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[翻訳] ポーカーの理論において最も重要な3つの概念 by Patrick Howard

今回もPatrick Howardのブログから、あらゆるポーカー戦略の基礎となっている概念に関する記事を翻訳しました。
Patrickは、この記事の中で次の3つを最も重要な概念として挙げています。

  • 期待値 (EV) 

  • 最小ディフェンス頻度 (MDF) 

  • 最適ブラフ頻度 (OBF、ブラフバリュー比率とも言う)

これらの概念の定義と計算方法について、まだ自信がない方はぜひ読んでみて下さい!

Patrick Howard @mobiuspoker


ポーカー理論における3つの柱

The Three Pillars of Poker Theory
2022/9/3

期待値最小ディフェンス頻度最適ブラフ頻度。ポーカー理論において、私は、この3つが最も重要な概念だと考えており、戦略に関するほぼすべてのことを学ぶための前提条件だと考えています。

ソルバーの時代である現在、これらの概念を本当に理解しなくても、ポーカーを勉強して上達することは不可能ではありませんが、その場合ほぼ暗記をすることになってしまいます。背景にある基礎的な理由を理解せずにソルバーのアウトプットだけを勉強していても、実際にプレイをする場面で自分の頭で考えることが非常に困難でしょう。

1. 期待値 (EV: Expected Value)

すべてのポーカープレイヤーは、EVの基本的な計算方法を知っておくべきでしょう。EVの計算式がこちらです。

EV = 勝つ確率 × 勝った場合の金額 - 負ける確率 × 負けた場合の金額

勝つ確率 + 負ける確率 = 100% になります。

例:
あなたはリバーでピュアブラフを持っています。ポットをスティールするため、3/4ポットサイズのベットをしようと考えています。相手のフォールド頻度が60%だった場合、あなたのEVはいくらでしょうか。

勝つ確率 = 60%(相手のフォールド頻度)
勝った場合の金額 = 1PSB(=ポットのデッドマネー)
負ける確率 = 100% - 60% = 40%(相手のディフェンス頻度)
負けた場合の金額 = 0.75PSB(あなたのベット額)

EV = 0.6 × 1PSB - 0.4 × 0.75PSB
EV = 0.6PSB - 0.3PSB = 0.3PSB

答え:
あなたのEVは 0.3PSB、つまりポットの30%です。このブラフはかなり+EVということになります(相手のフォールド頻度がMDFより高かったため)。

注意:
EV計算では、2つ以上の項を持つことができます。その場合、各項の確率の合計が必ず100%になること。

*訳注: PSBとは、pot-sized betの略です。1PSBは、ポットサイズと同額のベットを表します。

2. 最小ディフェンス頻度 (MDF: Minimum Defense Frequency)

最小ディフェンス頻度とは、あるスポットにおいて、アグレッサー側のブラフが常に利益的になることを防ぐために、ディフェンダー側がコールまたはレイズしなければならない頻度のことです。もしプレイヤーがMDFで正確にディフェンスすれば、相手のブラフはブレイクイーブン(ゼロEV)となります。

次の式を使って、リバーベットに直面したときのMDFを計算します。

MDF = 1 ÷ (1 + b)
b はベットサイズ(単位はPSB)です。

例:
あなたはリバーでピュアブラフを持っています。ポットをスティールするため、ポット100%のベットをしました。相手のMDFはいくつでしょうか。
MDF = 1 ÷ (1 + 1) = 1/2 = 50%

答え:
相手のMDFは50%です。相手がぴったり50%の頻度でフォールドすれば、あなたはこのブラフはブレイクイーブンとなります。もし相手のフォールド頻度がもっと高ければ、あなたのブラフは+EVです。相手のフォールド頻度がもっと低ければ、あなたのブラフは-EVとなります。

注意:
MDFは “1-α” と表記されるのが一般的で、α(アルファ)はフォールド頻度のことです。

MDFは、現実よりもはるかに単純なモデルです。事実、真のゲーム理論に基づいた最適ディフェンスは、アグレッサーがブラフすること自体を無差別にする訳ではありません。アグレッサーが、チェックするかブラフするかを無差別にするのです。

その結果、PioSOLVERはすべてのリバーのラインにおいて、MDFより低い頻度でディフェンスすることになります。ベットサイズによって多少の差はありますが、ほとんどのラインで、MDFより5%ほど低い頻度になっており、それより更に低いラインもあります。

さらに、この計算式は「リバー」での近似値を求める場合のみ有効です。フロップやターンで使うことはできません。ソルバー以前は、リバーより前のスポットで、MDFが何であるかを本当にわかっている人はいませんでした(しかし、かなりの精度で近似値を出していた人もいました)。

参照:
こちらの表は、様々なリバーベットサイズに対するMDFを示しています。

多くの人は非常に厳格に理論を勉強しており、相手がGTO戦略から逸脱したときにどうなるかを研究することにあまり時間を費やしていません。そのせいで、下の表のような数学的なお宝を見逃すことになります。

