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【ケーキ七不思議】東京進出とは

小学校の社会科見学は、町工場見学だった。クラス全員は入りきらないので、5~6人のグループに分かれて話を聞きにいったような記憶がある。
東大阪市。小さい頃過ごした町は、ものづくりエリアの近く。それこそケーキ屋くらいの倉庫群や工場が立ちならぶ町並みは、原風景の一つだ。
ちなみに市議会では自民党がマイノリティー。共産党が推す市長が当選する土地柄だったりする。

市役所があるのは荒本という、いわゆる再開発エリア。20年位前にカルフールや府立図書館ができて、後に市役所も移転した。高校の夏休みなんかには、自転車でふらっと図書館まで通ったりしていた。

『リョーコ』は、その荒本でオープンし人気を博した後、東京に移転、いまや食べログ東京ベスト10に入る評判のケーキ屋である。現在店を構える場所は、八芳園や明治学院などが軒を連ねる瀟洒な住宅街、白金台。
ちょっとした転換である。

ーーー自転車で20分と少し、汗をかきかきホームセンターやら工場地帯やら昔からの民家群やらをこえて、本とCDを借りにいく。図書館は冷房がきいていてひんやり新しく、行きしなに通ってきた町並みとは別世界のようだ。本やCDもまた、汗をかくことなく別の世界に連れていってくれる。当時の僕のにとっては、白金台は、肌感覚として、幕末やラテンアメリカ同様、別世界の存在だ。図書館のすぐそばに、当時はその名前すら知る由もない"東京のええとこ"の人の心を鷲掴みにする、凄腕ケーキ屋が存在すること。それは、想像力が追いつかない不思議な感覚だーーー

関西から東京に移転した有名ケーキ屋といえば、神戸から京橋に移転した『イデミスギノ』がその筆頭だろう。(ちなみに東京の京橋は銀座と日本橋の間にある一等地で、若干池袋チックな大阪の京橋とは毛色が違う。ちなみに東京の日本橋も一等地で、若干アキバチックな大阪の日本橋とは毛色が違う)

リョーコもイデミスギノも、持ち味は全然ちがうけど、伝統ともコンテンポラリーとも違う唯一無二のスタンダードを追求している胆力は、似通っていると思う。

とはいえ、関西時代のお得意さんも、まさか東京まで足繁く買いにはきてくれないだろう。行列が絶えない人気店であるにも関わらず、名前はそのままに、一から新天地に殴り込みをかける。その心境は如何なるものだろう。

シェフの頭の中には、新天地のお客さんはどんな風に思い描かれてるのだろう。そしてそれは、移転前のお客さんのイメージとは違うのか、それとも一緒なのか。単価やラインナップは変わるのか、それとも変えないのか。

話は戻って白金台。
子連れの主婦も、隙のないしゅっとした佇まいの町。ママチャリもなんだかシュッとしてる。それでも、彼女達がふうふう汗をかきながらママチャリ子供連れでリョーコにやってくるのに出くわすと、少しほっとしたりする。
どこに住んでても皆、甘いもの好きは同じ穴のムジナかもね、なんて思ったりして。

ちなみに、『リョーコ』は濃厚チョコケーキが有名ですが、個人的には、リョーコならぬ『リョウラ』@用賀のチョコケーキがいち押しです。頭一つ飛び抜けてると思う。アルマニャックの香りが鮮烈だよ!アルマニャック飲んだことないけど。

(2016/7/10)

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