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スキャポン事件

こんにちは。

 「本を持って歩くのが面倒だ」という人が増えていたり、電子書籍の貸し出しサービスを行っている電子図書館が出てくるなど、時代は刻一刻と変化しているなあと感じている松下です。

 さて、以前に本の電子化を代行するサービスをめぐって裁判に発展した事件があります。法律上、どのような問題があったのかについて考える上で、「スキャポン事件」(知財高判平成26年10月22日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 有限会社ドライバレッジジャパンは、顧客から本の電子化の依頼を受けつけて、著作権者の許可を得ずにスキャナーで本をスキャンして電子ファイル化するという自炊代行サービス「スキャポン」を営んでいました。しかしこれに対して、有名小説家の東野圭吾さんや、デビルマンの作者の永井豪さん、課長島耕作の作者の弘兼憲史さん、北斗の拳の作者の武論尊さんなど7名が、著作権が侵害されていると主張して、その差し止めと損害賠償を求めて提訴しました。

2 東野圭吾さんらの主張

 ドライバレッジは、利用者から依頼のあった書籍について、権利者の許諾を得ることなく、書籍をスキャンして電子ファイルを作成し、その電子ファイルを利用者に納品するなど、著作権を侵害している。そもそも家庭内で書籍スキャンを行うとすれば裁断機・スキャナの購入ないし準備が必要であり、かつ一定の習熟を要するのであるから、スキャンによる電子ファイル化は単純かつ機械的な作業ではないのだ。このような行為は、書籍を有形的に再製するものであり、複製行為の主体はドライバレッジである。

3 ドライバレッジジャパン側の主張

 我々は、利用者の手足として複製を行っているのであって、複製行為の主体はあくまで利用者である。つまり、利用者は、電子ファイル化の発意、書籍の調達、送付から使用に至るまで、終始関与し、また、書籍の電子ファイル化は、通常、だれでも行える複製なので、利用者が書籍の電子ファイル化を管理しているといえる。そうだとすれば、我々の行為は著作権を侵害するものではないのだ。

4 知的財産高等裁判所の判決

 ドライバレッジは、独立した事業者として、営利を目的として本件サービスの内容を自ら決定し、スキャン複製に必要な機器及び事務所を準備・確保した上で、インターネットで宣伝広告を行うことにより不特定多数の一般顧客である利用者を誘引し、その管理・支配の下で、利用者から送付された書籍を裁断し、スキャナで読み込んで電子ファイルを作成することにより書籍を複製し、当該電子ファイルの検品を行って利用者に納品し、利用者から対価を得る本件サービスを行っている。そうすると、ドライバレッジは、利用者と対等な契約主体であり、営利を目的とする独立した事業主体として、本件サービスにおける複製行為を行っているのであるから、本件サービスにおける複製行為の主体であると認めるのが相当である。 
 よって、ドライバレッジにその複製の差し止めと、著作権を侵害された東野圭吾氏ら7名に対してそれぞれ10万円の賠償をすることを命じる。

5 自炊代行と著作権

 今回のケースで裁判所は、著作権者の承諾なしに利用者から委託を受けて書籍をスキャンし、電子データ化する行為が、複製権の侵害であるとしました。
 また、自分で購入した本を自分で使用する目的での複製は認められていますが、自身で電子データ化した書籍をインタネーットにアップロードしたり、無断で売却すれば著作権(複製権)侵害となりますので、十分に注意しましょう。

では、今日はこの辺で、また。


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