この表は、相手がMDFより5%少なくディフェンスをした場合の、リバーブラフのEVを、様々なベットサイズで示したものです。

αは最小フォールド頻度、α'は最小フォールド頻度に5%足したもの

ご覧のように、相手が5%オーバーフォールドする場合のブラフのEVは、ベットサイズが大きくなるほど大きくなります。

ベットサイズが大きくなるにつれ、MDFは下がります。したがって、オーバーベットに対する5%のオーバーフォールドは、小さいベットに対する5%のオーバーフォールドよりも大きなミスになるという考え方ができます(MDFの多くの部分をディフェンスできていないことになる)。

この点、実はかなり劇的な影響があります。実際、相手がリバーで2PSBに対して5%オーバーフォールドした場合と、1/3PSBに対して10%オーバーフォールドした場合を比べると、2PSBのブラフのEVは、1/3PSBのブラフのEVよりわずかに高くなるのです!ほとんどのプレイヤーは、その逆だと考えているでしょう。

3. 最適ブラフ頻度 (OBF: Optimal Bluffing Frequency)

OBF(またはブラフバリュー比率)とは、あるスポットで、相手のブラフキャッチャーをブレイクイーブン(EVゼロ)にするために、プレイヤーがブラフしなければならない頻度のことです。

OBFは、ディフェンダー側に提示されるポットオッズのことであり、ベットサイズと関係します。OBFは、ディフェンダー側がベットにコールするために最低限必要なエクイティと一致します。

ポットオッズの概念を理解していない場合は、読み進める前にまずポットオッズに関して調べてみてください。インターネット上にはこれに関する記事がたくさんあります。

次の式を使って、リバーベットに対する最適なブラフ頻度を計算します。

OBF = b ÷ (2b + 1)
b はベットサイズ(単位はPSB)です。

例:
相手はリバーでポット1/2のベットをしました。彼の最適なブラフ頻度はいくらでしょうか。

OBF = b ÷ (2b + 1)
OBF = 0.5 ÷ (2 × 0.5 + 1) = 0.5 ÷ 2 = 25%

答え:
相手は25%の頻度でブラフをするべきです。もし相手がぴったり25%の頻度でブラフをするならば、ブラフキャッチャーでコールすることはブレイクイーブンになります。もし相手のブラフ頻度がもっと高ければ、あなたのコールは+EVです。相手のブラフ頻度がもっと低ければ、あなたのコールは-EVです。

注意:
MDFの計算式と同様に、この計算式はリバーでのみ有効です。OBFは、そのハンドの残りストリートが多いほど高くなります。
また、この計算式は、ベッター側のレンジはナッツとエアーのみ、コーラー側のレンジはピュアブラフキャッチャーのみ、と仮定しています。実際には、ベットレンジ側も、コールレンジ側も、もっと中程度の強さのハンドが含まれますが、それでもこの簡略化したモデルは強力な近似値を得られます。

参照:
こちらの表は、様々なリバーベットサイズに対するOBFを示しています。

ポット4倍のオーバーベットを、ポット2倍のオーバーベットと比べると、OBFは4%しか高くならないことがわかります。これは、ポットオッズと漸近的関係であるためです。ベットサイズが無限大に近づくと、OBFは50%に近づきますが、決して超えることはありません。これを視覚的に表現したものが下のグラフです。

OBF と ベットサイズ(PSB)の関係

MDFと同様に、今度は5%のオーバーブラフに直面したときにブラフキャッチャーでコールした場合のポットサイズベットでのEVを様々なベットサイズについて見ていきます。

この表は、相手がOBFより5%多くブラフした場合の、ブラフキャッチャーでのリバーコールのEVを、様々なベットサイズで示したものです。

βはOBF、β'はOBFに5%足したもの

ご覧のように、MDFと同様、オーバーブラフの差分が一定である場合、ベットサイズが大きくなるほどブラフキャッチのEVは大きくなります。ベットサイズが大きいとディフェンスが難しくなりますが、同時にバランスを取ることも難しいのです。

結論

このポーカー理論における3つの柱を理解すれば、あなたが勉強するハンドの背後にあるGTO戦略の少なくとも基本的なレベルは理解することができるでしょう。

もしあなたがプロポーカープレイヤーなら、これらの計算は寝ててもできるようになるべきです。頻出のベットサイズに関しては、MDFとOBFは暗記しておくべきでしょう。私がポーカーを始めた頃、上で紹介した表をフラッシュカードで覚えて、モニターの上にも貼っていました。

均衡におけるこれらの概念を勉強するだけでなく、相手がGTO戦略から逸脱した時に何が起こるかも確かめることも忘れないようにしましょう。これこそが、機械的にソルバーの真似をしようとする(そして失敗する)のではなく、テーブル上で自分の頭で考えられるようになるための鍵です。そして、相手をエクスプロイトする方法を見つけるために、よりクリエイティブになる助けにもなるでしょう。それこそが、ポーカーにおいて、本当にお金が生まれる場所です。

*記事内で紹介したEV計算のスプレッドシートは こちら のリンクから閲覧できます。

翻訳元:
https://www.mobiuspoker.com/blog/the-three-pillars-of-poker-theory


翻訳は以上です。読んで頂いてありがとうございました!

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