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名古屋刑務所暴行事件

こんにちは。

 みなさんは、白鳥由栄という昭和の脱獄王をご存じでしょうか。ゴールデンカムイの白石由竹のモデルとなったとも言われている白鳥は、看守の交代時にスキができることを利用して難攻不落の刑務所を脱獄して有名になりました。

 さて、今日は刑務所で監視をしている刑務官の暴行が問題となった「名古屋刑務所暴行事件」(名古屋地判平成22年5月25日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 名古屋刑務所の刑務官らは、受刑者らを革手錠で極度に締め上げて外傷後ストレス障害、いわゆるPTSDの後遺障害を生じさせたり、股間膜損傷や癒着性腸閉塞症を生じさせたりしていました。そのため、元受刑者と死亡した受刑者の遺族らが、刑務官とその上司に対して約1億8000万円の損害賠償を求めて提訴しました。

2 元受刑者らの主張

 いきなり刑務官に、革手錠をはめられ、息もできないくらいお腹をギュウギュウに締め上げられた上で、保護房に入れられました。通常、保護房には逃走、他者への暴行、自殺のおそれがある場合に入れられるものなのに、刑務官に刃向かったという理由で入れられました。すると、保護房の中で内臓破裂で死亡した者もいれば、放水刑と称して真冬にもかかわらず、ズボンと下着を脱がされて、消防用の高圧ホースを受刑者のお尻にめがけて浴びせ続けられた者もいたのです。これは、明らかに不法行為であり、その損害賠償を求めます。

3 刑務官の主張

 受刑者らを取調室から連れ出したところ「何触るんだ」と怒号して、つばを吐きかけながら体当たりするなど、暴行をするなどしたことからから、やむなく革手錠を装着したのだ。受刑者が死亡したのは、自傷や転倒などの事故によるもので、革手錠の強度の緊縛によるものでは決してない。

4 名古屋地方裁判所の判決

 法律の要件を満たすことなく保護房収容や革手錠施用に至った点、及び施用された革手錠の緊度は適正緊度を超えていた点において違法性があるというべきである。また、革手錠の緊縛により腸間膜損傷などの傷害を負ったと認めるのが相当である。よって、元受刑者らの請求を認め、国は、受刑者らに約9000万円を支払え。

5 100年ぶりの監獄法改正

 今回のケースで裁判所は、受刑者に対して違法に革手錠を装着し、保護房にいれたことや、腹部を締め上げて水を飲ませることによる腸間膜の損傷などのケガをさせたことについて、刑務官らの責任を認めて国に受刑者らへの損害賠償を命じました。
さらに控訴審(平成24年1月24日)でも、刑務官らの控訴が棄却されています。
 この事件を受けて、革手錠の廃止など100年ぶりに監獄法が改正され、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律が制定されています。今後も、刑務所内での違法な行為について注目していく必要があるでしょうね。

では、今日はこの辺で、また。


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