パイオニアEDH《悟った喪失者、ナーセット》
皆さんはパイオニアEDHをご存じだろうか?
その名の通り、パイオニア範囲で統率者戦をやろう!というルールである。
とはいえ、こうした派生フォーマットはこれまでたくさん出てきた。
正直そういうのが出るたびに
まあたまに遊ぶにはいいな、普通に統率者で遊んだほうが楽しいけど。
と思ってしまうところもあったのだが、
このパイオニアEDH、めちゃくちゃ面白い!
あまりにもぶっ壊れたカードが少なく、1ターン目からガンガン動いていく展開もないのでじっくり楽しめる。
そして新フォーマットが生まれるたび、バグを見つけゲームを破壊しようと試みるプレイヤーが現れるものだが、強力な戦略が発見されるたびにその対策が進み、メタられる。
どうやら今のところ対策してもどうしようもないくらいの突出したデッキというのは現れていないようだ。
通常の統率者とは全くメタが違い、オタクカードが飛び交いまくる。
自分も先駆者から洗脳を受け勧められ、以来かなりどっぷり遊んでいる。
詳しいルールは下記リンクを参照してほしいが、
簡単に言えば使えるカードはパイオニア範囲のEDH。ただし禁止カードについては統率者戦で禁止されているもののみ。
フェッチランドも《王冠泥棒、オーコ》も使ってOK。
そして今回のテーマはパイオニアEDH版《悟った喪失者、ナーセット》デッキの解説だ。
全員に果敢を持たせ、かつ攻撃時に自身のパワー未満の土地でもクリーチャーでもないカードを唱えることができるという効果だ。
自軍に果敢を持たせるのも強力だが、注目すべきは攻撃時の能力。
これは自分の墓地だけでなく、相手の墓地からも唱えることができる。
強力な呪文を多く使うデッキが相手にいれば、それらを利用することも可能だ。
考えられる戦略も、
・果敢能力を活かし、クリーチャーを並べまくり、高打点で勝利を目指す
・墓地から唱える効果を活かし、自ら墓地を肥やしてアドバンテージを取っていく。
・ライブラリーアウトをしながら、相手の墓地に落ちたカードをつまみ食いする。
……とこんな感じで色々と考えることができる。
こうした拡張性の高い能力が《悟った喪失者、ナーセット》の魅力だ。1枚の統率者で多くの楽しみ方がある。
色も3色あって強力なカードを詰め込めることから、普通の統率者戦でも間違いなく強力なジェネラルとなってくれるだろう。
ではパイオニアEDHではどうか?
パイオニアEDH村における強力な戦略として、「緑のランプ戦略」がある。
《ラノワールのエルフ》・《水蓮のコブラ》のようなカードでマナ加速を行い、相手より数ターン速く強力なアクションを取りそのままマウント勝ちするというものだ。
しかし緑以外はこのマナ加速戦略が取れない。
パイオニアEDHでは1マナのマナファクトはおろか、まともな2マナアーティファクトも《秘儀の印鑑》のみ。基本的には3マナからマナ加速が可能になる。
しかし緑系デッキは2ターン目にマナ加速をしてから、3ターン目くらいに統率者を出すなどの「最初の仕掛け」をしてくるので、テンポが1ターン速い。
一方ナーセットはそこまで早くないデッキだ。こっちかのんびり土地を置いている間に、先んじて大きな有利を取られてしまって、打ち消しを構える暇を中々与えてくれない展開になりがち。
そして土地が途中で止まってしまうとスケールの大きいデッキの圧力に耐えきれない、というところも色々と考えていかなければいけない。最低5ターン目までは土地が止まらないようにしたい。これはナーセットに限らず全てのパイオニアEDHで必須の考え方だ。
ということで構築では
①2ターン目に能動的アクションを取れる
②土地を安定して置ける
を軸にして、そのうえで《悟った喪失者、ナーセット》をしっかり活かす形を目指す。
デッキリストはこちら。
https://www.hareruyamtg.com/decks/529808
【構築過程】
果敢デッキといえば、「トークンを出して、細かいスペルを連打して勝利を目指す!」という形をまず思い浮かべるだろう。
結論から言えば、それでは全く理想の形にならなかった。
問題点は以下の通り。
・安定しない。
トークンを出すカードと呪文両方を持つことで強力な戦略となるのだが、どっちかが欠けていると途端に動きが緩慢になる。
