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非催眠条件下で起こる催眠現象と、催眠条件の優位性について

割引あり

過去の実験で催眠特有の現象だと思われていたものが、催眠条件以外でも起こることが観測されています。

先に結論を言ってしまうと、ほとんどの催眠現象が非催眠条件下でも起こります。まずはそれらの現象の紹介から始め、最後に催眠条件で優位に起こる一部の現象について言及します。

伝統的アプローチでは催眠状態の段階の基準となっている忘却や幻覚も非催眠条件下で起こるため、トランスを軽中深(6段階)或いは 記憶保持段階 / 健忘段階 で分けることが如何にナンセンスであるかが分かります。

定義的な問題

現在の定義では催眠は状態であり、その状態へと導くものが催眠誘導となっています。

つまり、非催眠的な手法であっても催眠状態と同程度の現象が起こるものは催眠誘導の範疇なのでは?と思わなくもありませんが、それだと出落ちになってしまうのと、参考にした資料が催眠手続きとそれ以外を分けていることから今回は別物として扱います。

というより、現在の定義でも催眠と催眠類似現象は区別されていますし、催眠誘導と他の儀式や手順も別とされている割に、その境界線がかなり曖昧で「定義」と呼ぶにはちょっと弱いんじゃないかと感じます…

ということで、今回の投稿はまず「催眠条件」(催眠手続きとも)について言及します。

催眠条件

  • 催眠事態の提示

  • 標準的な催眠誘導

  • 被験者の催眠的外観の発現

最初の2つが必須で、3つ目は実験によって言及されたりされなかったりしています。

これらの条件を満たした状態を「催眠条件」、手法を「催眠手続き」とします。

催眠事態の提示とは「今から催眠を行います」と説明することで、これを行うだけで催眠現象が起こりやすくなりますが、それについては別の機会に触れます。

標準的な催眠誘導については、ここで紹介すると長いのですが、 "The Oxford Handbook of HYPNOSIS" にも載っている "Eye fixation" にちかいオーソドックスな手法です。

催眠的外観はまぶたの痙攣とか、表情の平板化とか、よく言われる特徴が幾つか観察されるかどうかになります。

そして、過去の実験で催眠特有の現象だと思われていたものが、催眠条件以外(非催眠条件下)でも起こることが観測されています。

非催眠条件

次の条件でも催眠条件と同水準に起こる催眠現象が存在します。

  • 催眠事態の提示を行わない

  • 標準的な催眠誘導を行わない

  • 被験者が覚醒状態で行われる

「これから催眠の実験を行う」と実験が催眠事態ではなく他の心理テストとして行われました。また、標準的な催眠誘導ではなく、単なる指示か、或いは非催眠的な暗示が使われました。

基本的に催眠感受性(≒被暗示性)が同水準であることが前提ですが、多くの催眠現象は非催眠条件でも有意差無く起こることが判明しています。中には感受性問わず覚醒状態で催眠誘導を使わない方が効果の強い現象すら存在します。

古典的アプローチで深い催眠状態でしか起こらないと信じられていた物も、厳密な実験を行ったら覚醒状態の人間にも同程度起こっていたりしますし、人によっては少し驚く内容かもしれません。

催眠感受性に関係なく起こる催眠現象

事前の実験で催眠感受性(被暗示性)が低いと言われているグループにも効果が出たもの、或いは催眠感受性を問わずランダムに集められたグループにも発現したものがここに含まれます。

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