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関川村の村八分事件

こんにちは。

 大人たちは子どもたち対して、「いじめ(法律的には暴行罪、傷害罪)はいけません」と言います。しかし、大人になってもいじめがなくなるわけではありません。日本には村八分という言葉があるように、葬式の世話と火事の消化活動(二分)以外は、集団から排除されるといったことが行われてきました。

 この村八分をめぐって、実際に裁判にまで発展した関川村の村八分事件(新潟地裁新発田支部判平成19年2月27日判例タイムズ1247号248頁)があります。何をめぐって大人のいじめが行われたのか、また法的にどのように処理されるのかについて解説してみたいと思います。


1 どんな事件だったのか

 新潟県岩船郡関川村は約36戸で構成される集落でした。お盆のイワナのつかみ取り大会において「準備と後片付けでお盆をゆっくり過ごせない」と、村民15名が不参加を申し出ました。

 すると、村の有力者が「従わなければ村八分にする」と、11戸に対して集落内の山での山菜やキノコの採取禁止、ゴミ収集箱の使用禁止、集落センターや駐車場の使用禁止、村や農協からの広報誌や連絡文章を配布しないことを通告しました。

 そこで、村八分にされた村の住民は人格権侵害を理由に、村の有力者3名(区長、農家組合長、暴力事件をしばしば起こして有罪判決を受けた者)に対して1人あたり100万円の慰謝料の支払いを求めました。

2 村八分にされた住民たちの主張

 大会の開催は、村の有力者によって事実上有無を言わさず決定されたものであり、多くの住民は準備のために何度も駆り出されて大変な負担であるうえ、開催日がお盆の時期であることから不満を感じていました。また、有力者の1人によるイワナ購入代金は、実際の支出された代金とは異なり、村の補助金の水増し請求をしています。この事実を指摘すると、有力者の1人が自宅に上がり込み「二重会計、不正会計を認めてきたお前も同罪だ」などと言いがかりを付け「おれがやられるか、おまえがやられるか、さあどっちだ、外へ出ろ!」と脅されたり、見張りまでしてごみ収集箱の使用や山菜取りなどを禁止されて地域活動の地位や権利を奪われました。これは有力者たちによる共同不法行為であります!

3 村の有力者の主張

 「村八分にしてやる」などという言葉は使用しておりません。原告たちが「おれは脱退する。集落員としての権利も放棄する」と述べて退席したので、脱退扱いになっただけだ。また、今回の事件がマスメディアやインターネットを通じて全国に広まったので、我々の被った損害を回復するためには、村が運営するウェブサイトに謝罪広告を掲載すべきだ。

4 新潟地裁新発田支部の判決

 原告たちは、大会から脱退するとは言ったが、集落から脱退するとは述べていない。

 村の有力者たちの行為を村八分と呼ぶかどうかはともかく、違法であり、不法行為を構成する。よって、原告ら11各についてそれぞれ20万円を支払え。

5 祭りの費用の半強制的寄付は違法か?

 今回のケースのように、地域で開催されるお祭りでは、強制的に寄付を求められたり、労働力の提供を求められたりすることがあるのも事実です。

 しかし、自治会が寄付を名目に自治会費を増額した決議をしたときに、それが公序良俗に反し無効とされた事例(大阪高判平成19年8月24日)もあります。

 法律上は、当事者間の合意をきちんと取らなければ、何事も強制されないのが原則ですので、運営サイドは慣習を理由とするのではなく、法的に対応できるようにしておく必要がありそうですね。

 では、今日はこの辺で、また。


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