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飛行機の燃料タンクはどこにある?どれくらいの量が入る?

突然ですが問題です

飛行機の燃料タンクはどこにあるでしょうか?

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(シンキングタイム3秒)

正解は②主翼の中。

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ですが、

なぜ翼の中に燃料を搭載しているか知ってますか?

ということで、今回は飛行機の燃料の搭載場所搭載量について話してみます。

厳密に言えば、主翼以外の部分に燃料タンクがある飛行機もありますが

「主翼に燃料を搭載するのが一般的である」

ということを前提に話を進めます。

飛行機は非常に大量の燃料を消費しますが、「そんなに多くの燃料が搭載できるのか?」という疑問を持つ方も多いようです。

実際どれくらいの燃料が搭載できるのか?また、大量の燃料を「主翼の中に搭載している理由」などに触れますので是非続きを御覧ください。

燃料搭載量のルール

航空機はどれくらいの燃料を搭載できるのか?という話をする前に、「どういう基準で燃料の量を決めているのか」について知っておいてほしいです。

理由としては、航空機は常に燃料タンクを満タンにして飛ぶわけではないからです。

そのフライトごとに必要な分の燃料だけを搭載しています。

最低限の搭載燃料が航空法で定められていますが、内容が難しいので簡略化して説明します。

最低限の搭載燃料
目的地までの燃料+代替飛行場までの燃料+30分待機できる燃料

目的地までに必要な燃料は当たりまえですよね。

これに加えて、予備燃料の搭載が必須です。

代替飛行場というのは、目的地の飛行場がなにかしらの理由で着陸できない場合に、代わりに着陸する飛行場として指定しておくもの。

例えば、目的飛行場の周辺が悪天候で着陸できない場合や、事故やトラブルなどで滑走路が閉鎖してしまった場合などの予備ですね。

フライトごとに代替飛行場をどこにするのか?も含めて飛行計画がつくられています。

そして、計画以外の動きをする場合は、スムーズに着陸まで終えられるとは限りませんので、30分間空中でホールディング(待機)できるだけの燃料も必要とされています。

車と違って、燃料がなくなったからといって「路肩に停車してJAFを呼ぶ」なんてことはできませんので、ルールで最低限の燃料搭載量が決められています。

燃料を満載にしない理由

予備燃料が必要なら、最初から燃料タンクを一杯にして飛べばいいのか?というとそれも違います。

必要以上の燃料を搭載するデメリットはなんと言っても燃料の重さです。燃料を満載にすると、飛行機全体の重さの40%くらいが燃料になったりします。

使わない燃料を搭載するということは、運ばなくていい貨物を載せて飛ぶのと一緒です。

無駄に燃料を搭載した場合に具体的にどんなデメリットがあるか?というと

まず、機体の重量が重くなるほど燃費が悪くなります。シンプルに無駄ですよね。

そして、万が一事故がおきてしまった場合に燃料をたくさん積んでいるほど危険です。可燃性の液体なので。

そして、旅客機など大型の航空機にありがちなんですけど、機体が重いと着陸ができません。

航空機の機種ごとに、最大着陸重量という「この重さ以下にならないと着陸できない」という数値が決まっています。

機体重量が重いと、揚力の関係で着陸に向けて速度が落とせないとか、ランディングギアの強度が足りないとか、滑走路上で停止できないとか。

ですので、エンジンのパワーをマックスにすれば離陸はできるけど、最大着陸重量を下回るまで燃料を減らさないと着陸ができないんですよね。

そういうわけで、飛行機の燃料搭載量は「法律で決められている最低限以上で、かつ無駄な分は積まない」という量で決められています。

搭載量の目安

さて、それでは航空機がどれくらいの燃料を搭載できるのかを見ていきましょう。

もちろん、航空機の機種やサイズによって搭載量にも差がありますので、一般的に見かける旅客機の一部をご紹介します。

航空機のサイズ別の燃料タンクのサイズは次の通り。

B737

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120〜150席サイズ

6,875ガロン (26,020リットル)

B767

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200〜300席サイズ

23,980ガロン (90,770リットル)

B777

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300-500席サイズ

31,000ガロン(117,335リットル)

B777にはB777ERという航続距離延長型あります。

座席数は同じく300-500席サイズで

45,220ガロン(171,170リットル)もの燃料を搭載できます。


はい、旅客機の燃料タンクはこのくらいです。凄い量ですよね。

もう少し大きくて20万リットル以上入る航空機もありますが、あまり乗る機会も無いと思うので割愛します。

燃料タンクは翼の中

それでは、燃料を翼に搭載する理由についての説明に移ります。

「エンジンに近いから都合がいい」とか「胴体部分には人や貨物を載せたいから、胴体以外の場所として翼を選択している」という理由もあると思いますが、一番の理由は、揚力によって翼にかかる上向きの力を燃料の重量で相殺できるからです。これは同時に翼に燃料を搭載するメリットになります。

わかりにくい人もいると思うのでもう少し説明します。

航空機の重量配分がどうなっていようが、飛行中に航空機全体の重量をささえているのは翼です。飛行機全体の重さを2つの主翼で吊っている状態ですね。

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仮に、機体重量が胴体部分に集中している場合。

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翼と翼の根元の部分に構造的な負担がかかります。重量を支えるために、翼自体と翼の取り付け部分の強度を高めなければなりません。

これが、翼に燃料を搭載した場合、機体重量の配分が次のように変わります。

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このように翼に重量が配分されている方が、翼にかかる構造的な負担が軽く済むということです。

負担が少ないほど、翼の強度を上げるための構造が必要なくなり、結果的に機体の重量も軽くなって合理的です。

これが航空機が主翼内に燃料を搭載する理由です。

ここまでの説明でまだよくわからない人は、ちょっと僕の説明力が限界なので、申し訳ないですが、身近にいる理系に強い人に聞いてみてください。

プールの水量と比較

飛行機の搭載燃料をなにかに例えようかとも思ったのですが、お風呂何百杯分とかはベタで面白くないので、プールと比較してます。

8レーンの25メートルプールとします。

水位によって差がでますが、だいたいプール一杯で40万〜50万リットルくらいになります。

一般的によく乗るであろう旅客機だと燃料タンクのサイズは、25メートルプールの2レーン分〜4レーン分になります。

で、国内線であれば1回のフライトで使用する燃料の量がプール1レーン分〜2レーン分くらいのイメージ。往路を飛んで帰って来たらもう1〜2レーン分の燃料を使う。

旅客機の機体は一日に6便くらいは普通に飛びますので、

旅客機1機が1日稼働したらプール一杯分の燃料が消えるくらい

だとイメージすればだいたい合ってると思います。

まとめ

最後に余談ですが、

飛行機の翼なんですが、燃料の重さで翼がしなって翼端の高さが変わっていたりします。

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離陸前は一番燃料が多くて揚力が働いていないので、翼端の位置は下がっている。

空中に上がると揚力で翼の位置がちょっと持ち上がる。

飛行中に燃料を消費するにつれて翼が軽くなって、揚力で少し上に反ってくる。

みたいな感じです。(もちろん設計や条件によりけり)

残念ながら翼のしなり具合を見比べられる機会は無いのですが、理屈的にはご理解いただけたと思います。

(へーって思ったらいいねか、コメント欄にへーって書いてください)

それでは、燃料タンクの雑談終わります。

参考情報
■ボーイング
https://bit.ly/342jnAL
■航空法63
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=327AC0000000231

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