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合格!行政書士 南無刺青観世音事件

こんにちは。

 刺青に関して、医者が勧めない理由の1つに、MRI検査でやけどをする可能性があることを知って驚きましたね。

 さて今日は、刺青の著作権が問題となった「合格!行政書士 南無刺青観世音事件」(知財高判平成24年1月31日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 鬼塚氏は、彫刻師に依頼して、その左大腿部に11面観音立像の刺青を施しました。その後、鬼塚氏は苦難や病気を乗り越えて、行政書士試験合格に至るまでの半生をつづった書籍『合格!行政書士 南無刺青観世音』を出版し、その本の表紙に、無断で刺青と同じ観音様をセピア色に変更して掲載していました。この事実を知った彫刻師は、自身の著作権が侵害されたとして鬼塚氏と出版社に対して損害賠償を求めて提訴しました。

2 彫刻師の主張

 鬼塚氏らは、刺青を撮影した写真の陰影を反転させ、セピア色の単色に変更した画像を書籍の表紙カバーに掲載していた。これは、私が有する刺青の著作人格権を侵害している。よって、損害賠償として77万円を支払ってもらいたい。また、鬼塚氏は書籍の中で、私の名誉を傷つける記述やプライバシーに関する記述をしているので、この点についての慰謝料として33万円も支払ってもらいたい。

3 鬼塚氏らの主張

 刺青のデザインは「日本の仏像100選」の中から選んだもので、その描線をトレースして下絵を作成していた。そうすると、刺青は創作的な表現とはいえず、著作物性はない。また、大腿部の刺青の写真をそのまま使うことは相当ではないから、改変した画像を書籍に掲載したが、これは著作権法20条2項4号の「やむをえない改変」に当たるので問題ないはずだ。

4 知的財産高等裁判所の判決

 鬼塚氏らは、問題となった入れ墨は著作物性がない旨を主張する。しかし、入れ墨は、墨の濃淡等によって、表情の特徴や立体感を表すための工夫がされている点等を総合すると、思想、感情の創作的な表現がされていると評価することができる。
 入れ墨を撮影した写真を書籍に掲載することがふさわしくない事情があるからといって、入れ墨を改変して、書籍に掲載することが、著作権法20条2項4号所定の「やむをえない改変」に該当するとして、その掲載が許されるものではない。
 よって、鬼塚氏らは彫刻師に対して24万円を支払え。

5 刺青の評価がトラブルの原因?

 今回のケースで裁判所は、刺青には仏像の独特の立体感が表現されているので創作性があり、鬼塚氏の書籍のカバーに使用された写真画像は彫刻師の氏名表示権と同一性保持権を侵害しているとしました。
 また、書籍の中に仏像の刺青に対してネガティブな評価があったことから裁判にまで発展したと考えられますので、何事も他人の名誉やプライバシーに十分に配慮しておく必要があるでしょうね。
 では、今日はこの辺で、また。


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