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日清食品工業事件

こんにちは。

 今日は、無権代理人の行為が有効となるのかどうかが問題となった最判昭和34年7月24日を紹介したいと思います。


1 どんな事件だったのか

 日清食品工業株式会社の資金経理担当者の花房とその部下の石橋は、取締役の山前駿裕の代理人でもないにもかかわらず、予め山前から預かった印鑑を使用して、佐賀銀行との間で個人保証の契約を締結しました。
 そのため佐賀銀行は、山前駿裕に貸付金の支払を求めて提訴しました。

2 最高裁判所の判決

 原審の確定した事実によると、日清食品工業株式会社の資金、経理担当者たる花房及びその部下である経理課長石橋は、従前から日清食品の取締役たる山前駿裕が出張その他不在中その取締役として担当する職務処理の必要上山前名義のゴム印及び山前がもっぱら取締役として使用するため届出てあった印章を預り会社のためその職務を行うことを認められていたけれども、山前個人に法律効果の及ぶような行為についてこれを代理する権限は未だ曾(かつ)て山前から与えられたことはなかった、というのである。  
 されば、花房と石橋は未だ曾て山前の代理人であったことはなく、従って花房らが山前から預つていた前記ゴム印及び印章を使用して山前名義で本件保証契約を締結しても、これにつきいわゆる民法110条の表見代理の成立する余地は存しないのであって、この点に関する原審の判断は正当である。
 よって、佐賀銀行の上告を棄却する。

3 基本代理権と表見代理

 今回のケースで裁判所は、会社の経理担当者らが、取締役から個人名義のゴム印およびもっぱら取締役として使用するため届出であった印章を預り、取締役の不在中に代り会社のための職務を行うことを認められていても、取締役個人に法律効果のおよぶような行為につきこれを代理する権限をかつて与えられたことがないときは、取締役に対する関係では民法110条にいう「代理人」にあたらない、としました。
 権限外の行為の表見代理が成立するためには、その前提として代理権が与えられていることが必要とされている点に注意が必要でしょうね。

 では、今日はこの辺で、また。


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