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虚偽表示と登記事件

こんにちは。

 現代社会では犯罪行為を疑われないようにするためにも、他人名義での商品購入をあまり勧めません。実際、他人の名義の土地を購入した場合に、頻繁にトラブルが起きてきました。
 今日はこの点を考える上で、「虚偽表示と登記事件」(最判昭和44年5月27日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。


1 どんな事件だったのか

 大正12年、岡本友太郎は、山崎ヨシノに1万円を貸し、その担保として土地にに抵当権をしました。ところが、ヨシノがお金を返さなかったことから、土地について競売が行われました。友太郎は、向ケサの名義でその競売物件を落札し、ケサの名義で所有権移転登記がなされました。友太郎はこの土地を担保に三津浜銀行から16000円を借りたことから、友太郎とケサとの間で、その借金を返済した際に、土地の名義をケサから友太郎に変更するとの約束がなされました。その後、友太郎が死亡し、相続人の岡本シズエが借金をすべて返済したので、ケサの相続人である向鶴次郎に所有権移転登記を求めたところ、鶴次郎は山泉真也にこの土地を売却してしまいました。まだ、山泉真也に登記名義が変更されていなかったため、岡本シズエは、鶴太郎の相続人の岡本ヨシエらに対して所有権移転登記手続を求めて提訴しました。

2 最高裁判所の判決

 民法94条が、その1項において相手方と通じてした虚偽の意思表示を無効としながら、その2項において右無効をもって善意の第三者に対抗することができない旨規定しているゆえんは、外形を信頼した者の権利を保護し、もって、取引の安全をはかることにあるから、この目的のためにかような外形を作り出した仮装行為者自身が、一般の取引における当事者に比して不利益を被ることのあるのは、当然の結果といわなければならない。したがって、いやしくも、自ら仮装行為をした者が、かような外形を除去しない間に、善意の第三者がその外形を信頼して取引関係に入った場合においては、その取引から生じる物権変動について、登記が第三者に対する要件とされているときでも、右仮装行為者としては、右第三者の登記の欠缺を主張して、その物権変動の効果を否定することはできないものと解すべきである。その理由は、本件のごとく、民法94条2項を類推適用すべき場合においても同様であって、岡本シズエらは、山泉真也が本件不動産について所有権取得登記を経由していないことを理由として、同人らのこれに対する所有権の取得を否定することはできないものというべきである。
 よって、岡本シズエらの上告を棄却する。

3 虚偽表示と第三者の登記の有無

 今回のケースで裁判所は、競売に出ていた土地を他人名義で競落し、その名義人が第三者に土地を売却した場合、その第三者が所有権移転登記をしていなかったとしても、真の所有者は第三者の登記の欠缺を主張することができないとしました。
 登記名義について虚偽表示がされていることを知らずに土地を購入した第三者は登記がなくても所有権の取得を主張できるということに注意する必要があるでしょうね。
 では、今日はこの辺で、また。


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