『建物の在り方を変える』トラスに懸ける想い、沖村氏のストーリー #truss社内インタビュー
皆さんこんにちは!トラス広報担当です。
広報として、トラスの魅力を伝えていくべく社内インタビューに挑戦していきたいと思います。
第1回目はトラスの共同創設者である沖村に、株式会社トラスという会社についての想い、挑戦していきたいことなどについて聞いてきました。
「建築の自由な可能性」を知った大学時代
ー沖村さんにとって、建築の魅力とは?
時期によっても違いますが、高校生の頃は、実家が家を建てることになって、両親と間取りなどを考えていたのが楽しかった、という感じでした。
それが大学に行って建築の勉強をすると、『建築家』の小難しい主張が面白いと思うようになって。住宅を造ると30年、40年って建物は存在し続けるわけです。つまり建築家は、未来でも耐えうるものを造っていかなきゃいけなくて、未来の想像をすることになるんです。例えば図書館なら、昔は媒体が紙しかなかった。でも今はもうインターネットも出てきたし、図書館そのものの価値自体が変わっていってます。そうなると図書館の建物を造ること自体が、「もっと、こういうのもいいよね!」って変わっていく、作り直したりするんです。要するに、歴史を基本に将来どうあるべきか、そこで人がどういう生活をするか、どういう体験をするか、っていうのを建物に置き換えて図面に落とし込むってことをやっていたんです。未来を考えたりとか、建物を仕組みという観点から考えたり、その価値観を考えたりするのがとても楽しかったんです。
ー建物を通して、人の生活が変わる=建物の在り方が変わる、ということですね。
そう。もっと掘り下げると、建物ってモノなので、その意味付けは力のある人が「こうだと思う!」っていうとそれが歴史になったり、支持される解釈になったりするんですよ。自分で過去のものに対して「こういうものだ!」って言えたりする。ある種なんでもありなんです。自分で社会を創造する、世界観を造ることが出来る、それが魅力です。
3.11で直面した「現代の建築業界の限界」
ー実務時代に現在の建築業界の限界を感じたと仰っていましたが、具体的にどんなことだったのですか?
そうですね、3.11のときに感じたことがあります。いわゆる高台移転の話で、波にさらわれてしまったまちをゼロから、土を盛って高台を造るという計画に携わっていました。いろんな建築家の方たちの下で、一緒に仕事をしたんですが「まちをゼロから造る」訳なので、建物を造るだけにとどまらず未来にむけた仕組みづくりができたはずです。もともと少子高齢化が進んだまちを再建するにあたり、そこにどんな風に住んでどんな仕事をしていくとか、それこそ未来に向けて新しいまちが活きたものになるための、独自のルールとかそういうのも提言して実行していく必要があります。携わっていた建築家の多くが、大学教育の枠組みを経て建築家になっているんですけど、建築学的枠組みで物事を見る傾向が強いんです。本当は、建築以外の専門分野についてはその分野の専門家を引っ張ってきて一緒に計画をするっていうことができたはず、でも大体的にやらなかった。やることが「まちをゼロから造る」わりに、建築の話しかしていなくて、『このまま仕事をしていたら30年後とかに、あの時代の建築家は無能だったって言われるな...』ともどかしい思いになりました。
ーまちを造るっていうより、建物を建てるって感じだったんですね。
はい。道路とか見かけ上は造るんですけど、高齢化社会において既存のバス路線を復活させるだけでは不十分で、これからの未来における交通システムをどうするのかとか、福祉はどうするのか、若い世代がはいってくるための仕組みとか、そういうところが全然弱かったし、お金回りも。そういった点にある種の限界を感じました。
ーこういった経験を経て、沖村さんが表現したい世界というのはどんな形なのでしょうか?『自分で社会を想像する、世界観を造ることが出来ることが魅力』と仰っていましたが。
大学では抽象的な思考をする建築という世界があるということを知って、自分ならどういう風に考えるかなとぼんやり思っていました。それが実社会に出て経験を踏まえて、私の理想の社会の在り方っていうのは、その人の良さとか優れている部分、苦手やできない部分をみんなよく知っていて、肯定できる社会がいいなと思って。その人の良さ、その人しかできないこととかいろいろあるじゃないですか。「あれはあの人が得意だよ!」とか「自分にはこれはできないけど、これならできる」とか。それをみんながお互いに知っている社会です。
ーなるほど!3.11のとき「まちを造る」ためにいろんな分野の方の意見を聞くべきだった、と仰っていましたしね。
