見出し画像

キン肉マン事件

こんにちは。

 1979年の連載開始から40年以上続いているプロレス系格闘技マンガの「キン肉マン」を見ると、いまだに胸が熱くなってしまいますが、もともとウルトラマンとスーパーマンのパロディからスタートしているところも魅力的です(作者のゆでたまごさんが一時期、集英社から追い出されていた話も面白いです)。


 さて、このキン肉マンをめぐっては、ビックリマンシールと同じくらいの規模で、キン消しがブームとなりました。私もキン肉マンのキャラクターを形取ったゴム人形をこぞって集めていたのですが、クッキーのカンカンに入れて人形を保管していたときに、夏場で中が熱々になって、ゴムがとけて人形たちが全員が手をつないだ状態になっていたことがありましたね。

 また、あまり知られていないのですが、このキン消しをめぐって裁判に発展した事件があります。そこで今日は「キン肉マン事件」(東京地判昭和61年9月19日判例タイムズ624号228頁)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 東映動画株式会社は、テレビマンガ映画「キン肉マン」を制作し、その著作権を有していました。ところが、日商貿易株式会社は、東映動画の許可を得ずに、キン肉マンに登場するキャラクターのプラスティック人形をガチャガチャで販売していたことから、東映動画は著作権侵害を理由に販売の差止めと損害賠償請求を求めました。

2 東映動画の主張

 キン肉マンについて、我々が著作権を有している。日商貿易は、我々に無断でキン肉マンのプラスティック人形を製造し、著作権を侵害していることを知りながら、あえてガチャガチャで販売していた。今日までに人形を128万6090個も販売し、その単価を100円とすると、売上額は1億6228万円にのぼるはずだ。ここから、販売経費などを引いた2000万円を損害賠償として求める。

3 日商貿易の主張

 確かに、私どもは東映動画さんの著作権を侵害していることを知りながら、アニメキャラクターを立体化させたキン消しを製造、販売していたことを認めます。ただ、人形1個の販売単価は、自動販売機の場合、67円です。

4 東京地方裁判所の判決

 日商貿易は故意により著作権を侵害したものと認められる。東映動画が受けた損害について判断するに、日商貿易らが人形の販売により得た利益の額は、少なくとも約2448万円を下らないものと認められ、東映動画が受けた損害の額は、著作権法114条1項の規定により、これと同額と推定される。
 よって、日商貿易は、プラスティック製人形を販売してはならず、東映動画に対して2000万円を支払え。

5 キャラクターの立体商品化

 今回のケースで裁判所は、キン肉マンに登場するキャラクターを著作権者に無断で、立体的なプラスティック人形にして販売することが、複製権の侵害に当たると判断しました。被告が争わなかったという事例でもありましたが、キャラクターを三次元的に再現することが複製だと認められていますので、十分に注意する必要があるでしょうね。 

では、今日はこの辺で、また。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?