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録画ネット事件

こんにちは。

 海外に住んでいる人が、日本のテレビ番組を視聴するには、ネットの接続などの面でかなりハードルが高いようですね。

 さて今日は、海外に住む人に日本のテレビ番組を見れるようにするサービスが問題となった「録画ネット事件」(知財高判平成17年11月15日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 有限会社エフエービジョンは、海外在住の日本人向けに日本のテレビ番組を録画、視聴できる「録画ネット」というサービスを提供していました。すると、NHKと民放キー局5社は「録画ネット」が著作権を侵害しているとして、エフエービジョンに対してサービス停止の仮処分を求める申立を行いました。

2 NHKらの主張

 エフエービジョンは、利用者ごとに1台ずつ割り当てたテレビチューナー付きのテレビパソコンを、事務所内にまとめて設置し、テレビアンテナを接続するなどして、テレビ放送を受信可能な状態にし、利用者がインターネットを通じてテレビパソコンを操作して、テレビ放送を録画予約し、録画されたファイルを海外の自宅等のパソコンに転送できる環境を提供していた。過去の裁判例(クラブキャッツアイ事件など)によると、形式的にユーザーが著作物を利用しているように見える場合であっても、そのサービスが著作物を利用することを当然の前提としており、その利用行為が事業者の管理のもとで行われ、それによって事業者が利益を得ているような場合には、事業者がその著作物の利用者であると判断されている。よって、我々の著作隣接権を侵害していると言えるのだ。

3 エフエービジョンの主張

 番組の電波を受信するパソコンは、あくまで加入者が所有していて、録画をしているのは加入者自身なので、我々が著作権を侵害しているわけではありません。著作権法30条でも、私的使用のための複製は認められているはずで、これに業者が関与したからといって、利用者の行為の法的性質が変化するわけではないはずです。

4 知的財産高等裁判所の決定

 エフエービジョンが、NHKなどの放送についての複製行為を管理していることは明らかである。また、そのサイトで、海外に居住する利用者を対象に日本の放送番組をその複製物によって視聴させることを目的としたサービスであることを宣伝し、利用者をして本件サービスを利用させて、毎月の保守費用の名目で利益を得ているものである。これらの事情を総合すれば、エフエービジョンがNHKらの放送についての複製行為を行っているものというべきであり、その複製行為はNHKらが放送に係る音又は影像について有する著作隣接権としての複製権(著作権法 98条)を侵害するものである。
 よって、エフエービジョンの抗告を棄却する。

5 管理性と利益性

 今回のケースで裁判所は、海外に住む利用者が日本のテレビ番組を録画し転送できるサービスを利用していたことについて、エフエービジョンが利用者を管理していたことと、このサービスで利益を得ていたことから、エフエービジョンの録画予約サービスがNHKらの著作隣接権を侵害しているとしました。
 裁判で明言されてはいませんが、クラブ・キャッツアイ事件の管理性と利益性に従って、サービス提供者が複製行為の主体であると判断されていますので、日本の番組を海外で見られるようにする録画予約サービスを提供できないことに十分に注意する必要があるでしょうね。

では、今日はこの辺で、また。


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