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島田不動産事件

こんにちは。

 部屋を借りるときに加入する火災保険には、建物保険と家財保険の区別や、借家人賠償や個人賠償があり、何も知らずにぼったくられている可能性があると知って、驚きましたね。

 さて今日は、火災保険金に代償請求が認められるのかどうかが問題となった「島田不動産事件」(最判昭和41年12月23日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 島田不動産の所有する土地に、柏原芳春氏がパチンコ屋を建てる代わりに、1年後にパチンコ屋の所有権を島田不動産に譲り、以後柏原氏が家賃を払い続けるという約束をしていました。ところが、パチンコ屋が完成した直後に、原因不明の火事でパチンコ屋が焼失したことから、柏原氏は建物に関する火災保険金を受け取りました。さらに、柏原氏は、島田不動産に対して事前に支払っていた敷金の返還を求めて提訴しました。

2 柏原芳春の主張

 火事によって、島田不動産からパチンコ屋の建物を借りることが出来なくなった。だから、建物を借りる前提で事前に支払っていた敷金約100万円を返して欲しい。

3 島田不動産の主張

 私は、火災によって建物の所有権を取得することができず、また家賃収入が入ってこなくなった。しかし、柏原氏は、パチンコ屋を消失した代償として、火災保険金を受け取っていたじゃないか。そうすると、敷金の返還と火災保険金の請求とを相殺できるはずだ。

4 最高裁判所の判決

 一般に履行不能を
生ぜしめたと同一の原因によって、債務者が履行の目的物の代償と考えられる利益を取得した場合には、公平の観念にもとづき、債権者において債務者に対し、右履行不能により債権者が蒙りたる損害の限度において、その利益の償還を請求する権利を認めるのが相当である。
 柏原氏の新建物返還義務が、新建物の焼失によって消滅し、他面柏原氏が新建物の焼失によって保険金を取得した以上、島田不動産に、その代償請求権は認められるべきであって、新建物の建築費用の負担が何人であるか、債務者たる柏原氏が火災によって損害をうけたかどうかは代償請求権とは関係の無いことである。
 よって、柏原氏の上告を棄却する。

5 代償請求権の新設

 今回のケースで裁判所は、建物火災により債務の履行が不能となった場合に、債務者が建物の代償と考えられる利益を取得していれば、債権者が履行不能により受けた損害を限度として、債務者に対してその利益の返還を求める権利があるとしました。
 その後、同じことを規定した民法422条の2が新設されています。火災保険金は保険契約から生じたものですが、火災が原因で建物の引渡しができないことと、保険金を取得できるということが生じたと考えて、代償請求できるという点に注意する必要があるでしょうね。
 では、今日はこの辺で、また。


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