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三方一両損事件

こんにちは。

 遠山の金さんのモデルとなった遠山景元は、家の跡継ぎ問題から、金四郎と名乗って家を飛び出し、放蕩生活を送っていましたが、そのおかげもあって庶民の暮らしなどの実情を知る北町奉行として活躍できたと知って驚きましたね。

 さて今日は、大岡越前で有名な「三方一両損事件」(「畳屋、建具屋出入りの事ならびに一両損裁許」『大岡政談』)を紹介したいと思います。


1 どんな事件だったのか

 畳屋は、3両を借りて帰る途中に、それを道に落としてしまいました。すると、3両を拾った建具屋が、落とし主の畳屋に届けたところ、畳屋は「3両は拾ったお前のものだ」と
いって、突き返しました。建具屋も「いやいや、3両はお前のものだから受け取れ」と言って言い争いになり、この争いが町奉行所に持ち込まれることになりました。

2 大岡越前守の判決

 落とした3両は、公儀の御金蔵(ごきんぞう)に収められ、あらためて御上より双方に3両くださるから、ありがたく2両ずつ頂戴せよ。
 ところが両人は不審がって、その「お奉行様、1両の出所は?」と尋ねると、越前守は「奉行もそちたちの正直さを喜んで1両を出したから、建具屋は3両拾って2両もらうゆえ1両損、畳屋は3両落として2両もどったから1両の損、奉行も1両の損、これを三方一両損という」と述べました。

3 三方一両損は作り話

 三方一両損の話は落語などで演じられるなど、日本では江戸時代を代表する有名な裁判だとされてきましたが、実際に大岡忠相(ただすけ)がこの事件を担当したことはなく、創作だとされていますので注意が必要です。
 三方一両損についても、「畳屋はあきらめていたお金が2両戻ってきたから、1両損ではなく2両得、建具屋も何もないところに2両が手に入ったのだから2両得、越前守だけが1両損をしているんじゃないか」との意見もあります。仮に、この話を現代に置き換えると、「裁判官が国民の税金で1両払うのはおかしい」、「裁判官のポケットマネーで事件を解決するとなると、資産が潤沢な裁判官と貧乏な裁判官との間で判決内容が変わることとなり、不公平だ」、「遺失物として3両を預かっておき、一定期間が過ぎれば国が召し上げれば良い」との意見もあります。 
 これまでに、大岡越前がスーパーヒーローのように描かれ、庶民の間で人気となったのは、幕府や政府のやり方に対する不満が根底にあったのではないかと考えられます。いつの時代も、理想の裁判官や教師が語られるときには、現実に何か問題が起きていると考えて良いかもしれませんね。
 では、今日はこの辺で、また。


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