見出し画像

八幡製鉄所政治献金事件

こんにちは。

 政治献金と聞くと、時代劇に出てくる「越後屋、そちも悪よのう」「いえいえ、お代官様ほどでは」を思い出してしまいます。

 今日は、そんな株式会社による政治献金が問題となった八幡製鉄所事件(最大判昭和45年6月24日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 八幡製鉄所の代表取締役小島新一らは、会社名義で自民党に350万円の政治献金をしていました。これについて、株主(500株)の有田勉三郎弁護士は、「政治献金が会社の定款(きまり)に書かれたビジネスの目的に反する行為であり、本来株主に還元されるべき利益が政治献金に使われている。これにより八幡製鉄所は献金相当額の損害を被っているので、小島氏らは八幡製鉄所に対してその損害を賠償すべきである」として株主代表訴訟を提起しました。

2 有田勉三郎の主張

 そもそも金権政治にならないように、便宜を図ってもらうための献金は違法であり、公序良俗に反し無効とされている。小島会長らは見返りなしに自民党に献金したと言っているが、会社は利益を上げて儲けることを目的としているので、利益にならないような献金はできないはずだ。取締役は、会社の資本を維持・充実させる義務があり、政党に献金できるお金があれば株主や従業員に還元すべきである。しかも、政治献金をすることについて株主の同意をとっておらず、会社に対する忠実義務に違反しているのだ。よって、小島氏らは会社に対して350万円を払うべきである。

3 小島新一の主張

 会社は慣例として、慈善事業や災害救助、教育事業などに対する寄付や寺社の祭礼のための寄付を行ってきた。政治資金の寄付も同じようなものではないか。公共の利益のみを目的とする事業ないし歴史的伝統行事に対する寄付は、営利を目的とする会社であったとしても、会社の経営に支障をきたすおそれのない程度であるなどの一定の制限の下ですることができるはずだ。

4 最高裁判所の判決

 会社の構成員が、政治的信条を同じくするものでないとしても、会社による寄付が、社会の一構成単位たる立場にある会社に対し期待、要請されるものである以上、会社にも政治資金の寄付をする能力がある。会社は、自然人たる国民と同様、国や政党の特定の政策を支持したり、反対したりするなどの政治的行為をなす自由を有するのである。よって、会社による政治献金は違法ではないので、有田勉三郎の請求は認められない。

5 政党助成法

 1995年に、企業・団体献金の廃止を目的として政党助成法が成立しました。国民1人あたり250円、コーヒー1杯分を負担して、金権政治を防ごうという趣旨だったのですが、この法律により自らが支持していない政党に税金が使われることになり、憲法に保障された「政党支持の自由」が侵害されているとの意見もあります。また現在でも自民党には企業献金が行われており、政治は金で動くということを示しているようにも思われます。

 では、今日はこの辺で、また。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?