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アパマンショップ爆発事件

こんにちは。

 アパマンショップのCMと言えば、スノーマンやAKBのメンバーなど、豪華なキャストが出演しているところに魅力があるのですが、個人的には船越さんが崖の上で家主を説得しているCMが好きですね。

 さて今日は、アパマンショップ内で噴射したスプレー缶が原因で大爆発が起きた「アパマンショップ爆発事件」(札幌地判令和2年8月18日裁判所ウェブサイト)を紹介してみたいと思います。

1 どんな事件だったのか

 札幌市にあったアパマンショップ平岸駅前店で、激発しやすい液化ガスが充填されたスプレー缶約90本を噴霧して店舗内に充満させ、その後にガス瞬間湯沸器を点火したことによって、半径約250mに大爆発が起き、44人が重軽傷を負う事故が起きました。そのため、店長が重過失激発物破裂罪及び重過失致傷罪で逮捕、起訴されました。

【刑法117条】
① 火薬、ボイラーその他の激発すべき物を破裂させて、第108条に規定する物又は他人の所有に係る第109条に規定する物を損壊した者は、放火の例による。第109条に規定する物であって自己の所有に係るもの又は第110条に規定する物を損壊し、よって公共の危険を生じさせた者も、同様とする。
② 前項の行為が過失によるときは、失火の例による。

2 検察側の主張

 被告人は、顧客から除菌費用という名目で手数料を得ていたにもかかわらず、多忙を理由にスプレーによる物件の除菌をしていなかったのだ。これにより在庫を250本を抱えることになり、在庫を隠蔽・処分するために気密性の高い店舗内で噴射していたのだ。この大爆発で建物8棟が損壊し、44名もの重軽傷者をだした。当時、被告人は店舗内にガスが充満した状態を作出したことを明確に認識し、ガスに引火する危険があると考えて煙草を吸うのを思いとどまっていたのだ。そうすると、被告人には引火による爆発を生じる危険があることについて高度の予見可能性があり、店舗内で火気の使用を厳に慎み、その危険の発生を未然に防止する高度の注意義務があったというべきである。それにもかかわらず、このような危険に考えを及ばせることなく漫然と湯沸器を作動させて爆発を生じさせたのであるから、被告人の注意義務違反、すなわち過失の程度は誠に重大である。

3 被告人の主張

 起訴内容を認めます。私は消臭未実施の発覚を免れようとして、このようなことを引き起こしてしまいました。しかし、そもそもスプレー缶の未施工の在庫を大量に抱えた原因は、店舗の適切な管理を怠っていた運営会社の営業体制にも問題があります。今回の事故は、運営会社の組織の責任という要素もあると思いますので、この点を考慮して欲しいです。

4 札幌地方裁判所の判決

 今回の爆発によって傷害を負った被害者は44名と多数に上る。最も重篤な1名は約2年間の加療期間を要する傷害を負った。同人を含めて被害者の中には長期間にわたる過酷なリハビリを要した者や後遺症が残った者も少なくない。いずれの被害者も多大な恐怖にさらされ、中には精神的な症状を訴える者もおり、爆発により被害者が被った肉体的、精神的な苦痛は大きい。複数の被害者が被告人に対する厳罰を望んでいるのも当然である。また、爆発は住宅や店舗が隣立する市街地で発生し、その影響は8棟の建造物を損壊させるなど広範囲に及んだ上、当時多数の客や従業員がいた隣接店舗においては、爆発が原因となって火災が発生して燃え広がるなどしており、爆発による物的な被害や公共の危険は非常に大きい。本件により生じた結果は重大である。 
 なお、被告人が稼働していた店舗の運営会社により一部被害弁償がなされたが、被告人の負担によるものではなく、重傷を負った被害者との間の示談の進捗状況は明らかではないことを踏まえると、被告人のために酌むべき事情として考慮するには自ずと限界がある。
 しかもスプレー缶の在庫状況を把握するために運営会社が所属店舗に対して行なった調査に虚偽の報告をしたのも被告人であるから、量刑上考慮できる事情とはいえない。
 よって、被告人を禁固3年に処する。また、この裁判確定の日から4年間その刑の執行を猶予する。

5 除菌費用の負担

 今回のケースで裁判所は、消毒費用を顧客から受け取っていたにもかかわらず、その未施工が発覚することをおそれて、激発しやすい液化ガスを店舗内に噴霧し、大爆発を引き起こした場合には、重過失激発物破裂罪が成立するとしました。
 そもそも、賃貸物件の入居者が除菌費用を負担する義務がありませんので、契約書に除菌費用の項目がある場合には「不要です!」と断ることも重要でしょうね。
 では、今日はこの辺で、また。


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