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マジックホン事件

 こんにちは。

 東海オンエアのyoutubeチャンネルで、公衆電話から回答できるクイズにチャレンジしていた企画があるのですが、今でも意外と公衆電話があったことと、まだテレフォンカードが売っていることに驚きましたね。

 さて今日は、電話機に取り付けた装置を使用したことで犯罪に問われた「マジックホン事件」(最決昭和61年6月24日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 有限会社ステファノ商会の社長は、会社の設立のときに世話になった石原氏から「このマジックホンをお宅の電話回線に取り付けると、電話をかけてきた相手は、なんと魔法のように料金を徴収されることがないのです。どうですか?」と勧められたので、14万4000円で2台購入しました。そして試しに、従業員を公衆電話に走らせて、マジックホンを取り付けた回線に電話させてみると、通話終了後に公衆電話から10円がチャリンと落ちてきたのです。社長は「これは法的にまずいのでは?」と思い、弁護士に相談したところ「使用しない方がいい」と言われ、すぐさまマジックホンを取り外しました。
 しかし、警察は社長を有線電機通信妨害罪、偽計業務妨害罪で逮捕し、検察によって起訴されました。

2 検察側の主張

 被告人は、有限会社ステファノ商会事務所内の加入電話回線に、受信側の自動交換装置から発信側の自動交換装置内度数計器を作動させるために発信されるべき応答信号を妨害する機能を有するマジックフォンを取り付け、通話料金の適正な計算課金業務を不能にさせて、業務を妨害した。これは偽計業務妨害罪などに該当する。

3 被告人の主張

 このマジックホンを売りにきた石原に恩義を感じて、仕方なく購入しましたが、私は試験的に、たった1回の10円分だけマジックホンを試したにすぎず、その後すぐにマジックホンを撤去したのだから処罰に値しないと思います。また、その友人は弁護士に聞いて法律違反ではないと述べていましたし、警察の捜査にも積極的に協力したので、どうか無罪にしてください。

4 最高裁判所の決定

 主文:被告人を罰金3万円に処する。

 被告人がマジックホンと称する電気機器1台を加入電話の回線に取り付けた本件行為につき、たとえ被告人がただ1回通話を試みただけで同機器を取り外した等の事情があったにせよ、それ故に、行為の違法性が否定されるものではない。

5 被害の軽微さと犯罪の成立

 今回のケースで裁判所は、マジックホンを使ってたった10円の支払いを免れていたにすぎないとしても、処罰しなくてもよいという理論にはならないとして、社長の行為が偽計業務妨害罪があたるとしました。
 とくに不正な手段を用いて、他人の業務を妨害することが問題となっていましたので、課金業務において料金計算を誤らせることが「業務の妨害」にあたる可能性があると認識し、犯罪を犯さないようにすることが重要でしょうね。

では、今日はこの辺で、また。


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