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クロスの恨み

一輝と瞬

4年生の頃、聖闘士星矢が流行っていてアニメでも放送が開始された。俺はバンダイの聖闘士シリーズでフェニックス一輝とアンドロメダ瞬の兄弟を持っていた。
確か一体3000円くらいする割と高価なものだったはず。

箱も綺麗に保管してパーツを無くさないよう大事にしていた。

Iがうちに遊びに来た時だった。
喧嘩するような奴とでもクラスメイトとは満遍なく遊んでいたと思う。
Iは当時なかなか皆が持っている物ではないディスクシステムを持っていたのだがそれをわざわざうちに持って来た。

何のゲームだか忘れたけど凄く面白くて俺はハマってしまった。Iはディスクシステムごと貸してくれると言った。
「I君ありがとう」こんな時は君付けで呼ぶのが小学生。その代わりにIは俺のクロス2体を貸して欲しいと言う。
その貸し借りに俺は乗ったのだったがそれが長い戦いの始まりになるとは思ってもいなかった。

1週間くらいしてクロスを返してもらったのだがクロスは欠品だらけの上にメッキが剥げたり酷い状況になっていた。
いったいどう遊ぶとそうなるのか?
俺は頭にきてクロスの箱をIに渡し無くなっているパーツを全部埋めてから返せと怒った。

この判断がアホだった。せめてディスクシステムを返さなければ良かったのだが時は遅し…その後その兄弟クロスを見る事はなかった。

聖戦

酷い話だ。クラスの男子の誰もが怒った。
Iは反論するのだが「お前に貸したディスクシステムも壊れていたからお相子だ」
だったらそのディスクシステムを見せろよとIに言ったのだけど絶対壊れていないだろうから見せれる訳がない。

それからずっと俺はIに請求を続けた。当然の如く彼は払う気など無い。
Iの家に行ったり数ヶ月に渡り請求したけど解決はせず掃除の時間、教室後ろの方で戦いは始まった。

怒りが頂点に達した俺だったが正義はこちらにあるから負ける訳にはいかない。どう考えても原因はIにある。
この日はIの剛拳に耐えながらいつもより長く戦った。
若干劣勢だった俺に対して見ていたクラスメイトからは長南コールが起きた。
将来プロ格闘家になって格闘技の会場で聞く事になるのだがこの日が初めて受けた長南コール。

戦いに疲れた2人は睨み合いになったのだが均衡を破るために俺はダッシュをして飛び蹴りを出した。
すると飛び蹴りはIの手にヒットした。
Iは手を押さえてうずくまった。かなり痛かったようでしばらく立ち上がらなかった。

誰かが俺の勝ちだと言って俺の腕を挙げた。歓声が起きた。俺はめちゃ嬉しかった。


散々今まで負けたくせにこの一戦で俺の方が強いと言う事になった。いや、そう言う事にした。

もうクロスなどどうでも良くなって Iにクロスはくれてやった。俺は暴君Iより強いそれだけで良かった。
Iは当時カッペやらカネコと呼ばれる数名の舎弟を従えて横暴を働いていたのだがその強さに拘りはなかったようでその戦いの後からIは「亮君の方が俺より強い」と言うようになった。普通にもう一回やっても勝てるかは解らないしむしろ負ける可能性大なのだが俺は勢いで勝者になりきった。

ただそれは4年1組の中での話。

我々の通う第一小学校同学年で最強と呼ばれているのは Iではなくユズルと言う男だった。
俺たちは5年生へと進級した。
※Iと写ってる当時の貴重な写真を見つけました。左が俺で右がIです。

あとがき

ベーサトとの出会い、Iとの戦いなど面白おかしく語ってはいるがこの小学生3、4年のクラスは陰湿な空気が流れ今でも同級生達と話すと嫌だったなぁと皆が言う。
誰かをターゲットにしたいじめが横行していたのだが、そのターゲットはローテーションでどんどん変わっていた。
俺がいじめられる時もあったし、いじめている時もあった。最終的にはそのいじめの波を作っていた中心人物に皆で反旗を翻したのだがそれまで皆が辛い思いをしていたと思う。
美化したりは出来ないけど貴重な経験だったと思うようにしている。
格闘技のジムの代表となってチームの事や会員さんの事をいろいろ考えてやっているのもこの時期があったから。そう思えばこの頃の俺の気持ちも救われるはずだ。

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