会えない寂しさがまた会った時の嬉しさを増加させる

だなんて、誰が言ったのだろう。会いたい人には毎日でも会いたい。
私には今とても会いたい人がいる。この状況下なのでメールでのやりとりしか出来ないが、学校が再開したら会おうね、と言ってくれた。
体育館でバスケットをする約束もした。進路相談にも乗ってもらう。私は今からとても楽しみだ。なぜかって先生はとても頼れる。自分の年齢を2倍したような年齢の先生。とても聞き上手で一緒に話しているとなんだか嬉しくなる。そして笑顔に包まれしあわせな空間になるんだ。私は高校二年生だ。先生が高二の頃はどんな学生だったのだろう。きっと私よりも真面目で、でも運動も出来て、きっと女の子にもモテていたのだろう(笑)今の貴方を見るに、そう考えてしまう。
先生はいつも『特別』な空間を作り出してくれる。進路行事で遠出した時、私だけお昼を食べるのが遅くて先生が残って待っていてくれた。「早くしろよ~(笑)」と悪戯な笑みを浮かべる先生の笑顔は思わずこちらも笑顔になる。なんて不思議なんだろう。
その後、講義体験があったのだが、講義が行われる棟に向かう途中少しだけお話をした。
「藤田は将来どんな職業に就きたいの?」と聞かれ、「母が看護師だったので、自然と看護師に憧れはあります。」そう答えた。
「看護師か~、私の妻も看護師やってるんですよ。」
そうなんだ。どうやって出会ったのだろう。看護師と教師の結婚はよく聞く訳でもないが、収入も安定しているし案外多い組み合わせなのではと思う。恐らく奥さんは美人で、やさしくて笑顔が素敵で、一緒にいると落ち着くんだろうな、そう考えるとふと自分が虚しくなってきた。「藤田ならできるよ。頑張りましょうね。」先生はいつも励ましの言葉をくれる。仕事だから優しく接してくれるんだろう。
帰りのバスでも先生と通路を挟んで隣に座った。「どうでしたか。将来見えてきましたか?」「色んな大学の話を聞けて勉強になりました。」そんな些細な会話でも思わず笑顔がこぼれる。貴方は人の笑顔を引き出すのが得意なのだろうか。私もそんな大人になりたい。
先生はいつも『先生』であり、優しく導いてくれる。「藤田、元気なさそうだけどどうしたの。」「なんでもないです!」そう強がると落ち込んだ顔をされた。露骨すぎて笑ってしまった。きっと多くの生徒を見てきたから少しの変化でも気づくのだろう。私はそんな先生が大好きだ。「また明日な。」「さようなら。」そうして一日が終わった。
「先生、寝れてますか?しっかり寝ないと疲れとれませんよ」「気をつけます。」
たまに気遣ってこんな言葉をかけるのだが、何食わぬ表情でスルーされる。疲れを見せない大人ってかっこいいけれど、心配してしまう。欲を言えば自分の前でくらい弱さを見せて欲しいし愚痴だってこぼして欲しい。

先生が廊下を通る。
私は先生に気づく。
2人が微笑む。

日常の些細な場面でも幸せを感じる。そんな先生に初めて出逢えた。
この出会いを無駄にしたくない。だから私は前を向いて進んでいく。これから先も、ずっと。