はい。学生のころに感じた魅力っていうのは、実務時代に感じた限界っていうのを経て今、トラスを通して実現したいと考えているんです。
建築の枠組みの中では、自由度の高い設計が必ずしもできるわけではないけど、未来がどうあるべきかを表現する、実現させるという目的なら、建築を造ることだけじゃなくて、ITを条件に加えてしまうとか。枠組みをずらしていく、と。現代のITによる大きな変化の時代には、もっと広範囲で総合的な構築することが可能だし実際にできるなと感じて。
トラスで「建築に関わるひとの環境を健全化する」
ー代表の久保田さんとは同じ大学出身ですよね。
はい。もともと設計事務所として独立するタイミングで修司と久しぶりに会って、「建材について何かやりたい」と言われて。
ー建材についてのプロダクトの発案は元から久保田さんだったんですね。
※後に代表久保田氏にも、創業に関するインタビュー実施予定です。
はい、それでアイディアを出し合って。最初に借りたオフィスは修司と私が二人並んだら身動きが取れないくらいの部屋でした。そこでひたすら建材カタログをデータ化して、ということをやりました。
ー建材の抱える問題っていうのはどんなものがあるんでしょうか?
建材の全体を俯瞰できないという所にあります。カタログは、各メーカーが自分たちの製品をいかによく見せるか、ということをしているので売りたい内容や数字を大きく書いて、売りたくないものは小さく書く、とか、レイアウトがそもそもわかりにくいとか。メーカー間で詳細の書き方も違ったりするので比較するのが難しい。違うカタログを行ったり来たりして見る必要があって、紙のカタログだと横断して俯瞰的に見ることができないんです。
そういう建材の詳細をカタログ読み込んで、データに落とし込むというのをひたすらやりました。
ーそこから、どんなアイディアを経て今のトラスの形になったのでしょうか?
自分は建築の実務をやっていましたが、そこまで詳細にカタログを見比べてできていなかったので、設計者が見やすくなるにはどういう形がいいかなと考えて、グラフの形を思いつきました。
検索はできないけれど、壁紙の見た目をざっと並べてあってそこから選べるというような、見栄えから選べるサービスは他でもやっているところがあります。でも例えば断熱材とか、ガラスの性能値とか、機能的な部分は数字を追っていかないといけないんです。当然設計者の人たちってエクセルで打っていって良さそうなものを選ぶんですけど、それをグラフに落としたかったんです。みなさんに使ってもらっていて好評です。
ー建材の機能、数値をグラフで一目瞭然の形にできたわけですね。トラスというこのプロダクトでできる良さはなんだと思います?
一番メタな部分だと、建築業界に関わるひとの環境を健全な形にできるなと思います。
設計者は建て主から予算を提示されて、その金額の中で造るんです。でも設計者は設計しつつ、いくらかかっているかかなりアバウトにしか知りえないんですよ!
だいたい予算を超えるようにして、図面の手直しをします。もちろん見積も施工者にし直してもらって、その下請けの人たちも関わってくる。しかも相見積もりだったりして。建て主はローン支払いが始まっている一方でそれで遅れた期間分いまの家賃が無駄払いだったりします。だから予算オーバーして手戻りしました、となると誰も得しないこんな無駄なことはないわけです。設計しつつ、それがいくらなのかわかる世界にしたい。そうなると建材のデータが必要で、ものの仕入れ値をわかろうとしたらECが必要です。ECをやるためにはデータが必要なんです。トラスにはそれができる。この手戻りの無駄を無くすことができると思っています。
あと、建材って当然ながらメーカーのなかの人が発案してめっちゃイケてる笑とか言って研究して製造販売してるんです。でもそういう努力とか人間味ってカタログ上だととても見にくいんですよね。その点、数値ベースで行くと製品の良さが浮かび上がってきます。建材を通して、造っている人たちの想いとか、その建材にしかない良さが設計者に届くといいなと思っています。まだまだ今のトラスでは不十分なところもありますが。
ーなるほど!沖村さんが理想の社会、としていた「それぞれの良さをみんなが知っている、肯定している」がまさにtrussのプロダクトの強みと共通していますね。
実務者視点だと、もっと探せる種類を増やしたいです。あともう少し建材の見え方を試行錯誤したい、「この建材はここがいいよ!」みたいなポイントを。最近はここら辺を少しずつやっていっています。他のサービスでもよくありますが「これを選んでる人は、この商品も見ています」とか。
メーカーの営業の効率を高くするサービスの展開
ー今後トラスでやっていきたいサービスなど具体的に構想があったりしますか?
