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こんにちは。

 関西が舞台となった名作と言えば、なんと言っても有川浩さんの「阪急電車」ですね。映画では、鈴木亮平さん、中谷美紀さん、戸田恵梨香さん、宮本信子さん、芦田愛菜さん、相武紗季さんなどの豪華キャストだけでなく、「小林駅(おばやしえき)」などの聖地巡礼も楽しめます。

 さて今日は、阪急の名前で営業していたことが問題となった「阪急電機事件」(大阪地判平成5年7月27日判例タイムズ828号261頁)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 l昭和26年、「阪急電機株式会社」の商号で、電気工事を行う会社が設立されました。平成4年になり、鉄道運輸業など多角的な経営をしている阪急電鉄株式会社は、「阪急電機株式会社」の商号が自社の営業と混同する恐れがあることから、不正競争防止法違反を理由に、「阪急電機」の使用禁止と商号の抹消登記手続を求めて提訴しました。

2 阪急電鉄の主張

 「阪急電機」の商号は、我々が築いた「阪急」ブランドと類似することは明らかだ。我々は電灯電力供給事業を行うとともに、ラジオ、電熱器具などの電機製品の販売、修理業を営んでおり、阪急電機と競業関係にある。一般人が、「阪急電機」が阪急グループの一員だと勘違いする可能性があるので、「阪急」の名前を使わないでもらいたい。

3 阪急電機の主張

 わてらは、兵庫県伊丹市周辺で厚い信用を積み重ねて営業してきてな、阪急グループと間違う人もおらへんし、業種も1ミリもかぶってへん。しかもなあ、阪急電鉄さんが有名になる前から、わてらはこの名前で営業してきたんや。40年間もわてらに何も言ってけえへんかったやん。ほんなら、差止請求は権利失効の原則により失効しているんとちゃうか。

4 大阪地方裁判所の判決

 阪急電鉄を中心とする阪急グループ約300社が、交通・運輸業をはじめとして、流通、スポーツ施設、娯楽施設(映画・劇場・遊園地)、ホテル、不動産、金融・クレジットに至るまで、サービス業全般にわたり多角的な経営を行っており、その事実は全国的にも広く認識されていることによれば、阪急電機が電気工事、修理業を行うことは、需要者又は一般消費者に、阪急電機が組織上阪急グループに属する会社であるか、又は、阪急電鉄ないし阪急グループと業務上密接な関連性がある会社であるという誤認、混同を生じさせるおそれがあるといわざるを得ない。
 阪急電機が資本金400万円という比較的小規模な会社であり、伊丹市の電話帳に、「阪急電機株式会社」の名称で電話番号を掲載等している他は、広範囲の広告宣伝をしていないことを考慮すれば、阪急電鉄が平成2年10月ごろ阪急電機の社名広告が掲載された都市研究会の機関紙「まりーごーるど」に接するまで、約40年間にわたり阪急電機の商号及び表示を使用していたことに気づかなかったことにも無理からぬところがあり、これが阪急電鉄の懈怠に基づくものとまではいえないうえ、阪急電機側に、阪急電鉄との間で商号及び表示の使用について何らかの決着がついていると信ずるのが当然と考えられるような事情も認められない。
 よって、阪急電機株式会社は、その営業上の施設または活動に「阪急電機」の表示を使用してはならない。

5 権利失効の原則は認められなかった

 今回のケースで裁判所は、「阪急電機株式会社」の商号が、「阪急電鉄株式会社」の営業表示に類似しているとし、また阪急電鉄が40年間も使用の差止め請求をしなかったとしても権利は失効しないとしました。
 有名企業の名前を他の業種に不正利用して、利益にただ乗りしようとすると、不正競争防止法違反になりますので十分に注意が必要でしょうね。
 では、今日はこの辺で、また。


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