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祟り。

 「私は蛇に取り憑かれてるの。」

彼女は僕の目をまっすぐと見て、そういった。
冗談めかすこともできない瞳と
どこか深刻な響きの声。
しかしその表情に憂いはない。

「へ・・・へび・・・?」

「そう・・・。蛇。私は、蛇に取り憑かれているの。」

ざああっ・・・・と、誰もいない教室の窓の向こう側で雨足が強くなった。
遠くの方で稲光が戦慄く。サッカー部は、大雨の中を駆け巡る。
まるでこのまんじりともしない空気の中で、狼狽えることしかできない自分の気持ちのようだった。

さあ、次は何を言おう。

僕は、う・・・うん。と、まんじりともしない気分を表したように、愛想笑いにも満たない怪訝な表情をしていた。
彼女はそれを見ても、眉根一つ動かさなかった。
僕のリアクションなど、彼女にとってはどうでもいいのだ。
僕は教室の床に正座したまま、足を組んで座る彼女の膝下に傅いて彼女の何を考えているのか見当もつかない表情を見上げている。

こりゃ無理だ!
というサッカー部の声が窓の外から聞こえた。
少し、数秒にも満たない時間差で、ざああああっ!!!!!!っと、窓を嵐と言って過言でもない雨が殴った。

僕の視線は、はたとその窓の方に向いた。
無意識に、もう真っ白くなって一メートル先も見通せないほどのひどい雨の景色を僕は見ていた。遠くの空がある場所が、明滅して程なくしてバリバリと時空を切り裂くような雷鳴が鳴り響いた。

わあ・・・。

彼女が蛇に取り憑かれていると自白した時よりもいくらか迫真のリアクションが出たことに気づいた僕は、少しの咳払いと共に彼女がじっと僕を見ているその真正面に顔を戻した。

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