どこかの時点でやりたいと思っているのは、メーカーの人に好評な「営業のシステム」です。
設計者にとって建材を選ぶタイミングは、全工程のうちのごく一部なので、そのタイミングで営業してくれないと意味がないんです。
メーカーの人たちは、設計事務所に足を運んで『どうですか?』って営業して説明するんですけど、実はその説明は知識のない新人が聞いていることがほとんどなんです。そして受け取ったカタログを社内で共有することはほとんどしたりしないので、とても営業効率が低いんですよね、これではいくらいいものをつくっても広まらず不健全な市場です。いいものをつくったらきちんと評価される環境にしたい。
トラスを設計者が使っているタイミングってまさにこのタイミングなんですよ。このタイミングでメーカーの人が「これどう?」って営業してくれたら助かるだろうなと。
検索条件を選ぶと、これとこれで検索した人には、この商品をメールで紹介する、というようなシステム内メールボックスかこれに類するものをつくりたいなと思っています。
エムスリーという、医療業界のメガベンチャーの話があります。医者に対して薬の売り込みをシステム内メールで行い、医者がそれをクリックして開いたらいくらかもらえる、というような、そういうモデルがあって。
設計者もそういう仕組みなら、メーカーからの営業メールを開いて読む時間に対して対価を受け取ることになるので心理的にも適切だと思います。メーカーの人たちは無駄足を運ぶ必要がなくなり適切なタイミングで適切な営業ができるようになり効率が上がり、双方にとって良い仕組みをつくっていきたいですね。
良い建物をつくったら価値が上がる時代に
ー今トラスでやっていることは、将来的に建築業界をどう変えると思いますか?
良い建物をつくったらきちんと評価され価値が上がる、というところですかね。いま建物って、価値がゼロになることが前提になっているんです。戦後、仕組みをつくるときに人口が増えて建物が増えていくのが前提で、そのときに建物を売買するより建物を壊して立て直す方が大きく経済が回るから理にかなっていました。でも、今は少子高齢化と人口減少で財布の紐が締まりそして建物余りの状況で、新築よりは少ないお金で既存の建物をリフォームやリノベをして使っていくほうが合理的です。新築の場合はメンテナンスを前提に、質が高く長持ちする建物を造っていくことが理にかなっていく。そうするとルールを変えていく必要があると思います。
そもそも経済のために建物を壊すって、環境的にもよくないし無駄ですよね。普通に考えて、造ったら大事に使うっていうのが人間として正しいんじゃないかなと思います。
今は駅から何分で、築何年で、面積がこれくらいで、というところでしか不動産の価値が語られていなくて、建物そのものの良し悪しが含まれていないですよね。建物の質のひとつの側面として、建材をしっかりデータ化し建物単位で管理していくと不動産の二次流通の価値指標のひとつになる。これは社会として健全だと思うんです。
ー建材のひとつひとつが見やすくなり評価されやすくなると、それを評価する人が増えるということでもありますしね。
そうです。メーカーが良い建材をつくり、それがきちんと選ばれ、そうしてできた建物が評価され価値が上がり、その過程では効率も上がり、賃金的にも全体的に上がっていく。いままでは誰かがさぼっていたという訳でなく、建材情報を流通させるのがカタログという形式しかなかったのが原因で、それをtrussのようなプラットフォームができるとみんなが健全化していく、そのように考えています。
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