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聾学校時代

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幼稚部から中学部まで13年以上通った聾学校時代のNoteをまとめています。 ※マガジン分類は今後変わることがあります
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2020年6月の記事一覧

聴こえない子どもと聴こえる親の間で。私たち姉妹は、互いを半身のように密着して生きてきた。

わたしには3歳下の妹がいる。私と同じく耳が聴こえない。 兄という存在に憧れていた私は、自分が兄をもつことは難しいからそれなら弟だ、と思って、母に、弟がほしいと言った。小学校高学年あたりの頃だ。 母は「また聴こえない子が生まれたらどうするの!」と言った。その話はそれきりになった。 私はそれを言われたとき、戸惑った。男か女かどちらが生まれるかわからない、と言われるかもしれないとは思っていたが、聴こえるか聴こえないかを言われるとは予想していなかったからだ。 聾学校には、私たち

私は子ども時代、ずっと1人で本の世界を泳いできた。1人で、本の世界を楽しむことが当たり前だと思っていた。

聾学校の図書室は、いつ行っても誰もいなかった。 自分しかいない図書室で、私はゆっくりと図書室内を回りながら本を物色した。6畳ぐらいの広さしかない図書室だったので、あっという間に一回りできてしまう。そこに新刊という概念はなく、そこにある本は何年も変わっていないように思えた。 私はいつも1人でふらっと図書室に寄り、1人で本を物色し、1人で貸し出しカードを書き、1人で読んだ。聾学校からの帰り道、本を読みながら帰った。そして1人きりの図書室で、本を返した。誰とも本の感想を言い合うこ