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食糧管理法事件

こんにちは。

 1995年に廃止された食糧管理法は、深刻な食糧不足に陥っていた戦中戦後の時代に必要な法律とされていました。

 この食糧管理法に関しては、戦後の混乱期において、新たな憲法と法律の下で大審院と最高裁判所の関係が問題となった「食糧管理法事件」(最大判昭和23年7月19日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 鈴木は、非合法のルートで精米の売買をしていたとして、食糧管理法違反で逮捕、起訴されました。戦前の裁判所構成法に従うと、仙台区裁判所に公訴の提起をすれば、第2審は仙台地方裁判所となり、上告審は大審院となるはずであった。ところが、裁判所法が施行されたことにより、上告審が仙台高等裁判所とされたことから、被告人鈴木は「大審院は当時の最高裁判所であるところ、裁判所法に従って上告審を仙台高等裁判所としたのは、個人の人格、自由、並びに幸福の追求を軽視しているものであり、国民はすべて法の下に平等であるとする憲法の大原則に違反するのではないか」と主張して争いました。

2 最高裁判所大法廷の判決

 大審院は旧憲法と裁判所構成法とに基づく構成と組織と性格を有する裁判所であり、最高裁判所は厳粛な歴史的背景の下に日本国憲法と裁判所法に基づく特殊の構成と組織と性格を有する裁判所である。共に司法権を行使する機関であり、又わが国における最上級の裁判所であるという関係において、相互の間に類似性はあるが、両者の構成、組織、権限、職務、使命及び性格が著しく異なることは、敢て多言を要しないところである。最高裁判所の裁判権については、違憲審査を必要とする事件がその管轄に属すべきことは憲法上要請されているところであるが、その他の事件の裁判権については法律の定めるところに一任されたものと解するを相当とする。されば、最高裁判所は必ずしも常に上告審のみを担当すべきものとは限らない。外国の事例も示すように、時に第1審事件を取扱うこともあり得る。
 このような審級の問題は、法律が諸般の事情を考慮して適当に定めるべきものである。そうであれば、大日本帝国憲法と裁判所構成法は廃止され、代わって日本国憲法と裁判所法が新たに実施されるに際し、廃止となった各裁判所において従来受理していた一群の訴訟事件を処理するにあたって、立法の上で国民の基本的人権は十分に尊重されているので、憲法13条に違反しない。
 よって、被告人の上告を棄却する。

3 最高裁は大審院の後身ではない

 今回のケースで裁判所は、大審院と最高裁判所との間に同一性を認めることができないとしました。実際に、大審院には下級裁判所に対する司法行政上の監督権をもたず、違憲立法審査権などの権限も与えられていなかったとされています。
 ただし大審院の判決は、現在においても判例として通用しているものもありますので、注意する必要があるでしょうね。

では、今日はこの辺で、また。


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