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愚者へのいざない

愚者のカードの絵は、シンプルに説明をすると、ちょっと変わった格好をした若者が小さな荷物一つ担いで、行く先も決めずに旅へ出ようとしている場面が描かれています。

行く手には崖があり、犬が一匹吠えている絵もあればタロットによっては犬にかみつかれたりしている絵もあります。

タロットが描かれていたころの時代背景は今よりもっと閉鎖的で、人が居住する町は砦で囲まれていたような時代です。そんな時代に町を出てどこかへ行くというのは相当の準備や覚悟、目的がないと出ることはなかったし、出ようとさえ思わない人の方が多かったはずです。
そんな時代に小さな荷物一つ、目的や行く当てもなく、いったいお前はどこへ行くつもりなんだ、犬にもバカにされ、地図も持たず、なんて愚かなやつなんだ。というのが愚者のイメージです。
でも、ここで愚者側の気持ちにたってみるとなんでそんな狭い囲いの中で、毎日決まったことをして、この広い世界を見ようともせずに、知りたいとも思わないなんて、なんて愚かなんだろうという気持ちではないでしょうか。

この現代でも、まさに土の時代に建てられた頑丈な経済、資本主義という強固な砦の所有するという概念に囲まれて、たくさん生産してたくさん消費する…そんなサイクルのなかで疑問を持つことなく、そういう世界でぬくぬくと私たちは暮らしていました。

そんなとき、2020、2021年と占星術的にも水瓶座の時代、風の時代到来とささやかれ、星にそれほど興味のなかった人たちにも、風の時代という言葉が浸透しているように感じています。そしてBefore コロナにも着々と変化の波がきていたところに、世界的ロックダウンを経験して、変化の波が大きく加速したことは、みなさんも体感としてあるのではないでしょうか。今私たちは、この変化のグラデーションの渦中にあり、今までの価値観を見直し、且つ行動するところまで、内からも外からも求められています。

話をカードに戻します。愚者には0番または、数字がありません。まだ番号すら振られていないこのカードはトリックスターともいわれています。
それは、トランプでいうところのジョーカー。なんにでもなりうる切り札です。
タロットの大アルカナ22枚は、魂の旅路を描いているとも言われています。世界という最終カードで、魂の旅が一度終わり、また1のマジシャンから次の旅が始まります。0愚者は、終わりと始まりの間、始まりの一歩手前の何者でもない状態です。終わってから新たな世界へと切り替わって、まさに始まろうとしている、今この時、この時代そのものを反映しているかのようです。

また、愚者がもっているポテンシャルとして、始まりの1の前すべて持っている、ただ在るだけでパーフェクトな存在です。この全て持っていてどんな可能性も秘めているトリックスター的愚者、これは自己という自己をまだ掘り下げたりもしていない、自分という存在になんの疑いもない赤ちゃんのような自己肯定感そのものです。つまりは私たちは、始まる前に全て内包している存在であることを象徴しています。わたしたち、ひとりひとりが愚者というポテンシャルを持っているのです。

このまだ先がどうなるかわからない世の中で、最終目的地は見えませんが、わたし達ひとりひとりが愚者というトリックスターとなり、自分が描いていた常識という枠の外へ、まだ見ぬ世界へ、愚者がスタンダードになる世界を共に創ろうではありませんか。


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