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贈与の履行の終了事件

こんにちは。

 今日は、贈与契約の履行が終了したかどうかが問題となった最判昭和40年3月26日を紹介したいと思います。


1 どんな事件だったのか

 藤井善男は中山登美子に建物をあげるという約束をし、2人は司法書士事務所を訪れて、所有権移転登記手続の依頼をしましたが、その日に登記がされることにはなりませんでした。その帰り道で、善男が登美子に対して、「俺はウソはいわない」と誓って、登美子に建物の登記済証と印鑑証明書を交付しました。登美子は、司法書士にそれらの書類を持参して、形式的には善男から登美子に建物が売却されたという形で、その所有権移転登記がなされました。しかし後日、藤井善男は、まだ不動産の引き渡しがなされていないという理由で、贈与契約の取消を求めて提訴しました。

2 最高裁判所の判決

 不動産の贈与契約において、当該不動産の所有権移転登記が経由されたときは、不動産の引渡の有無を問わず、贈与の履行を終ったものと解すべきであり、この場合、当事者間の合意により、右移転登記の原因を形式上売買契約としたとしても、右登記は実体上の権利関係に符合し無効ということはできないから、前記履行完了の効果を生ずるについての妨げとなるものではない。本件において原判決が確定した事実によると、藤井善男は本件建物を中山登美子に贈与することを約するとともに、その登記は当事者間の合意で売買の形式をとることを定め、これに基づいて右登記手続を経由したというのであるから、これにより、本件贈与契約はその履行を終ったものというべきであり、その趣旨の原判示判断は正当である。これと異なる見解に立脚する論旨は、採るを得ない。
 よって、藤井善男の上告を棄却する。

3 贈与の履行の終了

 今回のケースで裁判所は、不動産の贈与契約に基づいて不動産の所有権移転登記がなされたときは、その引き渡しの有無にかかわらず、履行が終わったものと解する、としました。
 贈与契約は、契約書を作らなくても口約束だけで成立します。しかし、民法では「書面によらない贈与」は、履行が終わっていない限り、解除できるとしています。ただし、今回のケースのように不動産の所有権移転登記をすれば、履行が終わったものと考えられていますので、注意が必要でしょうね。
 では、今日はこの辺で、また。 


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