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密室のプラン。〜戦場の悪魔〜

「頼むっ・・・!!!それだけは!!!それだけはやめてくれよ!!!なああ!!!!頼むからああああ!!!!!ああああああああああああ!!!!!!!!!」


男はそんな声を上げながら、ほんの数日前のことを思い出していた。
どこにでもある、幸せな家庭だった。
もちろん国がおかしな方へ傾いているのは知っていた。
国有地の売却、ミサイルの大量購入、日本という国はどこへいくのだろうかと思わないこともなかったが男は他のほとんどの国民と同じく
自分の生活に何も支障がないのならそれでいい、他のことまで知らないよ。というスタンスで毎日会社に通い、仕事をして、愛する妻の待っている家に帰る。という基本的な生活の形を守っていた。

ある日のことだった。
まだ結婚してまもないのに、妻は、家をでます、と言った。
お互い25歳と若い夫婦の前途は彼女の決然とした意思表明によって打ち砕かれた。
彼女は一枚の紙を男に差し出した。

そこには「新しい世界の船」という大きな見出しがあった。
「な・・・何これ・・・。」男はあまりにも唐突な幸せの破綻に目を見開いて、冷や汗をかきつつそう尋ねた。いつもなら明るく心が和むはずの暖色の明かりがやけに冷たい。

「私、この国を変えるためにこの命を賭けたいの。」
彼女はおっとりした美人で、男は彼女のその内助の功を地でいくような柔らかな雰囲気とかなりモテただろうがあまり男遊びをしなかったその一途なところに惹かれた。が、前から、もしかすると宗教とかにハマれば傾倒するかもしれないという危惧があった。
これはまさにその例だろう。男は急にとっぴなことを言い出した妻に動揺しつつも専業主婦としていろんな情報に触れるうちに今の日本が内包する危うさに対する危機感を煽られてこんなことを言い出したのか。と納得する部分もあった。

「う・・わかった・・・わかった。うん・・・。そうだな。」
男はそのチラシに目を通しながら、とりあえず場を治めようと彼女を否定せずにそう言った。
そのチラシには「これからの日本を救うのは女性であり、男は排除するべき汚れた生き物である。この国が傾いたのも政治家に男が多いからであり戦争を始めるのも、大量殺人を好むのも全て男である。今こそこの間違った生き物を根絶やしにして女性が世界の覇権を掴みより良い世界を女性の手によって作るべきである。」と書いてある。

なんでよりにもよってこんなのにハマるんだよ。

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