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メトロコマース事件

こんにちは。

 学生時代にアルバイトにも退職金が支払われると嬉しいなあ、思っていたのですが、退職金が支払われる働き方とそうでない働き方との線引きは、どのようになっているのでしょうか。

 今日はこの点を考える上で、「メトロコマース事件」(最判令和2年10月13日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 株式会社メトロコマースの契約社員4名は、東京メトロの売店で働いていましたが、正社員には退職金が支払われるのに対して、自分たちには退職金が支払われないのは不合理だとして、退職金の支払いを求めて提訴しました。

2 契約社員の主張

 私たちは、正社員とほぼ同じ業務に従事していたにも関わらず、賃金・手当・退職金などで正社員との不合理な格差がある。とくに、私ら2人は10年前後にわたって、正社員と同じように売店業務をこなしていたのに、退職金はゼロなんてひどすぎます。なので、その埋め合わせとして、慰謝料込みで4560万円の支払を求めます。

3 メトロコマースの主張

 正社員と契約社員では、契約内容から見ても職務の内容に違いがあります。また、正社員には勤務する場所の変更もありうるので、明らかに契約社員との違いがあります。だから、退職金に差が出たとしても合理的なものだと考えています。

4 最高裁判所の判決

 正社員と契約社員の両者の業務の内容はおおむね共通するものの、正社員は、販売員が固定されている売店において休暇や欠勤で不在の販売員に代わって早番や遅番の業務を行う代務業務を担当していたほか、複数の売店を統括し、売上向上のための指導、改善業務等の売店業務のサポートやトラブル処理、商品補充に関する業務等を行うエリアマネージャー業務に従事することがあったのに対し、契約社員は、売店業務に専従していたものであり、両者の職務の内容に一定の相違があったことは否定できない。また、売店業務に従事する正社員については、業務の必要により配置転換等を命ぜられる現実の可能性があり、正当な理由なく、これを拒否することはできなかったのに対し、契約社員は、業務の場所の変更を命ぜられることはあっても、業務の内容に変更はなく、配置転換等を命ぜられることはなかったものであり、両者の職務の内容及び配置の変更の範囲にも一定の相違があったことが否定できない。
 またメトロコマースは、契約社員及び正社員へ段階的に職種を変更するための開かれた試験による登用制度を設け、相当数の契約社員を正社員に登用していたものである。契約社員の有期労働契約も原則として更新するものとされ、定年が65歳と定められるなど、必ずしも短期雇用を前提としていたものとはいえず、契約社員らがいずれも10年前後の勤続期間を有していることをしんしゃくしても、両者の間に退職金の支給の有無に係る労働条件の相違があることは、不合理であるとまで評価することができるものとはいえない。

5 同一労働同一賃金

 今回のケースで裁判所は、地下鉄の駅構内の売店で販売業務に従事する正社員に対して退職金を支給する一方で、同じ業務をしている契約社員に対しては支給しないという労働条件の違いは、職務内容の違いや配置転換、契約社員から正社員への登用制度などを考慮すると不合理ではないとしました。
 今後は、正社員と契約社員で退職金などの待遇の格差がある会社には、より職務内容や配置転換の範囲などの明確化が求められていくでしょうね。

 では、今日はこの辺で、また。


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