・ナーセットの墓地利用を上手くいかせない。
果敢のために1,2マナ呪文で固めると、必然的に弱い呪文を使い回すことになるので、ナーセットの墓地から唱える効果の旨味が減る。
パイオニア範囲ではマナコストから逸脱したぶっ壊れ呪文が少ないので、スケールの小さいデッキになってしまう。
ということで、果敢でのサイズアップと墓地利用のバランスを上手く整えてあげないといけない。
そこでたどり着いたのが、「軽くてウザいクリーチャーをナーセットでサポートする」という戦略だ。
アドバンテージが取れる《フェアリーの黒幕》や墓地を肥やせる《帳簿裂き》だけでなく、《ドラニスの判事》《静寂をもたらすもの》といったヘイトベアーも採用。
個人的には《厳しい試験官》が上陸の誘発を妨害できてお気に入りだ。
基本的に置物として運用されるこれらのカードだが、攻める際にはナーセットの果敢でアタッカーとしても活用できる。
最終的には果敢しながら追加ターン連打で殴り切って勝利する。
トークンを出すだけのカードはほとんど抜いてしまった。
このデッキで必須だろ!と当初思っていた《僧院の導師》、《荒野の確保》も抜けた。
追加ターン連打まで繋がれば、果敢でサイズアップした《放浪皇》や《アールンドの天啓》のトークンだけで十分勝てる。
またナーセットは手札入れ替え系の呪文を強く使えるのも嬉しい。
捨てた呪文を再利用できるので、序盤要らないカードを捨てておいて、後々に使うのが常套手段だ。
パイオニアの追加ターンは《運命のきずな》以外使ったら追放されるので、墓地に捨ててナーセットで拾っても損しない。
この形のいいところは、初手によってプランを柔軟に変更できるところだ。
クリーチャー多めのハンドならばそれらで妨害しながらナーセットの時間まで引き延ばせばいいし、無いなら除去プランを取れる。
そして一見勝たなそうなところから追加ターン1枚で繋がって勝てる大逆転のポテンシャルがあり、最後まで勝ちを諦めずにプレイできる。
そしてこの柔軟性と強度から、使っていて非常に面白い。
ただ決して1v3できるほどのパワーはないので、卓のバランスをしっかり考える必要があり、それなりの難しさがあるのもずっと味するガムって感じでめちゃくちゃ楽しい!
最強の構築ではないかもしれないが、使っていて一番面白いデッキリストになっていると思う。
【ナーセット三種の神器】
他のデッキで使ってもそれなりだが、ナーセットだと更に輝くパワーカード、それが「ナーセット三種の神器」だ。
1つ目は《ジェスカイの隆盛/Jeskai Ascendancy》。
果敢でのサイズアップが更に大きくなるので、これが置いてあると墓地のカードをほぼすべて唱えられる。
しかも手札入れ替えによって次なる果敢の種や追加ターンを探せるし、アンタップするので適当に使ってても攻防一体で強い。
捨てたカードはナーセットで使い倒そう。
2つ目は《セゴビアへの侵攻/Invasion of Segovia》。
呪文を唱えることでサイズをあげる性質上、マナをそれなりに必要とする。しかしこの《セゴビアへの侵攻》が裏返れば、呪文が召集を持ち、果敢しやすくなる。
それだけではなく、守備カウンターが4なので、《セゴビアへの侵攻》を出してナーセット即アタックすれば、墓地に何もなくても果敢でパワーが上がり即座に変身させられる。
そしてトークンが出ることで打点も上がるし、強いことしか書いてない。
また1つ目の神器、《ジェスカイの隆盛》と揃うと《全知》になるといって差し支えない。
3つ目は《真実の視認》。
普通に使えばソーサリーの《予期》だが、手札以外から唱えると《Ancestral Recall》。
ナーセットで墓地から唱えるとファッキン無料のためドロー効率がバグり、この世の法則が乱れる。
このデッキでは頻繁に手札入れ替えを行うので、捨てるのに困ったらまずコイツを墓地に送るのがいいだろう。
ということでパイオニアEDH、まだまだ未開拓の暗黒大陸がある。
聞いたところによるとパイオニアEDH委員会はフォーマットを破壊する五大厄災を見つけて欲しいそうなので、みんなもこのフォーマットを破壊しよう!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?