good morning all 自陣二次創作小説

your name…

「…サイモン」
「ありがとう!お姉さん」
街の中央、噴水がある広場のベンチ
小腹が空いた僕のために休憩を兼ねてご飯を取ることにした。
「天に在します我らが父よ今日も生きる糧をありがとうございます…お祈り終わり!食べよう!」
「うん…食べる」
香ばしい小麦とバターの香りが鼻腔をくすぐる。
一口齧ればクロワッサンのパリパリの生地にフワフワのスクランブルエッグに柔らかなロースハムの塩気が丁度よくシャキシャキのレタスも瑞々しい食感がたまらない。

「美味しい!サクサクでフワフワで甘くてしょっぱい!」
サイモンは夢中になってサンドを食べた、その横で彼女は幸せそうにご飯を頬張るサイモンを眺めていた。
「……お姉さん、食べないの?」
「?」
「美味しいよ?」
「サイモン、コレ、おいしい?」
「うん!ほっぺた落ちちゃいそうなくらい美味しいよ、…お姉さんも一緒に食べようよ」
「…わかった」
そう言って彼女も手元にあったサンドに齧り付いた。

「ねぇ、お姉さんは、自分の名前思い出した?」
ふと、サイモンはずっと気になっていた事を彼女に打ち明けた。
「…名前?」
「うん、ずっとお姉さんって呼ぶのはなんだか寂しいし」
「…名前、忘れた」
彼女は簡潔にそう言った。
「…そっかぁ」
サイモンは途方に暮れた。
しゅんとしながらもサイモンはサンドを食べ進める。
「…サイモン」
「なぁに?」
「サイモンが、つけていいよ」
言葉の意味が理解できず、サイモンは小首を傾げた。
「名前」
「なまえ?」
「そう、わたしの」
「……ふぇ」
驚きのあまりサイモンは変な声が出た。

「うーーん」
サイモンに名前をつけてとお願いすると、サイモンは難しい顔になったり、買ってきたレモンスカッシュを飲んで酸っぱい顔をしたり赤くなったり青くなったりと大忙しだった。
百面相をするサイモンを見るのが面白くて、つい頬が緩んだ。

お姉さんから重大なお願いをさらっとされてしまった、人の名前をつけるなんて大切な事僕が決めちゃっていいのかな?…いや、お姉さん確か神様だよね?!どうしよう、名前をつけるなんてお爺ちゃんが飼ってた羊達くらいしかないよ…
エミリーはどうかな?…いや、ちょっと幼い女の子みたいだし、大人の女の人、いや、神様にしてはふつうすぎるよね?ソフィア…でもお姉さん忘れっぱいからなんか違う…グレース?ミア?マリア?…うわぁんっ神様の名前なんて僕つ決められないよ…

その後もサイモンの頭の中でたくさんの名前が浮かぶが、どれもしっくりとこず、頭を悩ませた。

「…名前なんて思いつかないよ」
しょぼくれて貰ったレモンスカッシュを口につけた、思ったよりレモンが強くて顔がしわくちゃになった。

「このレモンスカッシュ、酸っぱいね」
そう言ってサイモンが彼女を見ると、とてもニコニコと楽しそうに自分を見ていた。

「…」

サイモンは単純に彼女の笑顔に見惚れていた、しかし、その笑顔でストンと何かがハマった気がした。

「ニコ」
「に、こ?…なまえ?」
「…うん、キラキラ笑顔が素敵だから、ニコ!どう?気に入った?」
彼女は何度かニコと呟く。
「…気に入った、面白い」
彼女…ニコは、嬉しそうにサイモンにありがとうとお礼を言った。
「ふふふ、よかった!ニコこれかもよろしくね!」

朝の陽光が噴水の水を反射し、キラキラと二人を照らしている。

名前をもらった神様と少年の新たな日が始まる

ーきっと今日は最高の1日になる。

                fin


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