見出し画像

蛇をまき散らしての妨害事件

こんにちは。

 いきなり大声を出すという人を見かけることがありますが、大声のクレームも一線を越えると、サービス提供の問題からリスク管理の問題となります。過去には、大声で相手に萎縮させて土下座をさせて、強要罪となったこともあります。

 今日は、過去に威力業務妨害罪に問われた事例を集めてみましたので、今後の生活でどの点に気をつければよいかの参考になればと思います。

1 蛇をまき散らしての妨害事件

 三越が不良品を販売し、再三にわたって他人から注意を受けていたにもかかわらず、これに応じなかったことから、三越に反感を抱いていた被告人が東京日本橋の店舗の5階にあった食堂で、配膳部に向かってシマヘビ20匹をまき散らし、満員だった食堂を大混乱に陥れたという事件が起きました。

 これについて最高裁判所(最判昭和7年10月10日刑集11巻1519頁)は、「蛇をまき散らす行為は、その行為の目的の如何を問わず、威力を用いて他人を妨害するものである」として被告人の上告を棄却し、懲役3カ月の有罪が確定しました。

2 大声や怒号による卒業式妨害事件

 東京都立板橋高校の校長は、東京都教育委員会教育長が都立高校の校長に対して発した「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施」の通達を受けて、生徒、教職員、来賓、保護者に起立を求めることにしていました。ところが、板橋高校の元教員だった被告人が、来賓として卒業式に出席し、いきなり保護者等に国歌斉唱時に起立しないようにとのビラを配り始め、それをやめさせようとした教頭に対して、大声で怒鳴り声を上げました。校長は、被告人を体育館の外に退場させましたが、それでもなお被告人が外で抗議を続けたことから、卒業式の開始が2分遅れるという事件が起きたのです。

 これについて最高裁判所(最判平成23年7月7日裁判所ウエブサイト)は、「被告人の行為は、威力を用いて他人の業務を妨害したものというべきであり、威力業務妨害罪の構成要件に該当する」として被告人の上告を棄却し、罰金20万円の有罪が確定しました。

 怒号に関しては、いわゆる総会屋が株主総会に乗り込んで「被疑者を監査役にできるか」、「あんた前科者じゃないか」「前科者が会社の業務内容を監査するなどと一丁前の能書を言うんじゃないよ」「新商法にのっとった監査役の義務というのを言ってみろ」などと大声をあげたことが威力業務妨害となることもあれば、大阪駅御堂筋北口付近で、東日本大震災のがれき受け入れに対して抗議していた被告人が、ビラ配りの制止を求めてきた大阪駅の副駅長に対して顔を20cm~50cmまで近づけて「ビラまきを制止すな」、「表現の自由や、じゃまするな」と大声で叫んだ行為が、威力業務妨害にはあたらないとされた事件もあります。

3 弁護士の出廷妨害事件 

 法律事務所を解雇された元事務員は、友人らに呼びかけて6人で雇主だった弁護士の周囲を取り囲んで、解雇の撤回を求め、法廷への出廷を妨害するという事件が起きました。 

 これについて東京高等裁判所(東京高判平成6年8月5日判例時報1519号149頁)は、「被告人以外には弁護士と雇用関係を有した者がいないこと等に照らすと、今回の争議団が労働者の団結体であるといえず、団体交渉権がないことは明らかである」として控訴を棄却し、威力業務妨害罪が確定しました。

4 「俺コロナだよ」事件

 名古屋市内にある家電量販店に訪れた被告人が、スマートフォンの購入に時間がかかることに苛立ち、酒に酔った勢いで「俺コロナだよ、コロナだよ」と告げたことから、店員等が警察への通報、店内の消毒などを余儀なくさせた事件が起きました。

 これについて名古屋地方裁判所(名古屋地判令和2年6月26日裁判所ウェブサイト)は、「当時、新型コロナウイルスの感染拡大が深刻な社会問題となっていたことからすると、被告人の発言が、店舗の営業のみならず社会全体に及ぼした影響は大きく、発生した結果は相当に重大である。被告人には他にも複数の前科があるところ、飲酒の影響下で犯罪に及ぶ傾向が見て取れる。被告人の刑事責任は重く、相応の実刑に処するほかない」として、被告人に懲役10カ月の有罪判決を下しました。

 以上のような事件で見られたように、冷静さを失った思わぬ行動が威力業務妨害罪とされる可能性がありますので、普段から十分に注意しておく必要があるでしょう。

では、今日はこの辺で、また。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?