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およげ!たいやきくん事件

こんにちは。

 みなさんは、日本国内で最も売れたシングル曲と聞くと、どんな曲を思い浮かべるでしょうか。『ギネス世界記録2009』では「およげ!たいやきくん」が日本一だと認定されているようです(その後、青山テルマさんの「そばにいるね」が日本で最も売れたシングルとしてギネス記録に認定されています)。


 さて、およげ!たいやきくんを歌っていた人は?と聞かれて「子門真人さん」と即答できるのは、アフロに丸めがねというパンチの効いた姿が印象的だったことによるのですが、実は当初、生田敬太郎氏がおよげ!たいやきくんを歌っていたところ、専属契約の問題で途中で交代していたという事情もありました。その他にも、およげ!たいやき君の著作権に関しても裁判で争われたことがあります。いったいどのようなことが問題となったかを考える上で、今日は「およげ!たいやきくん事件」(東京地判昭和54年6月29日TKCローライブラリー)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 石塚英一郎氏は、「およげ!たいやきくん」と同一の「パンジューの歌」の楽曲を作成し、その歌詞の創作にも寄与してしていました。株式会社フジテレビジョンは、子ども向けテレビ番組「ひらけ!ポンキッキ」で、「およげ!たいやきくん」の歌を放送していたところ、石塚氏がフジテレビや社団法人日本音楽著作権協会らに対して著作権使用料に相当する100万円の支払を求めて提訴しました。

2 石塚氏の主張

 およげ!たいやきくんの楽曲及び歌詞については、すでに私が著作権を取得していた。私は、昭和51年1月30日に電話で社団法人日本音楽著作権協会に対して、歌の楽曲の著作権を登録し、その管理を委託していたのだ。その後、およげ!たいやき君のレコードが発売され、日本音楽著作権協会は少なくとも1億円を受領していたにもかかわらず、私に引渡しをしていない。なので、フジテレビや音楽著作権協会らに対してそれぞれ100万円の支払を求める。

3 フジテレビらの主張

 およげ!たいやきくんの楽曲の著作権者は佐瀨寿一(させじゅいち)氏であり、その歌詞の著作権者は高田ひろお氏である。石塚氏が著作権を主張するが、この歌は、幼児教育番組「ひらけ!ポンキッキ」の中で初めて挿入歌として使用されたもので、楽譜も株式会社フジ音楽出版が最初に発行し、レコードもキャニオンレコードから発売されたものである。よって、我々に著作権使用料を支払う義務はない。

4 東京地方裁判所の判決 

 石塚氏が昭和51年1月に、およげ!たいやきくんの歌の楽曲及び歌詞を創作して著作権を取得したと主張するが、その事実を認めるに足りる証拠はなく、遅くとも昭和50年にその楽曲が佐瀬寿一氏により、また、その歌詞が「高田ひろお」こと高田博雄によりそれぞれ著作され、同じ年に株式会社フジ音楽出版から楽譜として発行されたことが認められる。
 よつて、石塚氏の請求を棄却する。

5 およげ!たいやきくんの印税

 今回のケースで裁判所は、およげ!たいやきくんの作詞作曲に関して、石塚氏に著作権はないとしてその請求を棄却しました。
 また楽曲の歌い手だった子門真人さんは、およげ!たいやきくんの曲に関して印税契約を結んでいなかったがために、曲が大ヒットしたにもかかわらず受け取ったのは歌唱のアルバイト料5万円だけだったということが話題となりました。著作権については、しっかりとした知識を得ておくことは重要でしょうね。
 では、今日はこの辺で、また。



 

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