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買い物依存症という病い

少々暗い話ですが、この病いの該当者と暮らしていたことがあります。その当時は「買い物依存症」という言葉すら知りませんでした。この私の話を聞いて、不幸になる前に気づく人が一人でもいたら、嬉しいです。

依存症については、詳しく書きませんが、私が体験して、この目で見たことを、虚飾を加えずに書きますので、参考にしてください。

その人と付き合い始めた頃、一人暮らしだった彼は、ちょうどお金を使い果たして、ご飯がまともに食べられず、お腹を空かせていました。ビックリしてご飯を食べさせてあげるウチに、付き合うようになりました。

聞けば、有り金を叩いてギブソンのギターを買ってしまったと言うことです。彼のアパートには、そのギターが無かったので、聞いてみると、知り合いのミュージシャンが、「こんなものオマエが持っても仕方ないから俺が使ってやる」と持って行ったそうです。そう、確かに彼は特に音楽好きというタイプでもありませんでした。

その後、私が東京を離れることになり、時々手紙のやり取りをするくらいの関係になり、だんだん、疎遠になりました。一年以上過って帰ってきたときには、彼がどこに住んでいるかも、分からなくなっていましたが、実家に手紙が来ていたので、再会できました。

東京に帰ってきて、実家の付近に部屋を借りましたが、その頃の私は長い旅の疲れがでて、持病も悪化し煩ってしまい、しばらく休養しておりました。そしてまた、彼が見舞いがてら私の部屋にご飯を食べにくるという関係が始まったのですが、病気で気弱になっていた私には、心強かった気がしておりました。その後私は、手術をして快復し、新しい仕事にも復帰でき、彼と都下に家を借りて新生活をスタートしました。その時にも彼は、急に車を買ってしまい、引っ越し費用が無くなり、私の父が費用を出すという始末でした。それからも彼の浪費癖は止まらず、当然少ない給料で生活できるはずもなく、毎月父からの援助で暮らしを立てました。

少ない生活費の中から、大きな買い物をしたいという彼に、「経済状況を分かっているはずだし、それでもどうしても欲しいものなのだろう」と私なりに考え、最初の頃は協力してあげようと思いました。ずっと前から計画して、とても欲しいと思っていたとも言うので、きっと大事にするだろうと思うと、大して手入れもせず。すぐに次の買い物に気持ちが動きます。

オーディオ、車、バイク、大きな物から小さな物まで、いろいろ買うのですが、あるとき、買う物に特徴が有ることに気がつきました。知り合いに見せたら”すごいね”と言って貰えそうな物。日本一早いとか、手に入りにくいとか、最新型とかに強く反応しました、買ったものを必ず知り合いに見せたがり、「俺は○○な品物を選んだんだ」と、一通り見せ終わると、急に憑き物が落ちたように、買った物への興味を失うのです。

不思議なことに、コレを繰り返すのですが、いったん欲しいとなると、止めることは無駄でした。ムリをしてでも手に入れたいあの強い欲求が病なのでしょう。父からの借金も増えました。

結局は、経済破綻と言うよりは、買い物になどに情熱を傾ける、彼の価値観が尊敬できなくなり、心が離れました。

分かれてから、何年もして、偶然見たTVの特集番組で「買い物依存症」を知りました。症状があまりにも彼そのままで、愕然としました。強いコンプレックスが原因であることも、分かりました。

確かに、彼は自分の親からも認めて貰えず、劣等感を感じていました。彼の実家に伺ったとき、私を紹介する報告の席で、「こんな奴は、もう知らんから、アナタのお父さんに言って養子にでも何でもしてください」と彼の父親に言われたときには度肝を抜かれました。子供の頃にも、雑誌の通販で大量な買い物をしてしまい、ヒドく怒られた話も聞きました。

彼の、口癖は、「どうせ」と「だって」……。 思えば可哀想ですが、もう二度と関わりたく有りません。私と別れたあとに、実の父親に大借金をして、不動産に手を出したらしいと聞きました。

あの人が、買い物依存症という病気だと分かっていたら、もっと早く別れる決心が付いていたと思うのです。私のような苦い経験をしてしまう女性が増えないことを祈ります。



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