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令和五年の相続法改正による遺産分割実務変更点

■令和5年相続法改正の影響

相続登記義務化に伴う法改正によって、相続法も一部改正されます。
<改正点>
①相続開始後10年経過後は、
 寄与分、特別受益などの主張ができなくなること

②遺産不分割契約制度が新設されること
③相続人不存在の手続きの変更がされること

今回は、遺産分割の実務に関係のある①を解説していきます。

■寄与分・特別受益の主張期限

まずは、改正された民法相続法を確認します。
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第903条(特別受益者の相続分)
(略)
第904条
(略)
第904条の2(寄与分)
(略)
第904条の3(期間経過後の遺産の分割における相続分)
前三条の規定は、相続開始の時から十年経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一 相続開始の時から十年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。
二 相続開始の時から始まる十年の期間の満了前六箇月以内の間に、遺産分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合においては、その事由が消滅したときから六箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。
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上記の条項が一体どういうことなのか、事例を使って解説していきます。

ーーー《事例》ーーーーーーーーーーーーーーーー
登場人物・・・父、兄、妹
【状況】
父が亡くなり、兄、妹で財産(1億円)を相続する。兄は、父の生前に5000万円相当の自宅を建ててもらった経緯がある。また、妹は、父の生前、父の介護費用を負担するとともに、病床の父の代わりに父が営む不動産賃貸業の管理を無償で行っていた。
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◎特別受益
一部の相続人が財産を貰いすぎることを是正するための概念です。
本事例で、父が死亡した時点の遺産が1億円であり、
長男が生前に5000万円の特別受益があった場合、
合計1億5000万円を相続財産として考えます。

◎寄与分
被相続人の財産の維持や増加に貢献した場合に、
他の相続人よりも相続財産を多く分けて貰うことのできる制度のことです。

本事例で、寄与分が3000万円認められた場合で、
遺産が1億円あった場合は、
まず、遺された1億円から3000万円分を妹が受け取り、
残った7000万円を遺産分割の対象とします。

ただし、寄与分が認められるためには厳しい要件が求められます。
要件①:相続人であること
要件②:事業に関する労務の提供又は財産上の給付、
    被相続人の療養看護をしたこと
要件③:要件②の結果、被相続人の財産が維持又は増加したこと
つまり、ただ介護をしていただけでは寄与分は認められないということです。

ーーー《実際の計算》ーーーーーーーーーーーーーーーー
それでは本事例での計算方法を見ていきます。
相続財産   1億円
兄の特別受益 5000万円
妹の寄与分  3000万円
今回、遺産分割の対象となる相続財産の額は
相続財産である1億円から特別受益の5000万円を足し、
寄与分の3000万円を引いた1億2000万円となります。

1億2000万円を兄、妹で2分の1ずつ分けるため、
一人当たり6000万円となりますが、
兄は特別受益の5000万円を引いた1000万円
妹は、寄与分として受け取る3000万円を足して9000万円が最終的に受け取る金額となります。
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さきに記載した民法相続法第903条、第904条の1、2、3を確認すると、
【相続発生から10年経過後に特別受益、寄与分の主張ができなくなった】
というのが今回の法改正となります。

ただし、相続発生から経過した時間に関わらず、
「妹の方が財産を多く受け取るべきである」という考えで、兄、妹双方の合意さえできれば、
妹が多く財産を相続することは可能です。
※遺産分割は相続発生から10年経過しても行うことができます。

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