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甘美に歪むギターと轟音の奔流。 - 2010 summersonic


2010年8月12日にアップしたやつ。

 2000年の春先にいちまいのアルバムが出ました。MACHINA - The Machine of God - というちょっと攻殻機動隊みたいなタイトルのアルバムです。出したのはsmashing pumpkinsというひとたちです。
 彼らはそのアルバムを最後に解散することをすでに決めていました。そのアルバムより前に数枚のアルバムを出していて、とりあえず当時洋楽ロックに興味のある若者たちは大体聴いてる、くらいの知名度はありました。
 90年代を席巻したグランジ・オルタナティブのムーブメントが一段落する一方で、映画「トレインスポッティング」で「born slippy nuxx」に感電した若者たちは際限なくパーティを続け、更にはRAGE AGAINST THE MACHINEやKORNといったミクスチャーメタルの人たちが台頭してフォロワーを生み出しはじめた、2000年洋楽事情というのは大体そんな感じだったような記憶があります。そんな年にsmashing pumpkinsが解散、というのは、内輪もめの自壊的な理由だったにせよ、今にして思うと「そういう時代だったんだな」としみじみ感じさせるものがあります。

 その西暦2000年を遡ること数年前くらい、思春期の最晩年くらいから、私は音楽に夢中でした。次々と登場するニューフェイス、自分のフェイバリットミュージシャンのルーツ、聴きたいものは年代を遡り時代を更新し、どんどん拡散していくばかりでした。とりわけ、NIRVANA、パール・ジャム、ダイナソーJR、レッチリ、sonic youth、HOLE、smashing pumpkins、NIN、マイブラ、そのへんのひとたちの作ってきた音楽が好きでした。今もそうですが。
 そして、中でもsmashing pumpkinsのことがいちばん好きだったのです。
 けれども、彼らはさっさと解散してしまいました。私は異議を唱えることもできず、彼らの解散ツアーに足を運び、そしてさようならをせざるを得ませんでした。

 それからビリー・コーガンという何とも奥深い声を出すめっぽうギターのうまい禿頭のボーカリストは、NEW ORDERのアルバムに参加してみたり、ZWANというバンドを結成してみたり(このバンドは1年くらいで解散しましたが、私はかなり好きでした)、ソロをやってみたり(こっちのアルバムは微妙でした)しつつ、2007年にsmashing pumpkinsを再結成します。オリジナルメンバーはビリーとドラムのジミー・チェンバレン(このひとのドラムはヘンな走り方をするのですがとても魅力的です)での再結成だったわけですが、結局2010年現在はビリー以外は入れ替わっています。たまに見られるこの現象から察せられることはそう多くはありません。「ビリーって結構いやな奴なんだろうな」ということくらいでしょうか。それはさておき、彼らは帰って来たのです。

 そして私は先週の土曜日、胸をどきどきさせながら幕張メッセの床に座っていました。"summer sonic"にスマパンがやって来たので。私の周りにいる人たちも、性別も年齢も国籍も違いますが、そんな風にわくわくしている人たちばかりでした。
 2005年のソロ公演以来、久しぶりに観たビリー・コーガンは、やはりと言うかなんというか、結構老けてました。ビリーが老けたぶん私も老けたと思うので、それはお互いさまですが。

 でも、彼の声も、ギターも、変わってませんでした。
 甘美に歪むギターの音色はそのままでした。けだもののようなビリーの叫びも、何回となく聴いたCDと同じでした。彼らはあの頃と同じ、まるで轟音と静寂を意のままに操る魔術師のようでした。
 そして、彼がうたう曲は、全然色褪せていなくて、小さい子どもの肌みたいな繊細さと、世界の終わりみたいな絶望と、不吉なものへの途切れない憧れをまとわりつかせていました。私がスマパンを好きで好きでしょうがない理由は、このぬぐいがたいメランコリーにあるんだと、改めて気付かせてくれるほどに、それは変わっていませんでした。
 演奏する人が変わっても、年をとっても、変わらないもの。
 それこそが歌の持つ力なんだと思います。
 それに感応する自分の心、目の前の大好きなミュージシャンの声、奏でる楽器の音、周りの人たちの喜びや楽しみ、全てが調和した素敵なショウでした。
 ほとんど、完璧でした。

 
 そのバンドの音楽を、ずっと心の友達にしていていいよ。そのうちすげーいいことあるよ。
 って、10年前、べそかきながら武道館の坂をくだってた自分に教えてあげたい。

 そんな素敵なsmashing pumpkinsが、私は大好きです。

とりあえず好きな順にアルバム並べてみた。

再結成後のもいいよ。







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