名車解説: メルセデスベンツ・300SL
車あんまり分かんないけど、なんかかっこいいよね!みたいな方に向けて初noteを書いてみた。
どうせ書くならと選んだのは大好きなメルセデスベンツの300SL。古いベンツのなかではかなり有名だから知ってる方も多いはず。
以前雑誌で読んだんだけど、メルセデスベンツの社員に好きなベンツを聞くと多くの人がこの300SLと答えるんだとか。
なぜこのベンツがこんなに愛されているのか? その歴史も含めて解説していくよ。
300SLとはなんぞや
この文字の羅列も切り分ければどんな車か見えてくる。
300
排気量を表し300なら十倍した3000ccという意味。排気量というのはエンジンの大きさの一つの指標なんだ。
SL
Sport・Lightの略。 速くて軽い、的な?
ちなみに〜クラスと言われる前のベンツはこの方法で大体理解できる(はず)
300SLの元ネタ
この写真もベンツの300SL。あれ、なんかさっき見たやつと違う?
というのも300SLというレースカーがあって人気が出たから、一般向けにスポーツカーとして手直しされて売られたのが今回解説する300SLだ。
でもその前にこの300SLレースカーの解説をしなければいけない。
メルセデスベンツは古参の自動車メーカーとして戦前は世界中のレースで勝利を挙げていたものの、第二次世界大戦のドイツの敗北によりレース活動は一旦ストップ。1950年になりレースに復帰することを決める。
ただ0からレースカーを作るには手間がかかるから300というセダンをベースにすることにしたんだ。
この300というのは今でいうところのSクラス、当時のベンツの中で一番大きくて高級な車だった。確かに大きなエンジンを積んでいるんだけどボディが重すぎてレースには不向き。
そこでベンツは「元々あったエンジン+新開発フレーム+新開発ボディ=速い車」という感じで開発を進めたんだ。
フレームというのは車の骨組みのようなもの。木造の家を建てる時にはまず木の柱だけで家の形状を作り上げているよね。あんな感じ。
当時、ベンツはジャガーのCタイプというレースカーを参考にしたそうだ。ジャガーは太い鋼の管を用いて平面の長方形のフレームを作っていたんだけど、ベンツは細い鋼管をマッチ細工のようにして組み合わせて直方体のフレームを作ったんだ。
さてフレームはできたから次は被せるボディを作ろう。
上の写真を見ると分かるように直方体という三次元的なフレームになることで強度は出た代わりにフレームが大型になってしまった。具体的にはSLのボンネットの高さまでフレームが存在し、ボディ横にまでその高さのままフレームが続いてしまっているのだ。これではドアを開けたら鋼管のフレームが文字通りハードルになっており、さすがにマズい。
ただフレームはもう変えられないので、上向きに開くドアをつけて上から乗り込む感じにしちゃえばいんじゃね?って開発陣は考えた。そこで取り付けられたのがあのガルウイングドアだったのだ。
フレームが完成しボディもカッコイイ感じのができた。さあ後はエンジン。
300セダンのエンジンではちょっと役不足なので、ベンツはこのエンジンに直噴化という技術を使った。ただ直噴化の仕組みは結構難しいので割愛。気になる人は是非ググってみて。
もともと直噴化っていうのは第二次世界大戦の戦闘機で使われた技術なんだけどそれを車でも使えるようにベンツが応用したんだ。
直噴化すると同じエンジンでもパワーが上がるから近年では軽自動車なんかにも当たり前に採用されているけど、それを50年以上前に世界で初めて採用したのがこの300SLレースカーというわけ。
さてフレーム、ボディ、エンジンが揃い車が完成。 1952年に5つのレースに参戦して4つで総合優勝、もう1つも総合2位という好成績を収めた。
この活躍を見たアメリカのディーラーが「一般向けにもこれ売ってくれよ!!」とドイツのメルセデスベンツ本社に掛け合った結果、市販車である300SLが生まれることになったんだ。
300SLクーペの誕生
市販車化にあたり多少の手直しはしたがフレームやエンジンは大幅に変わることなく発売、しかもレースカーよりもハンサムになっている。
まあ、この見た目じゃん? しかも最高速度は250kmも出る。アメリカはもとより世界中で(この価格帯のスポーツカーとしては)バカ売れ。
当時ベースになった300セダンが51年~58年で760台作られたのに対して、300SLは54年~57年の間で1400台も作られたんだ。
さらにメルセデスは57年にテコ入れを施す。今までの300SLは生産中止し、アメリカからずっと要望があった300SLロードスターに生産を変更したんだ。変更点としてはヘッドライトが真ん丸から縦の楕円に変わったほか、フレームを改良してドアが通常タイプに戻ったんだ。やればできる。
このロードスターは57年~64年の間に1858台が作られたほか、同時平行で190SLという小型モデル(今でいうSLとSLKみたいな関係性)が開発されてこちらもヒット。この190SLがモデルチェンジを繰り返して現在のSLまで繋がっているんだ。
上の写真では1番手前が300SLロードスター、その1つ奥が190SLロードスター。
300SLの後継モデルはなく1代限りで終わってしまった。実質レースカーだからあんまり作り続けるのもまずかったのかもしれない。
参考文献
・「カーグラフィック 2017年5月号」株式会社カーグラフィック
・「ROSSO 2018年3月号」株式会社ネコ・パブリッシング
掲載画像は全てDaimler global media siteより
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