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パロディ・モンタージュ写真事件

 こんにちは。

 世の中には、ある作品とよく似た作品が存在します。これについては、「パクリだ」、「パロディだ」、「オマージュだ」と聞くのですが、どのように考えれば良いのでしょうか。

 オマージュとは、一般的には影響を受けた作品に敬意や称賛を表した作品のことを指します。例えば、「スターウォーズは黒澤明監督をオマージュした作品だ」といった感じです。

 これに対してパロディとは、元の作品に愛のあるユーモアや皮肉を加えて作りかえられた作品をいいます。例えば、「シュレックには、スパイダーマンや白雪姫、眠れる森の美女、美女と野獣のパロディがたくさん盛り込まれている」といった感じです。

 パクリとは、他人の作品をそのまま使うことで、著作権侵害にあたるものを指します。しかし、日本では、パクリとオマージュ・パロディとの境界があいまいな場合が多いのも事実です。そこで今日は、「パロディ・モンタージュ事件」(最判昭和55年3月28日)を紹介しながら、考えてみたいと思います。

1 どんな事件だったのか

 写真家の白川議員氏は、アルプス系の雪山でシュプールを描きながら滑降しているスキーヤーの写真を撮影し、作品として公表していました。

 これに対して、マッド・アマノ氏は、白川氏の作品に対して巨大なスノータイヤの写真を合成し、カラーから白黒写真に改変しました。これで、巨大タイヤを背にしたスキーヤーたちが雪山を滑走して逃げようとしている構図にして、自動車公害に追われる人間の悲しさを表現した風刺パロディだと主張していました。

 アマノ氏の作品を見た白川氏は、自らの作品を茶化して侮辱していると感じ、精神的苦痛と名誉毀損を理由に50万円の損害賠償を求めたのです。

2 白川氏の主張

 私の作品をトリミングしているので、盗用である。しかも私の作品を利用するためには、事前に許可が必要であるはずなのに、無断で利用改変してモンタージュ作品を創作している。それで私の創作意図を破壊し、茶化して侮辱をしている。

3 アマノ氏の主張

 私の独自の思想・感情が反映されており、白川氏の作品とまったく別物の作品に仕上がったはずだ。そうでなくても、引用にあたるはずだ。また自動車公害を風刺することがモンタージュ写真の目的であり、白川氏の作品の創作意図を破壊したり茶化して侮辱するものではない。

4 最高裁判所の判決

 モンタージュ写真は、カラーの写真を一部切除し、スノータイヤの写真を合成し、これを白黒写真とした点において、元の写真に改変を加えて利用し作成されている。引用にあたるというためには、引用を含む著作物の表現形式上、引用して利用する側の著作物と、引用されて利用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができなければならない。他人の許諾なくして利用することが許されるのは、他人の著作物における表現形式上の本質的な特徴をそれ自体として感得させないような態様においてこれを利用する場合に限られる。今回の写真の利用は、元の写真の同一性保持権を侵害する改変であると言わなければならない。

5 外国ではパロディに寛容な文化がある

 海外では、著作権侵害の対象からパロディを除外する規定を置いている国もあります。しかし、日本ではパロディ作品を勝手に作って良いという法律上のルールは存在しません。コミックマーケットのようにパロディが寛容される文化が根付いてくると、法整備が進むかもしれませんね。

では、今日はこの辺で、また。


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