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【ウイングレット】飛行機の翼の端にあるやつの意味とか効果とか解説

こんにちは。トリムです。

今回はウイングレットについて雑談してみたいと思います。

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ウイングレットというのは飛行機の翼の端っこがピョコッとなっているやつですね。

形状やメーカーによっては「ウイングチップ」とか「シャークレット」と呼ばれたりもします。

シャークレットはサメのヒレっぽい形をしているから。

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呼び名が違っても用途や目的は同じと考えていいですので、ここではウイングレットと呼びます。

さて、皆さん小学生くらいのころに紙飛行機を作ったと思いますが、なんとなく翼の端っこを折り曲げたりしませんでした?

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その方がかっこいいので。

アレがただカッコいいでけでなく、ちゃんと役割があるものだということをこの動画でご理解いただけると思います。

それでは本編に移りましょう。

ウイングレットの概要

ウイングレットの概要はwikipediaに書いてあります。

要点をピックアップすると次のような説明になります。

翼端渦を減少あるいは発生方向を上方に移動させることで空気抵抗(誘導抗力)を減らし、結果として燃費を向上させる効果がある。条件にもよるが、旅客機運航で一般におよそ4%から5%程度の燃料を節減できるとされている。
https://ja.wikipedia.org/wiki/ウィングレット

はい、こんな感じです。

「空気抵抗が減る」とか書いてありますが、

・なんでウイングレットがあると空気抵抗が減るのか?とか
・誘導抗力ってなんぞや?とか
・翼端渦ってなに?とか

この辺の説明が不足している気がするので、少し掘り下げて説明してみます。

ウイングレットの効果説明:翼端渦と誘導抗力

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それではウイングレットの効果とか意味について話したいのですが、言葉だけでの説明だとわかりづらいのでスライド資料を使っていきます。

ウイングレットは「翼端渦の発生を抑えて空気抵抗を減らす」のですが、そもそも翼端渦とはなにか?

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翼端渦とは、翼端付近で翼の下から上に向かって空気が巻き込まれることで、翼端の後方にできる渦のことです。

この翼端渦が抵抗の原因となります。

この図は、左側がウイングレットなしの翼・右がウイングレットありの翼を表していて、ウイングレットがあると翼端渦が小さくなる・弱くなることを示しています。

では、翼端渦をもう少し詳しく説明するために、揚力の仕組みをおさらいします。

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こちらは見ての通り、翼の断面図です。

飛行機が飛んでいると前方から流れてきた空気が、翼にあたって別れて、そのまま翼の上下に沿って流れます。

このときに、上の面の方が空気の移動距離が長くなるような翼型に設計されています。

すると、翼の上側は空気の速度が速く、翼の下側の方が流れが遅くなります。

流体は速度が速いと圧力が下がるので、翼の上側が圧力が低く、下側が圧力が高くなります。

この翼の上下の圧力差によって、上向きに発生する力が揚力。というわけですね。

ここまでの話はだいたいどこかで聞いたことがある話だと思いますが、この説明の注意点は

ただし「2次元翼に限る」です。

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2次元翼というのは翼の断面のことです。

断面と言っても、翼の胴体寄りの部分の断面だったり、真ん中らへんの断面だったり、どこか一箇所の状態しか表していません。

しかし、現実の飛行機の翼、つまり3次元翼で見ると全部が全部この断面図のように空気が流れているわけではありません。

その中でも特に2次元翼である断面図では現れていない空気の流れがあるのか、翼の端っこの部分というわけです。

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「揚力が生まれるのは翼の上と下で圧力差があるから」という話をしました。

3次元翼では翼端が存在するので、翼の上下の圧力差により、翼の下から上に向かって空気が巻き込まれる現象が発生します。

で、飛行機はそのまま前進し続けているので、翼端の後方に渦が出来ます。

これが翼端渦です。

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では、翼端渦がなぜ抵抗になるのか?という話に移ります。

翼端では空気が下から上に巻き込まれて翼端渦ができると言いました。

この巻き込みによって、翼端の後ろ部分を見ると下向きの空気の流れができます。

通常、飛行機の進行方向から当たる空気の流れと別に下向きの流れがあるということですね。

これを吹き降ろしとか呼びます。

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この吹き降ろしによって、翼端周辺だけ空気の流れが、翼の他の部分と変わってしまいます。

