見出し画像

ゴルフ場造成事件

こんにちは。

 南アフリカに、レジェンド・ゴルフ&サファリ・リゾートというゴルフリゾートがあるのですが、その19番ホールは、高さ420mからの打ち下ろしになっています。ティーグランドにたどり着くためには、200ドルを払った上で、ヘリコプターに搭乗して崖っぷちまで移動する必要があると知って、驚きましたね。

 さて今日は、ゴルフ場の土地所有権が問題となった「ゴルフ場造成事件」(東京高判昭和53年12月21日判例タイムズ378号97頁)を紹介したいと思います。


1 どんな事件だったのか

 土地を所有する下川は、神奈川県にあるレインボーカントリークラブの経営者に自身の土地を売却する契約を結びました。経営者は代金を支払い、農地法5条の許可を受けていたにもかかわらず、土地の所有権移転登記をしていませんでした。その後、下川はゴルフ場経営者に対して、土地に関する譲渡所得税の負担を求めたところ、それが拒否されました。すると、下川はこれが裏切りだと感じ、ゴルフ場内のほぼ中央部にある土地の登記名義が自身にあることを利用して、花の栽培適地を探している会社に同じ土地を売却し、所有権移転登記手続をしました。花の栽培適地を探していた会社が、ゴルフ場経営者に対して高値での土地の売却を持ちかけてきたことから、ゴルフ場の経営者は、土地の所有権が自身にあることの確認を求めて提訴しました。

2 東京高等裁判所の判決

 下川は、売買契約により代金の完済をうけながらも、何ら契約上の義務でない譲渡所得税の負担に対するゴルフ場経営者の非協力を裏切りと感じ、たまたま売買契約書もなく、登記も未了であることを奇貨として、問題となった土地を再び他に売却する意思を有していたところ、花の栽培適地を探していた会社は、この事情を知悉した上、売買ないし登記移転の手続一切をうけもつなど積極的に下川に働きかけて土地を手に入れ、ゴルフ場の経営者がその経営するゴルフ場内のほぼ中央部にある土地を取得できずに極めて困却する事態を現出させ、以てゴルフ場経営者に高価で売りつけるなどして不当の利益を得るべく、売買契約を締結したものとみることができる。
 してみれば、花の栽培適地を探していた会社は、いわゆる背信的悪意者として、ゴルフ場経営者の土地所有権取得につき登記の欠缺を主張する正当な権利を有する第三者に当たらないと解するのが相当であり、ゴルフ場経営者は登記なくして土地の所有権取得を花の栽培適地を探していた会社に対抗することができるといわなければならない。
 よって、ゴルフ場経営者の請求を認容する。

3 背信的悪意者の排除

 今回のケースで裁判所は、土地の売主が売買によって代金が完済されていたにもかかわらず、何ら契約上の義務でない譲渡所得税の負担に関する買主側の非協力的な態度を裏切りだと判断して、買主の登記が完了していないことを利用して、第三者に同じ土地を売却して登記を取得させていた場合、第三者が事情を知りながら積極的に関与していたときには、背信的悪意者となり、買主に登記がないということを主張できないとしました。
 土地のような不動産の取得を第三者に対抗するためには登記が必要ですが、登記がなくても背信的悪意者に土地の取得を対抗できる場面がありますので、十分に注意する必要があるでしょうね。
 では、今日はこの辺で、また。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?