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【ケーキ七不思議】夜とケーキ

Mr.Childrenが主題歌だった数多いドラマの中でも、深夜まで営業しているケーキ屋を舞台にした『西洋骨董洋菓子店』は、特に印象に残っている人が多いかもしれない。このドラマ、挿入歌がとにかくミスチル尽くしだったので。

この話は、元ネタになった店が実在する。JR阿佐ヶ谷南口の『シュガーローゼ』。閉店時間はなんと午前2時。手作り感溢れる大ぶりなケーキは、夜中にみても元気とよだれがでる。南口で食べ飲みした帰り道、何度ここに誘惑されたことか。

それにしても、アーケード商店街があるとはいえ、阿佐ヶ谷南口は決してにぎやかな場所ではない。いったい誰が、真夜中にケーキを求めてやってくるのか。コンビニでは充たされない欲求を秘めた主婦層か。それとも、深夜バイトに赴く若手芸人にとっての、月に一度の贅沢か。

深夜営業のケーキ屋といえば、恵比寿の『レザネフォール』も忘れてはいけない。JR恵比寿徒歩10分弱の場所で、22時までの営業。テイクアウトのみ、という潔さ。

いったい誰が、夜の恵比寿にケーキ求めてやってくるのか。隠れ家的バルを出てからの、"うち来ない?"のための小道具か。それとも、野心溢れるスタートアップにとっては、この時間帯は3時のおやつの範疇か。

『レザネフォール』という名前は、世界大戦の谷間の1920年代、"狂乱の時代"のフランスことを指すらしい。ピカソやコクトー、ココシャネルみたいな、従来の価値観をゆさぶる新しいスタンダードが次々生まれた時代。

この店はクラシックを下敷にしたケーキが多い。けど、それこそ"想い出の時" を謳う古典の横綱、『オーボンビュータン』と比べると、同じ"時"をテーマにした名前を使っている者同士ながら、両者は少し印象が違うように思う。

オーボンは砂糖もアルコールもがつんときかせる一本気。レザネフォールのほうは、重すぎず、軽すぎず、どこかに洒脱なハズしをこらしてるような。オーボンが、まぶたに浮かぶ場所、港だとすると、レザネフォールは、エスプリ飛び交う社交場。温故知新というキーワードをベースに、自己主張もしっかりまぜるギラギラ感というか。恵比寿で夜中まで営業しているスタイルも、その印象に拍車をかける。

立地と営業時間。2つの軸を掛け合わせると、そのケーキ屋の想定する客層像が、ほんのりと見えてくるかもしれない。

ちなみに、新宿歌舞伎町には、まんま『夜のケーキ屋さん』という深夜営業店があるらしいです。それこそ、上客や嬢に喜んでもらう小道具なんでしょうね。

それにしても、真夜中に食べるケーキって、最高ですよね?

(2016/7/23)

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