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葉煙草一厘事件

 こんにちは。

 がんばれゴエモンに親しんでいたためか、キセルは大きい物だと思い込んでいた松下です。
 実際、栽培されているタバコの葉っぱの大きさがどれくらいなのかと思っていたところ、その大きさが30センチぐらいだと知って驚きましたね。

 さて今日は、葉煙草の納品をめぐって「葉煙草一厘事件」(大判明治43年10月11日刑集16輯1620頁)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 栃木県那須郡に住んでいた63歳の耕作者の男性は、葉煙草を栽培し、敷地内で乾燥させていました。あるとき、価格として1厘(1円の1000分の1)に相当する2グラム(1匁[もんめ]の70%)の葉煙草を手もみにして、喫煙していました。この行為が収税吏に発見されたことから、その耕作者の男性は煙草専売法違反(後に廃止)により逮捕、起訴されました。

2 検察側の主張

 被告人は、本来であれば大蔵省専売局に納品すべきだった煙草を、あろうことに自ら消費してしまったのだ。これは煙草専売法に違反している。よって、被告人に有罪判決を求めるものである。

3 被告人の主張

 たしかに煙草を吸ったのは間違いありません。にしても、価格にして1厘の葉タバコをちょっと消費したという些細な行為なので、これは犯罪行為には当たらないと思います。よって、私は無罪となるはずです。

4 大審院の判決

主文:被告人を無罪とする。

 人類非行の零細なものは悪性を特に認めるものでない限りは、その人生に及ぼす害悪が極めて少ないので、これを不問とすることは通常のことである。この種の非行はこれを罪に問う必要なく、またこれを罪に問うことによって被る損失は、問わなかったために生じる害悪に比べてはるかに大きいものがある。被告人が政府に対して怠納した葉タバコはわずか七分にすぎない零細なもので、費用と手数料を顧みずに罪を追及することはかえって税法の精神に反する。被告人の行為は零細なる葉煙草の納付を怠ったこと以外は特に危険視すべき何らの状況もないので、被告人の行為は罪を構成しない。

5 処罰に値しない行為とは?

 今回のケースで裁判所は、違法な犯罪行為であったとしても、実害がほとんどなく些細な行為であれば罪には問えないとして、耕作者の男性を無罪としました。つまり違法であるが、処罰を予想していない程度に軽微な違法行為については処罰ができないという理論ですが、あらゆるケースに当てはまると考えるのは危険ですので、注意する必要があるでしょう。

では、今日はこの辺で、また。


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