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“年間36億回”の工数削減を目指す 「J-MORA」で競合の垣根を超えた物流改革へ(後編)

製造業・卸売業・小売業向けの商品管理システム「J-MORA」。3業界における業務効率化のために開発された本システムについて、記事前編ではその概要や誕生背景を、開発者である一般社団法人リテールAI研究会林拓人様とトライアルカンパニーの牧草雄⼠に話を聞いた。後編では活用メリットや今後の展望について迫っていく。

林様(左)と牧草(右)

前編の記事はこちら

―J-MORAの導入によって大幅な業務改善が見込めると伺いましたが、効率化以外に期待できる効果はありますか。

牧草

「登録作業自体の効率化はもちろんですが、その他にも大きく3つのメリットがあると考えています。1つ目は”営業における生産性の向上”です。製造も卸も小売も、営業活動の際には自社で扱う膨大な商品リストを参照することになるわけですが、J-MORAの統一されたフォーマットで各所がコミュニケーションを行うことで商品確認やリスト情報の修正にかかる手間が省けると考えています。コストにすると、営業費約10%の削減を見込んでおり、商談プロセスをスムーズにする効果を期待しています。

 2つ目は”SCM(サプライ・チェーン・マネジメント)の向上”です。営業と同じく、フォーマットや情報の統一化により、受発注や物流といったオペレーションの改善を見込んでいます。例えば製造業が商品の納品を行っていく際、サイズを予めJ-MORAに登録していれば、その他の現場では計測をし直す必要がないため運搬などのシーンがスムーズに進みます。これはあくまで一例で、様々なパターンで合理化できるポイントがあるように感じています。
 
そして3つ目は、”企業の経営計画”に直結しうるという点です。上記の通り、営業費や物流にかかるコストが改善されれば、企業PLに大きな影響がもたらされます。何より重要なのは各工程にかかる工数を削減することで、新商品開発や販促検討の機会を増やせるなど、売上・利益向上に繋げるための時間を生み出せるということです。」


3つのメリット

J-MORAにおける当面の課題と、今後の展望について教えてください。

林様

「商品マスタは非競争領域であり、どの企業も商品マスタ自体に優位性を持つことはありません。積極的にテクノロジーを導入し、商品マスタを最新かつ整備された状態に保つことが望ましいです。商品マスタが常に整備されていることは、業務の効率化を促進し、そしてデータ分析に基づく需要の創造に繋がります。スモールスタートから始め、徐々に企業や仲間を増やしながら“登録の自動化”と“情報の共通化”を進めてまいります。」

牧草

「システム自体は整ったので、あとはこれをフルに活用するための環境づくりだと思っています。先に挙げたようにいくつかの業務は既にJ-MORAで改善できることがわかっていますが、恐らくそれは氷山の一角です。まずは関係者にヒアリングを行うなどして、現在負担やコストがかかっている業務を可視化しなければいけないと考えています。

インタビューの様子(牧草)

トライアルは元々、店舗内へのAIカメラ設置による在庫最適化や決済機能がついたSkipCart®︎の開発など、デジタルの力を活用して業界全体のムダ・ムラ・ムリ削減に取り組んできました。流通における商品マスタは業務改革の宝庫であり、先に申し上げた通り競争の生まれない領域です。慢性的な人手不足と言われる時代、かつ物価高という状況の中ですが、デジタル化を徹底してこれまで以上に安定した業界づくりに貢献できればと思っています。」
 
J-MORAの詳細についてはこちら