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少しずつドヤ顔に見えてくる/Janis Joplin/Mercedes Benz

おぉ主よ、叶えたもれ ベンツおくれ
わが胞輩は こぞりて ポルシェ乗れかし
働きづめの毎日 誰の助けも借りず
我、神を愛す 御心のままに
神様あなたも私好きでしょ?
だから神サマ、叶エタマヘ メルセデスベンツ

なんというアホな歌詞でしょう。
これには牧師さんも思わずニッコリ怒り笑い。
冒頭の台詞も効いてます。

I’d like to do a song of great social and political import.

いわゆる前フリですね。この曲はバックバンド抜きのアカペラなのですが、ラストサビでは「皆も一緒に!」と煽ってて、どんだけテンション上がってるんでしょうか。しかもこのアホソングこそが、死の3日前に録音された、彼女の生涯最期の録音だそうです。なんやそれ。

残された我々がなすべきことは、彼女がこれみよがしに残していった数々の「ボケ」をスルーせず、きっちり拾ってあげることではないでしょうか。朗々と歌いきる様は見事ですが、しっとり聴くだけなんて勿体ない。至近距離でツッコミを入れながら楽しむのが最適じゃないかと思います。例えばスナックのカラオケのように。間違っても神格化などしてはいけません。

ジャニス=ジョップリンは、イーグルスの超有名曲『ホテルカリフォルニア』にも登場します。夜な夜なロックレジェンドの亡霊たちがパーティーを繰り広げる瀟洒な古ホテルに閉じ込められた主人公の案内役として。

Her mind is Tiffany-twisted, she got the Mercedes bends.

神格化されたミュージシャンは、「レジェンド」という名の真空パックに幽閉され、ひたすら崇め奉られてしまいます。名盤50選的なアレ。ボケ殺し、なんと恐ろしことでしょう。このベンツの歌は、本当にメルセデスメルセデスベンツのCMソングに起用されてしまったのだとか。死の間際にかました渾身のボケをも飲みこむ商業主義は、まさに彼女が皮肉った相手そのものだというのにさ。なんやそれ。

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