空気の流れの変化によって、揚力の発生する方向・ベクトルがちょっと後ろに傾いた状態となります。翼端の部分だけですね。

すると当然ベクトルが傾いたぶん、後ろ向きの成分ができる。要は後ろに引っ張れる力が発生します。

これが誘導抗力と呼ばれるものです。

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以上が「翼の端には翼端渦というものが発生して、この翼端渦が抵抗の原因になるよ」という説明でした。

・翼端に発生する翼端渦が抵抗を生み出している
・この翼端渦を減らしたり弱めたりすることがでれば抵抗も減らすことができそうだと考える
・じゃあ翼の端になにか板みたいなものでも取り付ければいいのでは?と考える

そして出来たのがウイングレットです。

はい、これでウイングレットと翼端渦と誘導抗力の説明は終わりです。

お疲れ様でした。

もし理解が追いついていない方は、すみませんが是非もう一度動画を見返して頑張ってください。(他力本願)

それでは、次のチャプターに移ります。

ウイングレットの種類・形状いろいろ

ウイングレットの種類とか形状はいろいろあるのですが、

ここまで動画を見ていただいた方であれば、飛行機の翼端を見て「あーこれで翼端渦を抑えようとしてるのねー」とわかるようになっているはずです。

いくつか紹介します。

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ウイングレットっぽいウイングレット。

後付できるものもあれば、製造段階でつけられてるものもあります。

後付けする場合は、

単純に「正面から見た面積増加による空気抵抗の増加」と「ウイングレット分の重量の増加」というデメリットと相談の上、

ウイングレットをつけたほうがプラスになる場合に選択されます。

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Pieter van Marion from Netherlands - G-EUPT British Airways, CC 表示-継承 2.0,

あからさまにあとから付けましたみたいな見た目のもの。ウイングチップと呼ばれることが多いかもしれない。

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Aka The Beav from Seattle, Washington - image2, CC 表示 2.0,

翼端が二股に分かれてるカニフォーク見たいな形状のやつ。

これはこれでカッコいい。

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Laurent ERRERA from L'Union, France - DSC_8030-F-WZGG - MSN 003 (uploaded by Uploaded by russavia), CC 表示-継承 2.0, 

最近の飛行機は最初からウイングレットありきというか、最初から翼端渦の発生を抑えることを考えて翼の設計がされているので、翼とウイングレットがシームレスになってたります。

とてもカッコいいやつ。

飛行機以外のウイングレット(的なもの)

ついでに飛行機以外のものにもウイングレットみたいな役割のものがついてたりします。

この辺を知るとより流体力学への関心が深まるかもしれません。

■車のウイング

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レーシングカーについているウイングも、だいたい端っこに縦の板がついてます。GTウイングとか。

この動画を見ているあなたであれば、なぜこのような形状をしているのか、もう説明できますよね?

車のウイングはダウンフォースを発生されるためのもので、翼型としては飛行機の翼を上下ひっくり返してつけてるようなものです。

つまり、飛行機の翼と仕組みはだいたい同じです。

■風力発電

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風を受けて羽を回転させる風力発電機もウイングレットがついているものがあります。

単純に抵抗を減らすだけでなく、羽の振動を抑えるとか、静音性が目的だったり色々理由はあると思いますが、

飛行機だけでなく「羽があるところにウイングレットあり」と知っておくと面白いです。

■鳥の羽

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まぁ当たり前といえば当たり前なのですが、空のスペシャリストである鳥さんの翼もウイングレットみたいな形状をしてたりします。

というか、たぶん鳥の羽も参考にした上で飛行機のウイングレットを開発してるはずです。

まとめ

小学生が子供心に考える「なんとなくカッコいい」というウイングレットは、ちゃんと機能美としてのカッコよさだったという話でした。

僕の説明力だとこれが限界なので、もし流体力学とか航空力学とか詳しい人がいたら是非コメント欄で補足していただけるとありがたいです。

それでは、ご視聴ありがとうございました!

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