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 こんにちは。

 iphoneからの脱獄という言葉があるのですが、Apple社がiphoneにかけている制限を解除して、端末の能力を最大限発揮させることで、無許可のアプリケーションのダウンロード、例えばiphoneにAndroid OSをインストールすることができたりするようです。しかし、Appleの規約違反になるので注意が必要です。

 さて今日は、脱獄iphoneが問題となった「脱獄iphone事件」(千葉地判平成29年5月18日判例時報2365号118頁)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 24歳の男性が、アップル社の登録商標をつけたままの状態で、脱獄iphoneを販売していました。しかも男は、脱獄iphoneを購入した人に対して、オンラインゲームのモンスターストライクのクエストをチート行為でクリアしたにもかかわらず適正にクリアしたという内容の虚偽データを送信する方法を教えていました。そのため、男は千葉県警察に私電磁的記録不正作出及び供用幇助罪で逮捕され、後に起訴されました。

2 検察側の主張

 被告人は、脱獄iphone6台を、アップル社の商標を付けたままインターネットのオークションサイト上で、男性4人に対して計12万4000円で販売し、アップル社の商標権を侵害したのだ。また、モンスターストライクを運営する会社の事務処理を誤らせる目的で、クエストを不正クリアしたにもかかわらず、適正にクリアしたという内容の虚偽のデータを送信できるように、ウェブページでモンストのデータを不正に書き換える手順を購入者に伝達していたのだ。こらは私電磁的記録不正作出及び供用幇助罪に当たるのだ。

3 被告人の主張

 私は脱獄iphoneを販売するに当たって、脱獄済みであることを明示しており、購入者らはそれを知ってて購入していた。そうすると、脱獄iphoneの提供主体がアップル社でその品質が確保されているとの誤認は全く生じていなかったはずなので、商標の出所表示機能及び品質保証機能を害してはいない。また、購入者らがクエストをクリアした際にサーバーコンピュータに送信したデータもクエストを適正にクリアしたという内容の虚偽のデータとはいえないと思います。

4 千葉地方裁判所の判決

 被告人が購入者らに販売した脱獄iphoneの品質は真正商品のそれとは相当な差異があり、商標の出所表示機能及び品質保証機能が害されているから、その譲渡について実質的違法性が阻却されることはない。したがって、被告人の行為については商標権侵害罪が成立する。
 また、その購入者が不具合の原因を正しく理解できる保証はなく、商標権者であるアップル社の責任による不具合と認識する可能性があるから、その品質の提供主体を同社と誤認するおそれが否定できない。脱獄iphoneの販売に当たって脱獄済みであることが明示されており、購入者らが真正商品に改変が加えられたものであることを知って購入したからといって、商標の出所表示機能及び品質保証機能が害されないとはいえない。
 さらに、自らのブログを介して購入者らにデータの書換えの手法や強制終了の回避方法を教示した被告
人は、本犯者による実行行為を少なくとも概括的には認識していたものと認められ、自らの行為が実行行為を容易ならしめることを認識・認容していたことも明らかであるから、私電磁的記録不正作出及び供用罪の幇助犯の罪責を免れない。
 よって、被告人を懲役1年6ヵ月及び罰金50万円に処する。この裁判が確定した日から3年間その懲役刑の執行を猶予する。

5 OS改変による商標権侵害

 今回のケースで裁判所は、真正品のiphoneと大きく変わった脱獄iphoneを販売すると商標権侵害となり、また脱獄iphoneを購入した人に対して、モンスターストライクのチート行為を教えれば私電磁的記録不正作出及び供用罪の「幇助」にあたるとしました。
 脱獄iphoneを取り扱えば、法律や規約に違反する可能性が非常に高いので十分に注意する必要があるでしょうね。
 では、今日はこの辺で、また。


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