

障がい者支援ロボットを通じて、就労を希望する全ての人が働くことができる地域社会の実現を目指している。特別支援学校に通う肢体不自由者のうち6.2人しか就職ができていないという現状がある。

そんな状況を変えるために活用したのが、分身ロボット「OriHime」だ。県内の特別支援学校、就労支援施設と連携し6名の「OriHime」のパイロットを育成。

FC今治が運営しているカフェ「里山サロン」で、「OriHime」を使った接客サービスを実施した。3日間で66名が来店し、モーションなども活用したコミュニケーションで来店者アンケートでも満足度の高い結果となった。
「OriHime」のパイロットを経験した、宇和特別支援学校の2名の生徒と、教頭先生よりコメントがあった。

■宮本さんのコメント
「私は、特別支援学校の技能検定で接客部門喫茶サービスの勉強・資格取得を進めてきました。これまで培ってきた接客スキルを生かしたいと思い、今回の研修に参加させていただきました。自分の接客を通してお客様を笑顔にすることができたというやりがいをとても感じました。今後も自分の将来の夢である、接客業につけるように頑張っていきたいと思っています」

■兵頭さんのコメント
「初めてOriHimeを見た時に、机の上に乗った小さな体と、手をいっぱい動かしている様子などすごく可愛いと思いました!そのOriHimeを自分で操作していると、自分も可愛く見えているのかなと思って嬉しくなりました。私は一人で外出することができないので、OriHimeなら家でも働くことができます。またこのような機会があれば、ぜひ参加させていただきたいと思います!」

■村上教頭先生のコメント
「まず実地研修の2回目を終えた頃から、生徒たちは『次はどんな人に会えるかな?』とか『モーションを忘れないようにしないといけないな』などといった普段から次回の研修を話題にしていました。相手の話を最後まで聞くことや、話しすぎないようにするなど、そういった心構えが、授業や学校生活の中でも見られるようになりました」

このように、各実装先で良い方向に変化が起きたようだ。
続いて、採択事業者を代表して3社が登壇し、成果を報告した。そして4つの分科会ごとにわかれ、成果報告が行われた。

採択事業者3社成果報告

【農業生産ノウハウDX水平展開コンソーシアム(PLANT DATA株式会社)】
植物生体情報による農業生産ノウハウDXの確立・水平展開

▼PLANT DATA株式会社の事業詳細はこちら

【柑橘潅水制御デジタル化推進コンソーシアム(株式会社アクト・ノード|株式会社インターネットイニシアティブ)】
柑橘栽培のデジタルデータ化と継続的に進化可能な栽培モデルの実現

▼株式会社アクト・ノードの事業詳細はこちら

▼株式会社インターネットイニシアティブの事業詳細はこちら

【ソニーデザインコンサルティング株式会社】
ナイトタイムエコノミーで新たな経済効果を狙う

▼ソニーデザインコンサルティング株式会社の事業詳細はこちら

分科会による発表

■農業・林業分野

農業生産ノウハウDX水平展開コンソーシアム
柑橘潅水制御デジタル化推進コンソーシアム
PLANT DATA株式会社
株式会社アクトノード
やさいバス株式会社
有人宇宙システム株式会社
テラスマイル株式会社・サグリ株式会社
株式会社ジツタ
株式会社Root
EXest株式会社
株式会社オプティム
株式会社セラク
株式会社Furahi
ノウタス株式会社
愛媛柑橘×トレーサビリティプロジェクト
株式会社インダストリー・ワン

■水産・畜産・コミュニティ・教育

愛媛県漁業協同組合うわうみ支所
ウミトロン株式会社
魚類の旨味可視化コンソーシアム
株式会社リブル
海上養殖スマート化推進コンソーシアム
株式会社ゆうぼく
トヨタテクニカルディベロップメント株式会社
株式会社レボーン
楽天グループ株式会社
株式会社中国四国博報堂
株式会社ノトス
Ehime企業経営デジタル実装定着コンソーシアム
株式会社Cuel
愛媛保育ICT推進コンソーシアム
MS&ADインターリスク総研株式会社

■観光・コミュニティ

ソニーデザインコンサルティング株式会社
AVA Intelligence株式会社
株式会社FRINGE
株式会社MATCHA
LanCul株式会社
TOPPAN株式会社
観光客行動データ水平展開コンソーシアム
株式会社on the trip
株式会社結.JAPAN
ANAあきんど株式会社×ANAX株式会社
株式会社GATARI
株式会社for C(株式会社ネイキッド)
クラスター株式会社
プロジェクトi実行委員会
株式会社OHANA
次世代ファンコミュニティ形成プロジェクト

■防災・モビリティ・ものづくり・福祉

愛媛大学・京都大学
三井住友海上火災保険株式会社
株式会社CHIASMA FACTORY
株式会社アーバンエックステクノロジーズ
株式会社エイトノット
株式会社ハートネットワーク
株式会社セラピア
製造業DXスマート工場化コンソーシアム
ものづくり自動化省力化コンソーシアム
ピクトグラム株式会社
株式会社Kids Public
認定NPO法人カタリバ
サイボウズ株式会社
デジタルキッズクラブ愛媛
VALT JAPAN株式会社
えひめロボティクス障がい者サポートコンソーシアム

各事業者の事業内容はトライアングルエヒメ公式noteをチェック!

ネットワーキング

全ての発表が終了後、事業者同士や一般参加の方々との名刺交換や意見交換などが行われ、最後まで盛り上がりを見せた。

今年度で2年目となったトライアングルエヒメ。今年度の事業は一旦区切りを迎えたが、来年度も引き続き、行政・事業者・地域の人々・専門機関などが連携し、地域の課題解決、そして横展開を進めていく。

■公式ホームページ
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