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手織りの良さを伝えたい

はじめまして。trois tempsの藤野と申します。
この度noteを始めることにしました。

ここでは、私たちが普段作っている手織り生地の素晴らしさと、できあがった生地をバッグやマフラーなどに仕立てているtrois tempsの制作の様子を皆さんにご紹介していきたいと思います。

普段の店頭やイベントなどではお伝えしきれないことや、なかなかお話しする機会がない事についても書いていければと思っています。


1. はじめに、私の自己紹介をします。



藤野充彦
東京生まれ

私は中学生の頃から友人たちとファッションに興味を持ち始め、高校生になると自分のスタイルを思う存分楽しんでいました。代官山から渋谷へ、そして更に原宿へと、若さと交通費の節約を兼ねながら友人たちと一緒にお店を巡ることが楽しみでした。

そのうちファッションに関わる仕事に興味を持ちました。
私自身が服をデザインしたいという思いが強まったのです。一度は法政大学に進学しましたが、結局その夢を諦めきれずに服飾の専門学校エスモード東京校に進学することを決めました。

その学校はパリへの留学も可能であり、私は20歳の頃、フランスへ向かいました。パリでは学校に通いながら、単なる学生生活だけでは飽き足らず、実習生として様々な会社やアトリエでファッションについて学ぶことができました。

学生からのちに労働ビザを得てアシスタンとなり、その後フリーとして主にクリエータのもとで経験を積みました。5年間のパリ生活では、さまざまな経験をする事ができました。
そのことについては、いずれ他の機会に書こうと思います。

2002年に帰国後、アパレル会社や商社、企画会社などでデザイナーとして勤務。
目が回るほどの忙しさで一時期は5〜6ブランドを受け持ち、一月に100以上のデザインを商品化したりもしました。
とても大変な時期でしたが、それでもその期間にはたくさんの経験もさせていただきました。
この経験は、今の私にとって貴重な財産となっています。
例えば、色の組み合わせを考えるときに頭の中でやった方がPCなどでシミュレーションするよりもずっと早いことや、生地についての知識、モノづくりの仕組みの良い点と悪い点、お客様に本当に喜んでもらえる事の大切さ、デザインとは、などなど。

しかし段々と日々のデザイン活動の中で、窮屈さを感じる事も多くなっていきます。
とてもいい素材を見つけても生産ロットの問題やブランドの規模や商品構成などの関係で、みんなが良いと思っていても世には出せずにボツになることも結構ありました。
加えてリーマンショック後の不景気で、アパレル業界の大半が新しいことへの挑戦ということよりも、過去の売り上げ実績に基づいての商品企画に重点を置く、そういう時期でもありました。
去年売れたものを今年も少し変えて作ろう、という様に。

そんな中、自分がこの仕事を志した原点について考える事が多くなりました。
やはり自分が楽しいものを作りたい、皆さんに紹介したい。
その思いが強くなり、2011年わがままを言ってデザイン事務所として独立する道を選びました。
それこそリーマンショック後で世の中大変な時期でしたので、みんなに心配されましたが、それでも自分の創作への意欲を保つために決心しました。

2.手織りとの出会い

現在でも使用している織り機

有難いことに独立後もすぐにお仕事をいただきながら、デザインということや自分に何ができるかという事を模索する日々が続きます。
そこで本当に偶然出会ったのが、「手織り」でした。
用事があり実家に立ち寄った時に、母が知り合いの教室で習い始めた「手織り」に出会ったのです。
自分で織ってみたというマフラーを見せてもらい首に巻いてみると、驚くほど軽くて温かい感触に驚きました。
それから興味本位で色々聞いていくうちに、「これができたら、なんの制約もなく見本用の生地を自分で織る事ができて楽しいかも」という軽い気持ちでチャレンジしたのがきっかけです。
始めてみると実際には、とんでも無く大変な作業でした。
私たちのアトリエで皆さんに参加していただくワークショップの感想と全く同じです。
それでも、作業をしていると心地良い安らぎと達成感に満たされている気がして、どんどんのめり込んでいきました。

3.手織りの良さを伝えたい

カシミヤのマフラー

そうしていくうちに、せっかく自分で織った生地を何か形にしないともったいないな、と思い始めて小物やマフラーに仕上げていくようになりました。
そして自分でもすごく実感したのは、織り上がった手織り生地の「軽さ」です。
私はもともと、首にタオルを巻くのも肩が凝ってしまい嫌いでした。
そんな私が手織りのマフラーをして一日中外出していても全く肩も凝らず、途中つけているのを忘れるくらいでした。
今でも、同じ感想をマフラーをお使いいただいているお客様からよくお聞きします。

そうして、ある思いが芽生えてきます。

「この感動を多くの方に共感してもらえるように伝えたい!」

そう思う様になりました。
そこからは、これまでのデザイナーという仕事の経験を活かして自分に何ができるだろうかと考え日々が続きます。

そうして出た答えから生まれたのが trois temps です。

4.実は、手織りです。

マリニエール柄のトートバッグ

手織りの魅力を心から感じていただくためには、日々の生活に欠かせない存在になるようなアイテムを提案することが重要です。
日々の洋服のコーディネイトに取り入れることで、日常のスタイルに一層の個性をプラスでき、手仕事の温かみと品質を皆さんに実感してもらえると思っています。

そのためには、ただ手織りということだけではなく、デザイン性や素材感などを「今」のスタイルに合ったものでなければなりません。
trois tempsのアイテムは、手織りという事を伝える前に手に取っていただける様なデザイン性を心かけています。
その後で、この生地の魅力を作り出すために、「実は、手織りで作っている生地なんです。」とお伝えできるのが理想です。
つまり、手織りだから良いというもではないと思っています。
もしくは、皆さんに直感的に魅力を感じていただける様なものを作らなければ、手織りしている意味もない、という思いで作っています。

trois tempsの手織りの生地の魅力とは、見た目とのギャップに驚かれる軽さ、マフラーに関しては工業製品には無いあたたかさ、そしてこれまで書いてきたデザインコンセプトと思っています。

今後は、その制作過程についてのこともお伝えしていきたいと思います。