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アリナビッグ事件

こんにちは。

 アリナミンと進撃の巨人のコラボ動画で、ライナー課長がビジネス用語が全然分からないと嘆いているシーンを見ていると、私が苦しんだ「けつカッチン」、「ツーカー」といった言葉が「おっさんビジネス用語」だったと気づきましたね。

 過去にはアリナミンと似たような商品が販売されていたことが問題となったことがあります。一体法律上、どのようなことが問題となったのかを考える上で、「アリナビッグ事件」(大阪地判平成11年9月16日判例タイムズ1044号246頁)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 武田薬品工業株式会社は、「アリナミンA25」という栄養ドリンクを販売していました。あるとき、東洋ファルマー株式会社が「アリナビッグA25」というアリナミンA25の包装箱と似た商品を販売していたことから、武田薬品はその販売の差止めと約1195万円の損害賠償を求めて提訴しました。

2 武田薬品の主張

 私どもは昭和40年からアリナミンA25を販売し、莫大な費用をかけて宣伝をしてきたので、今や誰もが知る栄養ドリンクとなっている。また、「アリナ」と「A25」の5文字が共通し、類似性があると言える。東洋ファルマーは、平成9年5月20日から平成11年3月19日までに、アリナビッグを販売して約3414万円の利益を得て、その利益率が35%だとすると、約1194万円となるので、これが損害額と推定されるはずだ。

3 東洋ファルマーの主張

 アリナミンA25が有名であることは知らなかった。また、「A」は「エース」を連想させて商品に優れたイメージを与えようとするものであり、「25」の数字は成分の含有量を表す手段として、医薬品業界では一般に用いられているものだ。末尾の「ナビッグ」は、「航海、航海術」を意味する英語の「ナビゲーション」とビッグとを合成したので、「アリナミン」と「アリナビッグ」は類似していない。

4 大阪地方裁判所の判決

 アリナミンは、その製造、販売開始以来日本全国において多数販売され、その結果同種医薬品の代表的な商品になっているなど、商品名であるアリナミンが著名であったことは明らかである。「アリナミンA25」と「アリナビッグA25」の実際の使用態様を見ると、店舗で陳列したときに最も目立つと考えられる包装箱正面では、中央部に白地に黒色の太字で各表示が記載され、「A25」の文字が大きく、外観の対比では、「ミン」の文字と「ビッグ」の文字の部分で外観が相違することは明らかであるが、表示全体の字体や文字の色、配列等においては、外観の印象上類似している。東洋ファルマーは、武田薬品が獲得している信用、名声、評価にただ乗りしようとする意図があったものと推認できる。東洋ファルマーがアリナビッグA25の販売で得た利益は、売上高約1418万円から製造原価約943万円を差し引いた約475万円と認めるのが相当である。 
 よって、東洋ファルマーは「アリナビックA25」の文字を使用してはならず、武田薬品に約475万円を支払え。

5 不正競争防止法2条1項2号の「類似性」

 今回のケースで裁判所は、武田薬品の「アリナミンA25」が著名なものであり、「アリナビッグA25」との間に外観・観念・呼称的に類似性があり、一般消費者が両商品が類似していると捉えるおそれがあることから、東洋ファルマーに対して商品の販売差止めと損害賠償を命じました。
 商品が著名なものであれば、実際に消費者に混同が⽣じていなかったとしても不正競争だと判断されることがありますので十分に注意する必要があるでしょうね。

では、今日はこの辺で、また。


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